NHK札幌放送局

JR根室線 富良野〜新得廃止へ 地域の足はどうなる?

ほっとニュースweb

2022年3月16日(水)午後1時19分 更新

JR北海道が廃止の意向を示す根室線の富良野・新得間。沿線自治体は鉄路の存続を断念し、バス輸送に転換することを決めました。 今後、地域の足はどうなるのかー。地元を取材しました。 (旭川放送局 海野律人)

栄枯盛衰 富良野・新得間

滝川と根室を結ぶJR根室線。花咲線の愛称がある区間を含め、その延長は400キロを超えます。
このうち廃線が固まったのは、富良野・新得間のおよそ80キロです。
この区間の開通は、明治40年(1907年)。開通から115年、多くの人や荷物を運んだ鉄路が失われることになりました。

NHKの過去の映像をさがしたところ、昔は今とはずいぶん、様子が違っていたことが分かりました。
1961年(昭和36年)放送の紀行番組では、狩勝峠を蒸気機関車にひかれて力強く走る長大編成の列車が撮影されていました。

峠越えの雄大な風景は、「日本三大車窓」の1つにも数えられました。
昭和の時代、富良野・新得間は特急列車や貨物列車などが多く行き交う“大動脈”でした。
青函連絡船が運航されていた時代、北海道の特急は札幌ではなく函館が起点で、函館と釧路を結ぶ「おおぞら」は道東へ向かう旅行者の貴重な足でした。昼だけでなく夜も列車は走り、小樽と釧路を結ぶ寝台車つきの夜行普通列車「からまつ」が運行された時代もあります。

富良野市に住む元国鉄の機関士、近田靖久さん(79)は、そんな根室線の“全盛期”を走り続けてきた1人です。
近田さんに当時の様子をうかがうと、「貨物列車や旅客列車が昼も夜も走り、夜は1時間に上下合わせて4本くらいは走っていた。富良野駅前には屋台も出て、夜でも活気があった」と振り返ります。

転機を迎えたのは昭和56年(1981年)10月。石勝線の開通です。
道央と道東を結ぶ主要ルートは石勝線に変わり、富良野・新得間は利用者が激減しました。
1日の利用者数をみますと、1キロ当たりに換算して、石勝線開通前年の昭和55年(1980年)は4664人でしたが、昭和60年(1985年)には654人に落ち込んでいます。開業4年で実に7分の1に減ったわけです。
その後、地域の過疎化が進み、沿線の人口は減少。利用の中心は通学の高校生となり、1日の利用者数は平成27年(2015年)には152人にまで減っています。
近田さんは「列車の本数も減って、乗客の数も減った。昔は長大編成が当たり前だったのが、3両でもガラガラの状態になった。まちも元気がなくなった」と話します。

元国鉄の機関士 近田靖久さん

そして水害で…

さらに災害が追い打ちをかけます。
平成28年(2016年)8月、台風10号による水害では、土砂が線路に流れ込むなどして富良野・新得間は列車の運転ができなくなりました。
その後、富良野と南富良野町の東鹿越の間は列車の運転が再開されましたが、狩勝峠を挟む東鹿越と新得の間は今も列車は通れず、代行バスが運行されています。

この水害が富良野・新得間の廃線を決定づけました。
JR北海道は水害の年の11月、経営悪化を受けて、富良野・新得間など5区間を廃止する意向を示しました。
富良野・新得間については、鉄道を残す場合は沿線自治体が維持管理費として年間およそ11億円を負担するよう要請しました。

沿線自治体は5年以上かけて議論を重ねてきましたが、ことし1月、「国の財政支援が期待できないなか、自治体負担は困難だ」として鉄路存続を断念しました。
沿線の住民からは「さみしい」との声が聞かれる一方で、「維持費を考えると、存続はなかなか難しい」と諦めの声も聞かれます。
鉄道でまちに活気があふれていた時代を知る近田さんは、「根室線があることによって地域が発展し大きくなった。鉄路が失われると過疎化に拍車がかかるだろう」と話し、廃線でさらに地域が衰退することを懸念しています。
 
富良野・新得間には、映画やテレビドラマのロケで使われた駅もあります。
幾寅駅は映画「鉄道員(ぽっぽや)」で高倉健さんが駅長を務める「幌舞駅」として登場し、高倉さんの命日の11月10日には毎年、多くのファンが駆けつけます。

民放のテレビドラマ「北の国から」は富良野市が舞台で、田中邦衛さんが父親役を演じた一家が布部駅に降り立つシーンは象徴的でした。これらの駅ではもう列車は発着できないことになります。

JRが鉄道を廃止する意向を示した5区間のうち

  • 石勝線の新夕張と夕張の間(平成31年/2019年)
  • 学園都市線の北海道医療大学と新十津川の間(令和2年/2020年)
  • 日高線の鵡川と様似の間(令和3年/2021年)

3区間は、すでに廃止されています。根室線の富良野・新得間が廃止されれば、残るは留萌線の深川と留萌の間だけになります。根室線の動きは、残る留萌線の議論にも少なからず影響しそうです。

どうなる?地域の足

沿線自治体は、富良野・新得間をバス輸送に転換することを決め、すでに地元のバス会社と具体的なルートの検討を進めています。
現段階で、国道38号線を通り狩勝峠を越えて富良野・新得を結ぶルートと、アウトドアが盛んな「かなやま湖」を経由して富良野・トマムを結ぶルートを「併用」することを検討しています。

沿線自治体は、住民の意向をしっかり反映させてルートを固めたい考えです。
富良野市の企画振興課長で、沿線自治体で作る協議会の関澤博行事務局長は「不安に感じている部分もあると思うが、住民の希望や要望を丁寧に聞き取り、現在協議しているバス路線に反映させていきたい」と話します。
ただ、沿線自治体による住民説明会は、まん延防止等重点措置が延長されたこともあり、まだ開けていません。
沿線自治体としては、説明会で住民の理解を得てなるべく早くバスのルートとダイヤを確定させたい考えです。そのうえで運行で必要な費用を割り出し、JRに具体的な支援を求めることにしています。

今回の取材のなかで、地域住民からは鉄路廃止で過疎がさらに進むことへの懸念や、転換後のバス路線の持続性を疑問視する声を何度も聞きました。地元では「鉄路廃止、バス転換」の方針を考え直すよう、住民団体が沿線自治体に求める動きも出ています。
かつて国鉄時代には北海道の隅々まで走っていた鉄路は赤字を理由にどんどん廃止され、過疎化が進行するなかで、転換後のバス路線の維持が難しくなっている地域もみられます。
地域の公共交通はどうあるべきか、ここ、根室線でも問われています。

2022年3月14日ほっとニュース北海道で放送

3月のダイヤ改正では無人駅の廃止もありました。森町の本石倉駅の取材はこちらでどうぞ。

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