カーリングが盛んな北海道でも部活動で行っている高校は2校しかありません。
そのうちの1校、北見藤高校の男子カーリング部はようやく4人のメンバーがそろい、今
月、初めての全道高校選手権に挑みました。カーリングに打ち込んできた3年生にとっては最初で最後の大会で何をつかんだのか、チ
ームの戦いを追いました。
北見藤高校の男子カーリング部は学校が男女共学になった4年前に発足しました。当初は少人数で活動を続けていましたが、去年の春に2人の1年生が入部して初めて4人のメンバーがそろい、大会に出場できるようになりました。

チームの中で人一倍カーリングに打ち込んできたのが3年生の鈴木悠生さんです。鈴木さんは地元・北見市を拠点にする「ロコ・ソラーレ」が2018年のピョンチャンオリンピックで銅メダルを獲得したことをきっかけに、カーリングに強く引きつけられるようになったと言います。
それまで水泳や卓球を経験してきましたが、入学した高校にカーリング部があることを知り、友人と一緒に入部を決めました。

北見藤高校3年 鈴木悠生さん
「ルールもよく分からないで入部しましたし、周りの大学生は軽々とストーンを投げているのに自分は歩くこともおぼつかなくて、最初は難しかったです。だんだん姿勢が安定してくると、おもしろいと思うようになりました。カーリングの勝敗は運動神経や体力だけでは決まらず、コミュニケーションや氷の読み、戦術が大事なところがおもしろいです」
チームが始動して8か月余りがたった今月、メンバーたちは年明け早々に開かれる全道高校選手権に向けて北見市のカーリング場で最後の調整を行いました。
3年生にとっては最初で最後になるこの大会を前に、鈴木さんは「めちゃめちゃ緊張します。チームが出来てまだ日が浅いので、コミュニケーションを大切にしながら全力を尽くしつつ、あとは楽しめたらと思います」と意気込みを話しました。

《初出場で感じた公式戦の壁》
全道高校選手権は今月6日から4日間、南富良野町の「空知川スポーツリンクスカーリング場」で開かれ、男子4チーム、女子6チームが出場しました。男女の各上位2チームが2月に開かれる全国大会に進みます。
男子は4チーム総当たりの予選リーグが行われ、北見藤高校は初戦で地元の南富良野高校と対戦しました。

メンバーたちは初めての大会、初めてプレーする会場に戸惑う様子も見られましたが、一進一退の攻防を重ねて4対4の同点で最終の第8エンドを迎えました。第8エンドは北見藤高校が後攻で、最後の1投を空いているハウスの中心付近に置ければ勝てる有利な状況でした。

作戦を考えられる「持ち時間」も6分残り、余裕がある展開に見えましたが、メンバーたちは最終投の方針をなかなか決められませんでした。
その結果、時間を費やして投じた最後のストーンは狙っていた中心付近をそれて相手のストーンより外側に止まり、4対6で敗れて初戦を飾ることができませんでした。

試合後、メンバーたちは控え室でなぜ勝ちきれなかったのかを率直に話し合いました。スキップの3年生が「様子見をしないと分からない状況だった。氷の状態を読めなかった自分の責任」と述べたのに対して、鈴木さんは「俺たちも口を出すべきだった」と話し、チームとしてよりコミュニケーションをとって作戦の変更や氷の変化に対応していくことを確認し合いました。

北見藤高校3年 鈴木悠生さん
「最終投は3種類くらい作戦を考えていましたが、それぞれのデメリットを考え始めたら止まらなくなって、結局うまくいきませんでした。最初に考えた作戦でいっていたら勝てたかもしれなかったですね。勝ちを逃した悔しさもみんなあったと思うので、言わないで後悔するよりも、言って後悔する方がいいと確認し合いました」

《教訓を生かして初勝利へ》
翌日の2戦目の相手は同じ北見勢の常呂選抜でした。去年優勝した強豪ですが、全国大会に望みをつなぐには負けられない1戦です。

序盤はリードを許す展開になりましたが、メンバーたちは初戦の反省を生かして積極的に声を掛け合う姿が見られました。
そして、0対2で迎えた第4エンド、サードの鈴木さんにチャンスが巡ってきました。ガードに守られた味方のストーンがハウスの中に残り、良い位置にストーンを入れられれば大量得点も狙える状況でした。

直前までしっかり打ち合わせた鈴木さんが投じたストーンは、メンバーたちのスイープにも導かれて狙いどおりにハウス奥にある相手のストーンを押して内側に止まり、複数得点を確実にするショットになりました。

このエンドで2点をあげて同点に追いついた北見藤高校は、その後も勢いに乗って第6エンドでスチールを決めて逆転し、強豪を相手に4対3で初勝利を挙げました。

続く3戦目で南富良野選抜に惜敗して全国大会には進めませんでしたが、鈴木さんは最初で最後の高校選手権での勝利に大きな手応えを感じていました。
北見藤高校3年 鈴木悠生さん
「3戦ボロ負けして終わるかもしれないと思っていましたが、格上だと思っていた相手に勝って、全国にあと一歩のところまでいったのは自分の中でとても自信になりました。達成感もあったけど悔しさも残る大会だったので、1年生には今後2年間で部員を入れてぜひ全国まで頑張ってほしいです」
《高校後も続くカーリング道》
高校最後の大会を終えた鈴木さんは今春、地元の北見工業大学に進学することが決まっています。北見工業大学はカーリングの研究が盛んで、鈴木さんは競技を続けながら、選手を支援するシステムの開発に携わりたいと今後の目標を語っています。
北見藤高校3年 鈴木悠生さん
「自分がカーリングをする中で、最初は戦術がよく分からなかったので、戦術などを自動で考えてくれるシステムがあればいいなと思いました。1人の選手としてカーリングをして、どのようなシステムがあったらいいかを考えながら開発に携わりたいです」

「カーリングのまち」と呼ばれる北見市ですが、子どものころからカーリングを始めても進学などで競技から離れてしまう人が多くなっているのが現状です。
地元の大学で競技を続けながらカーリングのすそ野をさらに広げようと意気込む鈴木さんの取り組みを、今後も取材したいと思います。

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