稚内大谷のセンバツ高校野球出場はかなうのか?春夏通じて初の甲子園なるか?
1月27日の出場校の発表日。学校の体育館では、野球部の監督や部員が、インターネット中継で発表を見守りましたが、21世紀枠の出場校には選ばれませんでした。それでも、利尻島出身の4番バッター菅原秀人選手と野球部を率いる本間敬三監督は夏に向けて、固い決意を語ってくれました。自分たちの夢のために。(旭川放送局稚内支局 山川信彰)
甲子園を夢のままにしない
稚内大谷高校の落選が決まった後、野球部の本間敬三監督は、部員たちに、こう語りかけました。
本間敬三監督
「期待していたけど、これが現実。残念だし、悔しいな。監督の私が、一番、受け止められていないかもしれない。(21世紀枠の候補校に選ばれてから)この1か月を過ごせたのは、地域の人や学校の支えがあったからだ。それを忘れずに、強い稚内大谷を作っていこう」

本間監督のメッセージを聞いている部員たち。ふだんは明るい元気印の4番バッター菅原秀人選手は、目を涙で潤ませていましたが、インタビューマイクを向けると、前を向いて、私の目を見て、まっすぐに答えてくれました。
菅原秀人選手
「結果は悔しかったですが、(21世紀枠の候補校に選ばれてから)この1か月は自分にとって成長できた期間だったと思う。もう1回夏に向かって頑張るって、強い気持ちで。甲子園は自分にとっての夢の舞台で、高校野球の集大成。夢のままにしないで、出場できるように頑張りたい」

21世紀枠の候補校に選ばれて
ことし3月に開幕する95回目のセンバツ高校野球。高校球児の夢の舞台、甲子園。
日本最北の私立高校、稚内大谷高校は、困難な状況を克服して優秀な成績を残した学校が対象となる「21世紀枠」の候補校に、北海道から選ばれていました。

稚内大谷高校野球部は部員28人。1年間のうち6か月は雪のためグラウンドが使用できない厳しい環境です。冬は雪の中、防寒対策をして厳しい練習を繰り返してきました。去年秋の道大会では、ベスト16での敗退でしたが、どんな困難に直面しても、あきらめずに前向きに取り組んできた野球部の姿勢が評価されました。21世紀枠の候補校は、全国で9校。このうちの3校に選ばれれば、甲子園に出場できることになっていたのです。
“もしかしたら、俺たち、甲子園に出られるかもしれない”
そんな期待を胸に抱いていた野球部員の中で、私が注目したのは、チームの4番バッターで、利尻島出身の菅原選手でした。菅原選手は、地元の利尻島の高校に野球部がなかったため、甲子園出場を夢みて、稚内大谷高校に進学。親元を離れて、学生寮で生活していました。心の支えにしていたのは、利尻島で過ごした仲間たち。寮の自室には、中学校時代のクラスメートや恩師からのメッセージが書き込まれた野球帽が大切に飾られていました。

利尻島の仲間とともに
菅原選手が、稚内大谷高校で野球がしたいと、親に伝えたのは進路に悩んでいた中学2年生の時だと言います。大好きな野球を続けて甲子園に行きたい。利尻島は、大好きだったが、その思いが菅原選手を突き動かしたと言います。
菅原秀人選手
「利尻島は自然がすごく豊かで、人の温かみもあって、過ごしやすい島。島の人たちから応援されると頑張ろうってパワーをもらえる。野球ができているのは、みんなのおかげ。感謝の気持ちを持って自分自身の成長のために来ました」
菅原選手は学生寮での自主トレを欠かしません。冬でも毎日15分から30分の素振りを続けています。しかし、冬の稚内は氷点下を下回り、路面も常に凍っている状態。そこで思いついたのが、ポットを持って外に出て、お湯で足元の氷を溶かしてからの素振りです。厳しい環境のなか、自分なりに思いついた練習法です。

菅原秀人選手
「稚内は雪も多くて寒いですが、それ以上に強いスイングをして頑丈な体を作りたい。どういう状況でも、しっかり自分のできるスイングをして最大限のパワーを発揮できるように。こういう気候だからこそ、できる練習をやっています」
稚内大谷高校の野球部には、菅原選手を含めて、稚内出身ではない部員が9人。
みんな甲子園を夢みて集まりました。菅原選手の同級生、利尻島出身のチームメートも毎日、夜の素振りを続けています。
髙橋桜太選手
「野球部がなくて人数が少ない中、他の部員も野球をどうしても続けたいと稚内に集まっています。練習はハードですが、菅原を含めた仲間たちがいるおかげで、ここまでやれています。練習を重ねるたびにもっと強くなりたい、甲子園に出たいとか、そんな思いが強くなっています」
野球部を指導する監督の思い
そんな選手たちを見守り、指導してきたのが、札幌市出身の本間敬三監督です。
22年前、東海大四(現東海大札幌)高で甲子園に出場した経験があります。稚内出身だった父親の知人の紹介で稚内に移住。9年前に監督になりました。自身の経験を伝えながら、菅原選手など、部員たちと一緒に甲子園を目指しています。
本間敬三監督
「甲子園は高校球児の最高の舞台です。厳しい環境をいかして雪上トレーニングを続けながら、冬は下半身強化を目指しています。練習の積み重ねが部員たちの社会に出てからの大事な力をつけてくれる時間だと、自信を持って練習をがんばろうって言い続けています」

センバツの出場校が発表された1月27日。稚内大谷高校野球部の本間監督、菅原選手たちの思いは届きませんでした。それでも、21世紀枠の候補校に選ばれたことで、夢の甲子園を目指す気持ちは、さらに強くなったに違いありません。稚内から甲子園へ!夏に、そして、夢に向かって頑張れ!稚内大谷高校野球部!寒さが厳しい、同じ稚内に住んで、地域で取材を続ける記者として、心から、そう思いました。

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