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後発地震注意情報 従業員守る企業の取り組みは?

  • 2023年12月25日

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出ても、社会経済活動は継続されることになっています。このため、津波の浸水が想定される地域の企業には従業員を守るための対策が必要となります。こうした中、後発地震注意情報の運用開始を受けて、新たな取り組みを始めた企業があります。一方、対応が追いついていない企業も少なくなく、課題が浮き彫りになっています。(苫小牧支局 臼杵良)

浸水域の工場の地震・津波対策

道内最大の取扱貨物量を誇る苫小牧港。周辺の浸水域には、製造業や運送業を中心におよそ100の企業があり、北海道の経済を支えています。立地する企業は従業員数が10人規模の中小企業から、数千人規模の大企業までさまざまです。

苫小牧港で最も多い従業員を抱える自動車部品の工場です。海岸からおよそ1.4キロの場所に位置し、日中は2000人近くが作業にあたっています。

この工場では、東日本大震災のあと津波への対策を強化しました。
新たに7つの避難階段を設置し、従業員が高さおよそ10メートルの屋上に速やかに避難できるようにしました。また、屋上には従業員の点呼ができる広場を設けるなど、災害時の拠点としての整備が進められています。

後発地震注意情報で新たな取り組みも

後発地震注意情報の運用開始を受けて、工場では新たな対応も決めました。まず、情報が発表された場合には、1日2回館内放送でアナウンスを行い、周知を徹底します。

アナウンスの内容
「後発地震注意情報が発表されています。巨大地震への備えを徹底してください。地震や津波警報の発表があった場合は、直ちに避難できるよう、職場の避難ルールを確認してください」

また、従業員向けには、具体的な対応をまとめたチェックリストも用意しました。避難経路や誘導方法のほか、非常口の状況やハザードマップで想定される津波の高さなどを確認することにしています。

さらに、工場の屋上には、広さおよそ2600平方メートルの男女別の避難所も設けられています。毛布や発電機のほか、2200人の3日分の食料などを備蓄していて、後発地震注意情報が発表された際には、こうした備えが不足していないかも改めて点検することにしています。

後発地震注意情報が出ても、社会経済活動の停止までは求められていないため、工場の操業を続けながらも、地震があればすぐに安全を確保できるように準備を進めることにしています。

トヨタ自動車北海道 総務部 大友尚 主任
「情報が発表された場合、生産体制は変わりませんけれども、実際に災害が起きた場合に、シミュレーションどおりに避難できるかどうかといった部分の不安はある。後発地震注意情報が発表されたら従業員にしっかりと発信し、地震に備えてもらえるようにしたい」

対応が追いつかない企業も

ただ、しっかりとした対策ができている企業だけではありません。苫小牧港周辺の企業の中には、建物が低く屋上を避難に活用できないところもあるなど、それぞれの環境が異なるため、対策にも差があることが分かってきました。

苫小牧港管理組合が、2023年に浸水域に立地するすべての企業を対象に行ったアンケートでは、地震や津波の際の具体的な避難計画を策定している企業はおよそ6割にとどまりました。また、避難訓練を定期的に実施している企業は、およそ半分だったということです。

苫小牧港管理組合 京野勇一 業務経営課長
「私たちも課題があるというふうに思っている。避難経路や避難する目標地点というものをちゃんと確認したうえで、企業内でみんなが共有するということが大事だと思う。苫小牧港管理組合としても、そういう意識を持ってもらうような働きかけをしていきたい」

専門家は、後発地震注意情報をいかすためには、その土台となる避難計画が欠かせないと指摘しています。そのうえで、日頃の対策を再確認することが必要だとしています。

北海道大学大学院 高橋浩晃 教授
「浸水地域、特に港湾では津波がはやく来る可能性もあるので、すべての企業で避難計画を作ってもらうことが必要になってくるのかなと感じている。また、高所での荷役のような複雑な作業をしている中で、警報が出る可能性もあるので、迅速な避難を実現するためには避難訓練が欠かせないと思う。そのうえで、後発地震注意情報が出た時には再度それを確認する。そういうような体制や仕組みを整えてもらいたい」

取材後記

後発地震注意情報の運用開始から1年がたちましたが、取材を通じてまだまだ課題が多いと感じました。私はおよそ20社の担当者に話を聞きましたが、従業員が少ない中小企業を中心に、そもそも地震や津波への備えが進んでいない企業もありました。さらに、避難計画を作っていると回答した企業でも、避難の時間が足りるかや、避難先が十分に安全かなど、その実効性に不安を抱えているという声が聞かれました。

後発地震注意情報については知らないという企業もあり、発表された際の具体的な対応は決まっていないという企業が少なくありませんでした。

自治体などには、企業に対してこの情報について知ってもらう取り組みにいっそう力を入れていくことが求められています。また企業側は、この情報をうまく活用するためにも、まずは日頃から緊急時の対応を検討して、準備をしておくことが大切だと思います。

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