5月6日(木)にお送りした、北海道まるごとラジオ「スイーツ王国北海道~札幌編~」。
MCは大河内惇アナウンサー、キャスターの西條真央(筆者)でお送りしました。

ゲストは、今年3月に札幌で開かれたスイーツのコンテスト「さっぽろスイーツコンペティション」でグランプリに輝いたパティシエール・多田しおりさん(左)と、年間100種類以上のスイーツを食べ歩いている、札幌のグルメ情報誌の編集長・福崎里美さんです(右)。


まずは、多田さんがグランプリを獲得した「さっぽろスイーツコンペティション」について、審査員を担当した福崎さんに伺いました。
大河内:このコンペティション自体の面白さ、魅力ってなんですか?
福崎編集長:札幌を一年間代表するスイーツということで、まず一般の方から夢のスイーツを募集します。そうすると、私たちが想像つかないものがたくさん出てくるんです。そのテーマをもとに、プロがケーキを作ります。一般の人からヒントを得るので、どう生かされているのか、どんな風に夢が実現できるのか、面白いところですね。
☆「さっぽろスイーツコンペティション」とは
- 札幌洋菓子協会や、札幌市、札幌商工会議所で構成する“スイーツ王国さっぽろ推進協議会”が開催。
- 2006年から、毎年3月に開かれている。(去年は新型コロナの影響で中止)
- こんなスイーツあったらいいなーという、空想のスイーツを一般に募集して、その空想スイーツをもとに、北海道産の食材を作った作品で競う。
今回は、216通のアイデアが寄せられて、そのうち10種類のアイデアが選ばれました。プロでない人も考えるからなのか、その発想はとても豊か!9歳の子が考えた、リスの形をした可愛らしいロールケーキや、札幌テレビ塔の形をしたモンブランなどなど。
空想アイデアをもとにして、今年はプロの職人28人が参加して競いました。
その頂点に立ったのが、プロになって6年目の多田しおりさんです。
大河内:3回目の挑戦で頂点に。グランプリに輝いた瞬間、どうでした?
多田さん:実感がわかなくて、まさか自分が…という気持ちでしたね。いろんなお店のシェフが出品しているコンテストなので、自分がグランプリを獲れるとは思っていなかったです。
西條:まず誰に報告したんですか?
多田さん:電話を受けたときは職場にいたので、すぐみんなに獲ったよ!と大きい声で言って、階段を駆け下りて社長に報告しました。すぐ公表できなかったので、じれったい気持ちでいましたね。
そのケーキがこちら!名前は「さっぽろレアチーズカフェ」

大河内:苦労したところは?
多田さん:審査員の目に留まるようなケーキを作らなければいけない、これが第一に考えたことでした。
大河内:まずは見た目、ということですか。
多田さん:食べたいと思ってもらえる見た目を作ることが、まず第一かなと思ったので。イラストの絵ももちろん綺麗だったんですけど、そこからまた形を変えてみたりとか、見た目をまず考えましたね。
大河内:どれぐらい試行錯誤したんですか?
多田さん:トータルで2か月ぐらいですね。
大河内:普段の仕事もある中で、大変だったでしょうね。

北海道の食材をふんだんに使ったこのケーキ。気になる味について伺いました。
多田さん:北海道の食材を使っています。りんごにキャラメルの風味をつけて、シャキシャキした食感も残しつつ、コーヒーの味とレアチーズの部分を滑らかな食感にしました。サクサクしたサブレの生地を使って、その食感も楽しんでもらいながら、道産の乳製品を感じてもらえるようなケーキにしました。
放送中、試食させて頂きました。とっても滑らかなレアチーズに、コーヒーの深い味わい。何層にも味が重なっていますが、全く重たくなく、軽やかな口どけ…。思わず「幸せ~♡」と声に出してしまいました。とっっても美味しかったです!

福崎さんは、「さっぽろスイーツコンペティション」の審査員を長く務めています。このコンペ自体が、札幌のスイーツ業界全体にどんな影響を与えているのかを聞いてみました。
福崎編集長:市民の方からアイデアを募集しているので、まずそのアイデアがすごく斬新なんです。それを形にすることで、プロの方々も刺激を受けたり、切磋琢磨したりする部分があると思います。私も6,7年審査員を務めていますが、年々レベルが上がっていると感じていますし、特に今年はレベルが高かったです。前回と今回は若い女性が優勝しているので、キャリアに関係なく、新しい感性の作品が増えていますね。今回の多田さんの作品も見た目が素敵です。そうやって見た目に刺激される物も増えてきているので、業界全体のレベルアップにつながっていると思います。
西條:多田さんもエントリーを続けて、ご自身の成長は実感していますか?
多田さん:一年で知った知識や技術をコンテストに凝縮して出すイメージなので、去年より今年のほうが技術は上がっていると思います。


進化が止まらない、北海道のスイーツ。全国に誇れる北海道の魅力を伺うと…?
福崎編集長:やっぱり素材ですよね。フレッシュな北海道産の食材を使えるので。クリームは本当においしいと思います。首都圏で流行ったものが札幌に入ってくる、ということが多いんですけど、シメパフェのように札幌で流行ってから東京で広まっていくこともあるので、そういうスイーツが今後どんどん出てくることに期待したいですね。
大河内:福崎さんが感じる“スイーツの進化”はありますか?
福崎編集長:味の奥深さとか、素材の組み合わせが斬新になってきていて、進化を感じますね。あと、見た目もすごく進化していて、スイーツって本当に見た目が重要だと思います。それでワクワクして楽しい気持ちになるので。もう一つ、これまでにあったスイーツが進化している、という場合もありますね。カヌレもアレンジされたり、モンブランも今は極細のものが流行っていたりして、“前からあったものが進化して、トレンドになっている”という場合もあります。
西條:こんなことが味を左右するんだ!という技を、言える範囲で教えて欲しいです。
多田さん:チョコレートは温度1度で口どけが全然違いますし、凝固剤の量が0.1g違うだけで、ムースやゼリーの硬さが違ってきたり。
大河内:1円玉の10分の1の重さですよ!?
多田さん:温度とかグラムが細かいので、仕込むときは室温も結構気にしますね。
西條:そういう技を普段、どうやって磨いているんですか?
多田さん:SNSを見ていますね。フランス人のチョコを細工する動画を見たり、ケーキの飾りや見た目はネットを見たりしますね。あとは、美術館に行って色使いとか、細かい模様のデザインを見てインスピレーションを受けたりとか、それをコンテストに再現したりしています。
SNSや美術館などからヒントを得ることも多いそう。多田さんのスイーツに向き合うひたむきな姿に、驚かされました。
大河内:厨房に立っているだけではダメなんですね。
多田さん:美術館に行ったら必ずアイデアが出てくるわけでもないんですけど、気分転換にもなりつつ、なにかあるかな~と思いながら観に行きますね。
多田さんのストイックさには、出演者一同、驚きでした。美味しいスイーツを作れる人達には、何か共通点はあるのでしょうか?
福崎編集長:一つ目は、すごく努力している。いい意味での変態ですよね。
一同:笑い
福崎編集長:0.1gにこだわるところがすごく大事だと思うんです。あとは、美術館の話がありましたけど、感性が豊かなこと。最後は、チャレンジ精神なんじゃないかな、と思います。スイーツの枠にとらわれずに挑戦しようという気持ちを持った人が、新しいスイーツを生み出している気がしますね。

多田さんは、これまで3回、さっぽろスイーツコンペティションに参加しています。なぜ参加し続けるのか、こだわりを聞いてみました。
多田さん:毎年のコンテストは楽しみにしているんですけど、普段会社に勤めていると、自分の技量が分からなくなってしまうんですよね。日本中のパティシエ、パティシエールの中で、自分はどのぐらいの技量を持っているのかを試せるのがコンテストだと思っています。ほかのコンテストを見ると、自分はまだまだだと思ったり、もっと頑張ろうという気持ちになります!
西條:普段の仕事と並行して、コンテストに出す作品作りをするって、かなり大変じゃないですか?
多田さん:20時、21時に仕事が終わってから終電まで作品を作ったり、徹夜もしました。あとは、早朝、仕事の前に作ったり。普段の仕事が疎かになっては元も子もないので、切り替えながらやっていましたが、大変でしたね。
大河内:会社の理解も必要ですね。
多田さん:会社にいる分、電気代や光熱費もかかってしまうので。
大河内:そんなところも気にするなんて!人柄の良さが表れていますね。グランプリを獲って、得られたものはありますか?
多田さん:大きな自信につながりました。まさか自分が、という気持ちが大きかったので。

このコンテスト、グランプリを獲った作品は、ほかの店舗でさらにアレンジを加えて販売されます。店舗によって個性が出るのが、面白さの一つです。
大河内:自分の作品がほかの店に並ぶって、どうですか?
多田さん:恐縮ですね。自分が思いつかなかった味やデザインになっていると思うので、それを楽しみに巡りたいと思います。

Q.「さっぽろレアチーズカフェは、北海道じゃないと食べられないですか?」 A.多田さん「現在、会社で検討中です。でもせっかくなら、ぜひ北海道に来て食べてもらいたいですね。」
全国の皆さん。コロナが落ち着いたら、ぜひ北海道に遊びに来て、このケーキの美味しさを味わってくださいね♪

気になる札幌のスイーツの最新事情を教えてもらいした。ズバリ、今札幌で人気のスイーツは…?
福崎編集長:マリトッツォが熱いです。イタリア・ローマで朝食に食べられていたスイーツ。小さなブリオッシュ生地に生クリームを挟んだスイーツで、見た目がコロンとしていて可愛いです。
大河内:何店舗ぐらいあるんですか?
福崎編集長:札幌で発見したのが2月ぐらいなんですが、そこからスタッフが20店舗は確認しています。日々増えていて、旭川、函館、美瑛にも店舗があって、もう観測不能になってきています(笑)
大河内:まず東京でブームになったそうですね?
福崎編集長:ちょっと大きな店でも取り扱い始めたので、札幌にも来るぞ来るぞ!と待ち構えていたら、本当にブームが来て、一気に広がりましたね。
大河内:生クリームたっぷり使っている物だから、北海道で作られるものは、また一味違っているんじゃないですか?
福崎編集長:北海道のクリームは美味しいですよね。クリームの量は多いんですけど、お店によっては軽くサラッと食べられるものとか、クリームをアレンジして、見た目が可愛いものも結構ありますね。
西條:多田さんは、マリトッツォは知っていました?
多田さん:知っていたけど、うちの店では扱っていなくて。ただ、近所のカフェなんかでも最近みかけますね。
大河内:流行には刺激受けますか?
多田さん:受けますね。SNSなんかを見て、毎回勉強しています。
大河内:札幌では、新しいスイーツを作ったり、新しくスイーツのお店を作る動きは活発なんでしょうか?
福崎編集長:毎年流行があって、チョコレート専門店とか、フルーツサンドだけ、バスクチーズだけに特化した専門店とかがありますね。毎年、10,20は新店舗が出ていて、そうじゃない既存の店でも、その時々で新しいスイーツは必ず出しているので、スイーツを作る動きは活発で、それを食べる人もそれを求めているんだなと感じています。
大河内:多田さんは、他の店のスイーツは食べるんですか?
多田さん:勉強と切り替えて、色んなケーキを食べます。月に一回、一気に10店舗巡ったりしますね。
大河内:それ、ちゃんと食べてるんですよね?
多田さん:食べてます。多いときで20個ぐらいを食べていますね。友達に協力してもらいながら。ケーキの断面をじっくり見て、写真を撮りながら食べています。

大河内:コロナの影響について、お店を取材していてどう感じていますか。
福崎編集長:外食が出来ない分、ちょっとした贅沢でスイーツを楽しむ人が増えていますね。ケーキやパンなどは、それほど利用者は減っていないと聞きます。ちょっとしたレストランがこだわったスイーツをデリバリーしていたりもするので、家で食べられるスイーツの幅は広がっていると思います。
大河内:作り手にとって、デリバリーへの切り替えは難しいんですか?
多田さん:形を保つ、という点はよく考えないといけませんね。丁寧に運ばなければいけないですし、飾りのチョコが落ちてしまったりしないよう、気を付けなければいけないですね。
巣ごもり需要で、これからますますスイーツを味わう機会が増えるかもしれませんね。最後に、多田さんにこれからの目標を伺いました。
大河内:今後の目標はありますか?
多田さん:来年もコンペに挑戦して、2連覇を目指したいですし、お客さんに喜んでもらえるような商品づくりもしていきたい。
大河内:具体的には?
多田さん:店ではパフェを出しているので、シーズンごとに美味しいパフェを出していけたらなぁと思っています。
大河内:福崎さん、これからも美味しいスイーツが生まれてきそうですね。
福崎編集長:外出できない期間が続きそうなので、自宅で贅沢を味わえるスイーツって、せめてもの楽しみになると思います。私自身は、こんなスイーツ食べたことない!というようなスイーツを期待しています
多田さん:頑張ります…!
北海道には、豊かなスイーツの原料と共に、多田さんのような若くて熱意と力のある菓子職人がいます。そして、そんなプロの人たちが切磋琢磨しながら技術を磨く土壌もあります。これから、どんなスイーツがここ北海道から誕生するのか楽しみです!
(おまけ)
前回の記事で、大河内アナの王子姿をお見せすると書きましたので、約束通り大河内アナに「スイーツ王子」になってもらいました!大河内アナファンの皆様、大変お待たせいたしました!
パソコン作業中の大河内さんのもとへ、西條が王冠を持って突撃!!

大河内アナ「こ、これを…。」
西條「前回の記事で(勝手に)約束したので。被ってください、お願いします。」
…パサッ。(王冠を被る音)
キラーンッ!スイーツ王子、誕生ッ!!!

意外と撮影にノリノリだった、スイーツ王子。ポーズも積極的にとってくれました(笑)
スイーツ王子「ここまで読んでくれた姫たち(読者の皆さん)、ありがとう☆次回のまるラジもよろしくね☆」
~おしまい~