NHK札幌放送局

WEBニュース特集 地震1年 進まぬ住宅再建

北海道WEBニュース特集

2019年9月4日(水)午後4時19分 更新

去年の胆振東部地震からまもなく1年。NHKは、被災地の仮設住宅で生活する178世帯を対象にアンケート調査を行いました。その結果、住宅の再建の見通しがいまだ立っていないと答えたのが半数近くに上りました。なぜ見通しが立たないのか。取材を進めると、被災者が直面する厳しい現実が浮き彫りになりました。                (地震取材班 関口祥子記者)

【住まいを再建できない】

厚真町の仮設住宅で避難生活を送る田居征雄さん(76)。40年あまり住み続けてきた自宅は全壊は免れました。しかし、基礎と住宅がずれてしまっているほか、トイレや浴槽も壊れていて再び住むためには大規模な補修が必要になるといいます。

国の制度では被害の度合いに応じて被災した住宅を「全壊」、「半壊」、「一部損壊」などに分類し、補修する場合、「全壊」は200万円、「半壊」は58万円あまりが支給されます。田居さんの自宅は「半壊」ですが、仮設住宅に住んでいるため制度上、58万円の支給を受けられません。 実際に補修すれば町からは義援金を受けとることができました。ところが、必要な額からはほど遠い状態です。田居さんは自宅の補修を断念、解体することに決めました。住み慣れた地を離れ、千歳市に暮らす長男のもとに身を寄せることにしたのです。田居さんは、「解体の日には泣いてしまうかもしれない。町を離れるのはやっぱり寂しいけれどどうしようもない」と話していました。

【地域そのものがなくなる】
このままでは地域の存続そのものが難しくなってしまう。住民の間では危機感が広がっています。

自宅が半壊の被害にあった松井博之さん(61)です。道に住宅再建のための大型の財政支援を求める署名活動に半年ほど前から取り組んできました。厚真町の住民の半数近い2100人分の署名を集め、先月、道に提出しようと担当の部署に問い合わせました。これに対し、担当者からは「厚真町には、国からすでに54億円あまりが交付されていて、道がさらなる財政支援を行うことは難しい」との返答があったということです。
住宅再建の支援は、町が独自に行うことも可能です。ところが町は道路や河川などのインフラ復旧を優先せざるを得ず、住宅再建の支援には限界があります。
松井さんは、今でも道に署名を提出できないか、方法を模索しながら活動を続けていて、「ライフラインの復旧は進んでいるかもしれないけれど、住んでいる人々の復興はそれに追いついておらず、取り残されている気持ちだ。だからこそ2100人の思いを届けなければならない」と話していました。

この現状について、災害復興などにくわしい兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科の室崎益輝科長は、「住宅の再建ができない人は出て行かざるを得ないので、どんどん人口が流出していく。今の日本の状況でいうと、小さな町、村の力ではどうにもならない状況があり道や国の支援が必要だ」と話し、住宅の再建は地域の行く末に直結すると指摘します。

【独自に対応する鳥取県】

住宅の再建は県が主導して進めるべきことだとして、独自の支援を実現しているのが鳥取県です。3年前に起きた震度6弱の地震では、1万5000棟あまりの住宅が被害を受けました。

自宅の屋根が壊れた50代の女性は、天井からの雨漏りに悩まされていましたが、屋根の応急処置をおこない、現在は収まっています。女性の住宅は「一部損壊」のため、国からの財政支援はありません。しかし県が修繕にかかる20万円あまりを支援してくれました。
支援の財源は、平成13年から県と市町村が折半し、積み立ててきた20億円の基金で、一部損壊には最大で30万円、半壊の住宅の補修にも、最大で100万円の独自の財政支援を行っています。
さらに去年からは、被災者一人一人のニーズに合わせた支援を行う制度、「災害ケースマネジメント」を始めました。県から委託された担当者が、被災者のもとを個別に訪問し、住宅の被害状況や、仕事、家庭環境など、きめ細かく確認し、被災者が何に困っているかを把握します。

こうした調査をもとに、建築士や弁護士、福祉などの専門家を県が手配し、住民と一緒に解決策を探る仕組みです。雨漏りで屋根が傷んでしまった家に住む女性も、県から紹介された不動産の専門家に今後、家を建て直すのか、別の家を探すのかを相談することができました。相談を終えた女性は、「話しを聞いてもらって、アドバイスをもらうだけで全然違います。お金の問題もありますが再建に向けて前向きになることができた」と話していました。

鳥取県の危機管理局の西尾浩一局長は、「地域から人がいなくなってしまっては、元も子もないというところがあります。道路などのインフラの復旧ももちろん重要ですけれども、住宅の再建も地域の復興に不可欠でできるかぎり支援するという考えが基本としてあるべきだと思っています」と話し、被災者に寄り添った支援が地域全体を支えることにつながるといいます。

【寄り添って共に解決を】
住宅の再建では、金銭面で被災者の全ての要望に応えることは実際には難しいのが実情です。だからこそ、限られた資金と時間の中で何が出来るのか、行政が住民に寄り添いながら解決策をともに見いだすことが必要になっているといえそうです。

(2019年9月2日 放送)

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