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「核のごみ」文献調査 “お金”はどうなった?

ほっとニュースweb

2021年10月8日(金)午後6時10分 更新

「20億円」
これはいわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定をめぐり、第1段階の「文献調査」を受け入れた自治体に国から支給される“お金”、交付金の額です。文献調査が始まっている後志の寿都町と神恵内村が、受け入れるにあたって期待したのがこの交付金。調査の受け入れを決めて1年。その後、交付金がどうなったのか、国はどう対応すべきか考えます。

交付金は調査への「敬意と感謝」

高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定をめぐり、調査は3段階に分けて行われます。文献調査はその第1段階で、かかる期間は2年間程度です。

交付金は、調査を受け入れた自治体に対し、それぞれの調査の段階ごとに国から支給されます。文献調査での交付金は、1年ごとに10億円、最大2年間で20億円です。

なぜ、自治体に交付金を支払うのか。経済産業省は「調査に協力してもらうことの敬意と感謝を具体化する」という趣旨だとしています。

道路や水道、教育文化施設などの公共施設の維持整備費、▼医療・福祉施設で働く人の人件費、▼それに産業支援にかかる事業費など、幅広く充てることができます。

交付金、寿都町と神恵内村はどうした?

規模の小さな自治体にとって10億円は巨額です。

調査を受け入れた寿都町と神恵内村の予算規模を見てみましょう。

今年度の予算の総額は、寿都町でおよそ55億円、神恵内村でおよそ20億円。寿都町は交付金10億円が含まれている数字なので、その分を除くとおよそ45億円です。神恵内村は年間予算額の半分を占める規模。いかに大きいかが分かります。

交付金の使いみちを3つに分けて説明します。自治体の事業費、基金、それに近くの自治体への配分です。

それぞれの自治体は、すでに今年度予算に事業費として計上しています。

寿都町では▼消防の人件費や▼ごみ処理に関する負担金など、あわせて4億3000万円。神恵内村は▼診療所の医療機器や▼ごみ収集車の購入費など、あわせて4750万円です。

基金として積み立てるのは、いわば「貯金」です。これは来年度以降、自分たちで使うお金となります。

最後の、近くの自治体への配分は、5割未満であれば「地域の実情に応じて配分」できるとされる国の通達に基づいています。

周辺の地域にも調査について理解してもらおうという意味がこめられています。北海道経済産業局によると、今回のケースで受け取ることができたのは、道、それに近隣の町村だということです。

“配分拒否”の自治体相次ぐ

しかし、交付金の配分をめぐって、周辺自治体の対応は分かれました。

▼寿都町の周辺では、岩内町が7500万円を受け取り。
▼神恵内村の周辺では泊村、共和町、それに古平町が7500万円を受け取りました。

一方、▼寿都町に隣接する蘭越町、黒松内町、島牧村が受け取りを拒否。
▼神恵内村に隣接する積丹町も拒否しました。また、道はいずれも受け取りを拒否しました。

拒否する自治体が出た大きな理由は、調査への反発です。

神恵内村の周辺で唯一受け取らない選択をした、積丹町の松井秀紀町長は次のように話しました。

積丹町 松井秀紀町長
「交付金の配分の話が出る以前に議会で(核抜き)条例を可決し、私が公布したので、尊重するのは当然だ。この交付金に頼らないまちづくりを考えていく」

町長が指摘した「核抜き条例」とは、「核のごみ」の持ち込みを拒否する条例です。

交付金を受け取らなかった4つの自治体のうち、蘭越町をのぞく3つはすでに「核抜き条例」を制定していて、蘭越町も議会で審議しています。

受け取りを拒否した自治体は、調査の受け入れに対して議会が反発し、「核抜き条例」を制定、審議していて、その判断を尊重して「筋を通した」と言えます。

一方で、古平町は、議会が「核のごみ」の持ち込みを拒否する意見書を可決したにもかかわらず、交付金を受け取ることを決めました。議会が持ち込みを拒否する方針を掲げながら、交付金は受け取るという判断は矛盾しているように見えます。

これに対し、古平町の成田昭彦町長は「議会が意見書を可決したことは、尊重しなければならないと思ってはいる。ただ、町としては交付金を地域振興に活用したいと考えていて、その点を議会にも理解をしてもらえたので、交付金を受け取ることを決めた」と説明しています。

国とNUMOは“溝”を埋める努力を

寿都町、神恵内村と、交付金の受け取りを拒否した自治体の間には隔たりができたかたちになっています。

この先、文献調査は1年あまり続くだけに、地域の足並みが乱れる事態は好ましくありません。専門家は、国と調査を実施するNUMO=原子力発電環境整備機構が周辺自治体とも丁寧に対話をする必要があると指摘しています。

原子力政策と地域の関係に詳しい 東洋大学 井上武史教授
「核抜き条例や交付金の配分をめぐって、自治体ごとに対応の違いが生じているという意味では、溝が深まったと言える。これを放置しては、これからまた大きな動きの中でいろんな内輪もめが出てくることが想像できる。こうなった以上、それぞれの地域にしっかりと国とNUMOが説明をし、理解を求めていかなければいけない。対話と対話を重ねて、信頼関係を構築していくしかない」

その上で、井上教授は「それ以上」の問題として、国の原子力政策が不透明なことを指摘しました。

東洋大学 井上武史教授
「国が原子力政策をどうするのかと言う全体像が、必ずしも明確になっていない。このままでは、今後の政策に大きな変化がおこる可能性も否定できないとの不安を、多くの自治体が持っているのではないか」

国は原子力について、中長期的なエネルギー政策の方針を定める「エネルギー基本計画」の政府案で、国民の懸念を解消したうえで原発の再稼働を進めるとしています。一方、原発の新設や増設、それに建て替えについては計画に盛り込んでおらず、位置づけが不明確という批判が根強くあります。

また、「核のごみ」の最終処分については「全国のできるだけ多くの地域での調査の実現」を掲げていますが、いまだ2つの自治体のほかに調査を受け入れると表明したところはありません。

今の国の姿勢では、自治体が国に協力しても方針が変わってはしごを外されるという不安がつきまといます。国には、将来的に原子力をどうしていくのかというスタンスをもっと明確に示すことで、自治体の不安を拭い去る努力こそ必要です。
(小樽支局記者 小田切健太郎)

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2021年10月8日

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