「積丹ブルー」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
北海道西部、断崖に囲まれた積丹半島は豊かな自然に恵まれ、夏には道内屈指の観光スポットとして多くの人が訪れます。
しかし、冬には風が吹き荒れ、夏の爽やかな景色から一転。最大で10m以上にもなる高波が打ち付けます。
降雪の中、溶岩と日本海の荒波が生み出した荒々しい岩の景観が広がります。
そのため訪れる人も減り、冬は寂しい感じもしますが、海の中をのぞくと繁殖を行う生きものであふれ、豊かな景色が広がっているんです。
今回はそんな積丹半島の冬の海の魅力についてお伝えします。(旭川局・高崎哲次郎)
気温-8度 極寒の海

12月下旬。潜水取材した日の気温はー8度、水温は9度。
極寒の海に潜ってみると、溶岩で出来た岩場の近くには多くの魚が群れていました。
この溶岩で出来た岩場には、普段は見ることの出来ない積丹の冬ならでは生き物がやってきます。
オスが奮闘 ホッケの子育て

こちらは「ホッケ」です。筆者は開かれていないホッケを初めて見ました。本来、こんな姿をしているんですね。
ホッケは普段は水深100メートルほどの深い場所で暮らしていますが、この時期は繁殖のために積丹の浅瀬に集まってきます。

この時期は、岩場のあちこちでホッケのオスが岩の溝に繰り返し口を押し当てているのが見られます。なにか食べているようにも見えますがホッケの近くを見てみると・・・・

卵です。直径は3ミリほど。食べているように見えた行為は食べているのではなく、ひっきりなしに海水を吹き付け、丁寧にゴミを吹き飛ばし、卵が呼吸をしやすいようにしているのです。
ホッケは、メスが頑張って産んだあとは、オスが卵の面倒をみます。
メスは産卵後、産卵場を離れ沖合にいってしまいます。
この日も何十匹というホッケと出会いましたが、ほぼ全てがオスでした。
オスが子育てをしている間、卵には様々な天敵が忍び寄ります。

その代表格は積丹名物のウニ。
卵を狙ってウニが近づいてきても、トゲをものともせず、卵から遠ざけます。
けなげに子育てを続け、稚魚がかえるまでのおよそ2ヵ月、オスは何も食べずに守り続けます。
世界最大のタコ 一生に一度の恋の季節

冬の積丹、最大級の生き物といえば「ミズダコ」です。
体長は3メートルほど。世界最大のタコです。
いつもは水深200メートルほどの深い海で暮らしていて、この時期だけ浅い岩場にやってきます。
一生に一度の出会いを求めて・・・

オスが岩場の隙間で一息ついているメスを見つけました。
オスの腕が、岩場の中のメスに伸びていきます。カップルが誕生しました。
そしてそのままミズダコの「交接」が始まりました。交接とは他の動物でいう交尾のような行為です。

オスは腕を使って精子の入ったカプセルをメスに渡します。
ミズダコが繁殖活動できるのは3年から5年といわれる生涯のうちたった一度だけです。
オスは交接後、しばらくすると命を終え、メスは岩場で半年ほど卵を育て、ふ化を見届けると息絶えます。

積丹半島の冬。
厳しい寒さの中、海の中には次の世代へ命をつなぐ豊かな景色が広がっていました。
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