NHK札幌放送局

魅力づくりは小さな変化から

ほっとニュース北海道

2021年2月24日(水)午後6時59分 更新

「大きな変化も、はじまりはいつも小さな変化。気づきやきっかけを届けたい」。そう話すのは、十勝を拠点に活動するファッションデザイナー小野寺智美さん。❝着る人に長く愛され、寄り添う洋服❞をつくりたいと活動してきましたが、自らの出産・子育てや新たな出会いを通じて、洋服だけではなく「暮らし」や「地域での生き方」に変化を与えるようになっていました。小野寺さんが起こした「小さな変化」に迫りました。

暮らしを変える服をつくりたい

小野寺さんは北海道ドレスメーカー学院を卒業後、2007年に自らのブランド「ヒューデンヒムレン」を立ち上げました。札幌、富良野を経て、4年前、拠点を十勝に移しました。洋服を作る上で大切にしている❝着る人に長く愛され、寄り添う洋服❞という思いを持ったのは20年ほど前のある出来事がきっかけした。

デザインを学んでいた当時のことなのですが、セール期間に訪れた大好きなアパレルブランドの店舗でワゴンの中でぐちゃぐちゃになっている洋服を見た時に『そのひとつひとつに作り手がいて、デザイナーがいるのに』と悲しくなったんです。生まれた時からモノが溢れていて、何もかもが当たり前の時代なので気がつきにくくなっているかもしれないのですが、全てのモノの生産には人が関わっています。そんな作り手の存在にも思いを寄せられる製品を作りたいと、その時に思いました。

アパレル業界では毎シーズン新作を発表するのが主ですが、小野寺さんは毎年1回だけ。シンプルなデザインを心掛けるほか、受注生産を主とすることで着る人の思いや身体にあわせた洋服を作ってきました。長く使うためには手入れも必要になります。人によっては面倒だと思うかもしれませんが、それが大切だと考えています。

手入れなどの『ひと手間』をポジティブに捉えると『丁寧』という言葉に言い換えられると思うんです。そうした変化は暮らしにもいい影響を与えると思っていて、モノを大切にする気持ちを通して、丁寧に暮らそうとか自分自身を大切にしようという考え方に変わっていくことを期待しています。

子育ても仕事も諦めない

小野寺さんは3歳の男の子を育てる母親でもあります。起業した独身時代と比べて、結婚・出産を経たいまは自由に使える時間が極めて減ったと感じています。それでも、子育ても仕事も諦めたくない。その末にたどり着いたのが、子育てしながらでも続けられる働き方の創出でした。

小野寺さんは、去年夏、十勝・芽室町に店舗兼アトリエを新たに設けました。特筆すべきは、限られた営業日。毎週金曜日と第3土曜日のみの営業としました。

さらに、販売する洋服などを載せたブランドのフォトブックの撮影も「日時固定、延長なし、どんな天候でも実施」で行いました。

こうした徹底した両立は、アトリエに新たな母親仲間を迎えることにもつながりました。

中村あつみさんは、7歳と5歳の子どもを育てています。小野寺さんの母校の後輩で、新たにブランドの制作メンバーに加わりました。

隙間時間で働ける場所はなかなかないですし、自分が学んできた技術を生かしてというのは無いに等しい。こうした職場があることは本当に嬉しいですし、何よりも楽しく仕事しています。

デザイナー×デザイナー

ことし1月。小野寺さんは十勝に拠点を移して初めて、ブランドのラインナップやポリシーを記したフォトブックを作成しました。制作するにあたってデザインを依頼したのは十勝の出版社に勤める若手デザイナー。28歳の青坂さつきさんです。技術や制作者としてのマインドにほれこんでの依頼ですが、小野寺さんにはもうひとつ青坂さんに依頼した理由がありました。

なにもないゼロからデザインを担当して、直接、依頼者やお客様の感想が本人に届くという経験をしてもらいたいと思ったんです。自由な発想を続けていくためにも、用意されたものではなく、自分から仕事を掴みにいく感覚を体感してほしいという思いもありました。

フォトブックの最後のページには、小野寺さんの想いが記されています。

視線の先はいつだって自由。
いきたいところへ。
なりたいものに。
追い続ければ、必ずなれる。
いつまでもおいかけよう、
あなたの Sjunde himlen ー7ばんめの空を。

こうしたメッセージは青坂さんにも届いていました。

いままでは会社の中で営業さんが仕事をつくってもってきてくれて、私はそれにあわせてデザインをつくり、営業さんを通じて依頼者にお渡ししてあとはお願いしますという仕事の仕方が多かったんですが、智美さんとお仕事をさせて頂いて考え方が大きく変わりました。打ち合わせも全部、はじめからずっと2人でやって作り上げることで得られる喜びや楽しさがあることがわかりました。依頼してくれた人はもちろん、その人のお客さんたちともつながりを持てるというのは刺激がありますし、これからの仕事の仕方が変わるきっかけになりました。

つながる喜びが生まれるブランディングを

小野寺さんと青坂さんが協力して制作したフォトブックをきっかけに、新たな仕事が2人に舞い込みました。ことし3月11日に芽室町に新たにオープンする自然雑貨とからだに優しい食品を販売するお店「トウテル」の事業計画とロゴの作成です。

依頼したのは北原絵莉さんと博之さん夫妻。

東日本大震災を機に大きく変わった価値観。100年後に誇れるお店を目標に掲げています。2人に、小野寺さん達に仕事を依頼した経緯を聞きました。

博之さん
仕事に対する向き合い方への共感が大きかったですね。お仕事としてお願いする上で一番大切だと思ったのは、私たちがやりたいと思っていることを理解して、寄り添ってくれる人かどうか。その点、智美さんは私たちの人柄も含めて理解を深めてくれて、意図を組んでデザイナーの青坂さんと議論をしてくださっていたので心強く思っていました。ご自身の起業や事業継続、事業計画のノウハウを共有してくださるので、何かを始めようと考えているビギナーにとって本当に力強い地域の仲間だと思っています。
絵莉さん
フォトブックが本当に素敵だなと思って、思いが伝わるデザインを期待してお願いしました。出来上がりには感動しました。特に、人をつなぐお店にしたいという考えに共感してくれて、それをロゴにも反映してくれたことです。よく見ると文字がつながっているんです。さらに、お店の名前が計りに載っているロゴをよく見ると、重さを示す針が少し動いているんです。こういう遊び心も入れながら提案してくださったことには涙が出てきました。目標を達成するよう頑張らないとと改めて思いましたね。

小野寺さんは、自らの経験やノウハウ、人脈を生かした起業支援やブランディングなどを今後も続けていきたいと考えています。その先に見据えるのは、個人が輝き、地域の魅力があがることだと言います。

小さな変化があると、何かのきっかけでその人の中で大きな変化になることもあると思うんです。以前は洋服を通じて気づきや変化を届けたいと考えていましたが、これからは洋服だけではなく、身の回りの人の働き方や地域で新しいことに挑戦したいと考えている人と積極的に関わりを持って、小さな変化を起こしていきたいと思っています。その結果、楽しいと思うことが個人から家族や周囲に伝播して、地域全体が輝くということを目指しています。

取材を終えて

小野寺さんは太陽のようなエネルギーをまとった人だと感じました。事業主、母親、妻と3足のわらじでマグロのように動き続ける姿にはいつも驚かされます。はじめてお話をしてから2年余り。この間に小野寺さんが起こした「小さな変化」の影響力はどんどん大きくなっていると感じています。次はどんな変化を仕掛けてくるのか。これからも楽しみにしています。

取材担当:瀬田宙大アナウンサー(札幌放送局)

2021年2月24日

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