「まちにこんな店があるって知らなかった」「高校生でもまちに関わっていいんだ」――自分たちのまちのことを考え始めている高校生の声です。
1月末に閉店したデパート「藤丸」の再建を担う新会社の社長、帯広や釧路でまちづくりに取り組む人、そして十勝の高校生のみなさんとともに、“まち”の未来をとことん語り合った「道東スペシャル 語ろう これからの私たちの“まち”」。そのトークの模様をたっぷりお届けするウェブ記事の最後は、高校生が主役の「若者編」です。ウェブ限定の番外編も!
(初回放送:3月9日)
▶第1弾「藤丸編」はこちら
▶第2弾「まちづくり編」はこちら
NHKプラスで3月28日(火)午前2時9分まで配信中!
<目次>
▶若い世代と取り組むまちづくり
▶高校生もまちに関われる!求められている!
▶まちのこと 高校生が発信
▶大人も“初心”忘れず一緒に取り組む
▶つながって、より良いまちへ
▶番外編:収録を終えて
若い世代と取り組むまちづくり
赤松アナ:
最後のテーマは「若い世代と取り組むまちづくり」です。
まちなかや商店街について、これからのまちを担う高校生たちのみなさん自身が考え始めています。
高校生の取り組みとは?詳しくはこちら↓
▶“帯広中心街を元気に” 高校生の挑戦

高校生もまちに関われる!求められている!
赤松アナ:
松本さんや森さんたちの活動をご覧いただきました。そもそもコロナ禍でマスクを集めて医療機関に寄付するという活動から始まったそうなんだけど、まちの中を実際に回ってみたり声を聞いてみたりして、意識や考え方に変化ってありました?
高校生団体代表 松本優さん:
今まで、広小路とかって自分たちよりもっと年齢層の高い人たちが行く場所なのかなっていうイメージばかりがあったんですけど、実際こういう活動をして、まち歩きをしてお店の人に話を聞いたり、今まで入ったことのなかったお店に入ってみたりすると、意外と自分たちの年代にも対応できるお店が多かったり、よくよく見たら新しい美容室が広小路にオープンしていたりとか。自分たちも着られるような洋服店や、CDショップだったりとかもあったりして。それは新しい発見になりました。

赤松アナ:
けっこう知らないことが多かったんですね。
高校生団体代表 松本優さん:
はい、知らないことが多くて。なかなか広小路にまず行かないので、そこから発信もなくて、あまり知ることもないというのが、けっこう悪循環としてあったのかなと思います。
赤松アナ:
そういう意味で、そこに人が集まる場所があったら、また捉え方も変わってくるでしょうし。
一緒に活動している森さんはどうでしたか?大人といろんなことを話す中で何か感じたこととかありますか?
高校生団体メンバー 森陽香さん:
高校生でもこんなにまちづくりや中心市街地の活性化に関わっていいんだということを知らなかったというか、関わっていいって思っていなかったので、そこに新しい発見がありました。
古くからの建物を残していかしているお店とかも取材した中であったので、広小路とか帯広市の歴史をふまえながら、新しく活性化するにあたって、高校生の意見を地元の人に伝えて、一緒に何かまちの活性化ができるものを作っていきたいと思いました。

赤松アナ:
店のオーナーさんたちってお話聞いてくれた?伝わる感じしましたか?
高校生団体メンバー 森陽香さん:
自分たちが思っている以上に、高校生の意見を求めてくれていることがわかりました。
赤松アナ:
なるほど。そのあたり坂口さん、高校生や若い世代と何かできそうな感じしませんか?
帯広 ホテル経営 坂口琴美さん:
しますね。未来を背負っていくのは若者ですし、これだけまちに関わろうとしてくれていること自体、大人も気づいてあげたいなと思いました。まずは挨拶からしたいなと思いました。

赤松アナ:
そうか、お互い実は意見があったけど聞かなかったり、聞く感覚もなかったりということがあるのかもしれませんね。
まちのこと 高校生が発信
赤松アナ:
そして「言いたい!」の札があがりましたよ。平田くん、なんでも言っていいですよ。
星槎国際高校 平田雄大さん:
僕らの意見だったり、僕らと一緒に活動していくという面で、こんなのがあったらいいんじゃないかなというのを今思いついて。僕、さっきのVTRを見ていて、帯広の広小路のCD店にあのくらいのCDを売っているというのにびっくりしたんですよ。想像以上に高校生の意見を求めてくれているのはいいんですけど、僕らもそれを知らなかったので、まちをあげて、僕らが帯広の今のお店だったりとかをPRする活動があったりしたら、面白いのではないかと思いました。

赤松アナ:
なるほど。松本さんも、今後やってみたいことを考えているんだよね?
高校生団体代表 松本優さん:
はい、今話があったように、お店の方が高校生の意見を必要としているということも高校生にあまり届いていないし、高校生が広小路商店街や藤丸さんに求めていることもきっと大人の方に届いていない部分が多いと思うので、CAN-PASSという高校生団体がせっかくあるので、団体をあげて、高校生と大人の意見交流とか、つないでいく場をつくれたらいいなと思っています。
あと、こういう広小路とかに学生があまり通らないという部分は、商店街の方々もおっしゃっていたので、SNSを活用して、お店を宣伝したり、お店としてSNSをやっているお店もあったので、そういうところを私たち学生が知ったところからどんどん広めていって、それを見てまた新しい人が知ってという、いい連鎖を高校生としてつなげていけたらいいなと思います。

赤松アナ:
高校生のインフルエンサーとしてつなげていくことができそうですね。
その前段の話で、村松さん、高校生たちの声が実は届いていないというか、ミスマッチのような感覚を覚えたんですが、どうお聞きになりましたか?
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
今しみじみ聞いていたんですが、お互い求めているのにお互い意思疎通がされていないというか、情報が共有されていない。そこに課題があるのかなと感じながら聞いていました。SNSの力も借りたり、まさに今日の番組だったり、いろんなことを通じて、我々がもっと若い人との距離を縮める努力をしなきゃいけないんだなと、今感じていました。
赤松アナ:
リアルにどうやってつなげていくか、思いはみなさんお持ちですからね。
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
高校生のみなさんも我々も思いを持っている。先ほど9歳のお子さんから「老若男女」とありました。年配の方も歩いてほしいですし、やはり若い人たちが往来するとまちが活気づきますので。歩いてみたらこんなにいい店があったのか、それをもっと知らせて、もっと歩いて。お互いがお互いをわかりあい、距離を縮めて、もっといい形でつながっていけばなと思っていました。

大人も“初心”忘れず一緒に取り組む
赤松アナ:
今距離を縮めるというお話がありましたが、佐藤解説委員、そんな先進事例もあるんですよね。
佐藤庸介 解説委員:
こちらの写真ですが、東京の墨田区の商店街、向島橘銀座商店街です。すごくレトロな商店街なんですが、近くの大学と連携して、学生がイベントなんかにかなり関わったりしていて、うまくやっている事例ですね。こういうところもあります。

赤松アナ:
そしてここまで見てきてどうでしょうか、若い世代とどう取り組んでいくかということですが。
佐藤庸介 解説委員:
キーワードは、その商店街の事務局長さんが言っていた言葉、「初心」。どういうことかというと、「初心忘るべからず」。つまり、高校生や関心のある方はたくさんいらっしゃる。だけど、商店街の側に受け入れる心構えがないんじゃないか、初心を持っていますかという問いかけですね。大人の側、商店街の側に、そういう思いを共有できるように変わらなきゃいけないんじゃないかな、そういう思いをキーワードにしました。

赤松アナ:
ここまで若い世代と取り組むまちづくりについて考えてきました。いろんなキーワードや意見交換ができたんじゃないかなと思います。
ここで、番組に寄せられたお便りもご紹介したいと思います。
40代女性・十勝地方
子供達がのびのび遊び、いろんなことを経験できるまちであるといいなと思います。市民による交響楽団、オペラ、バレエ等の芸術も盛んと聞くのでぜひ存続してほしいです。
20代男性・十勝地方
藤丸や広小路のイメージは、お金を持っている人がいくイメージがあります。若い人は近寄りがたいなと思ってます。(あくまでもイメージです)人がいなくなってからも"ここよかったよね"と思ってもらえるようなお店があれば良いなと思う。そうしてもらえると街全体も良くなるのかなと思います。
松本さんどうですか?
高校生団体代表 松本優さん:
藤丸だと百貨店ということもあって、値段が高めのものとかブランドものが多いということで、高校生は行きづらい部分もあるのかなと思うんですが、だからこそ特別な時に行く大切な場所、思い出の場所というイメージが、若い人には特にあるのかなと思います。
つながって、より良いまちへ
赤松アナ:
ここまで、若い世代の取り組みを通じて意見を述べて頂いたんですが、いろんな意見が本当にうまくかみあっていけばいいなと私自身も感じました。
というわけで、あっという間に番組の終盤が近づきまして、最後にみなさんから感想を頂きたいと思うんですが。
坂口さん、今日いろんな意見を聞いてみてどうでしたか?
帯広 ホテル経営 坂口琴美さん:
やっぱりまちにはいろんな年代が集ってほしいので、そこから生まれるもの、また外から来る人も、一生に一度来る観光地ではなく、十勝の日常のすばらしさを知って、何度も来たくなる、暮らしたくなるようなまちであってほしいなと思います。ありがとうございます。

赤松アナ:
そして釧路からの佐藤さん、今日はどうだったでしょうか。
釧路 文具店経営 佐藤公一郎さん:
本当に幅広い年代の方の意見を聞きまして、未来のお客さんという話が最初あったんですけれど、その視点ってすごく大事だなと思って。経済合理性とともに、いかに長いスパンで視点を持っていくか。その視点を各世代で少しずつ合わせていくという作業によって、より良いまちになる可能性も高まるんじゃないかなと思うので。そういう場を今後も設けていかないといけないなと思いました。

赤松アナ:
各世代というキーワードもありましたが、松本さんどうでしたか?今日はいろんな大人のみなさんとお話ししましたけど。
高校生団体代表 松本優さん:
本当に貴重な機会をいただけて、高校生としてすごく嬉しい気持ちなんですけど、実際ここにいる高校生だけじゃなくて、放送を見ている高校生も、自分はこう思うんだよなっていう違う意見もあると思うので、この会で終わりにせず、これからも大人と高校生をつなぐということができていったらいいなと思います。

赤松アナ:
たしかに、大人と若い世代のみなさんをどうつないでいくかというところで、今日いろんなヒントを頂いたんじゃないかなと思いますが、最後に村松さん、今日は本当にお忙しい中、貴重なご意見と受け止めをありがとうございました。どうでしたか、こういった場でお話しできたことは?
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
正直1時間以上の生番組に出るのは躊躇したんですけれど、本当に出て良かったなと思います。とてもいい意見を頂きましたし、これをできるだけ実現したいなと思いました。
まちはやっぱり、市民のみなさんの共有財産だと思います。この共有財産を孫子の世代につないでいくのが、我々の世代の役割だと思います。このまちをより活性化させた形で、いい形で世代間で渡していく、これが我々の役割だと思っていますので、ここに私は新しい藤丸の社長として、尽力してまいりたいと思います。

赤松アナ:
期待しています、これからもよろしくお願いします。
私たちは今後も、道東のこれからのまちについて考えていきたいと思います。今日はみなさんどうもありがとうございました。

番外編:収録を終えて
生放送終了後、出演者のみなさんに感想を聞きました!
釧路 文具店経営 佐藤公一郎さん:
今どきの高校生はすごいなと思いました。彼らに、まちづくりに関わってもらわない手はないと思いました。彼ら自身そんなに商店街や中心市街地に興味があると思わなかったので、逆にそうやっていろいろと関わってくれるのは、誰にとってもいいんじゃないかなと。そうやって、世代間でいろんな話ができたのは非常にいい経験になりました。帯広の人たちと交わることも今までなかったので、道東の人間として、お互いにいいまちをつくっていきたいなと思いました。

帯広 ホテル経営 坂口琴美さん:
すごく気づきになる機会でした。リアルに人と人とのつながりという話はしていたんですけど、この番組自体が私たちをつなげてくれたというのがすごく大きかったなと思います。楽しかったです。

高校生団体代表 松本優さん:
こういう貴重な機会を頂けて本当にありがたいなと思います。高校生の意見を大人に伝えられていたら嬉しいです。ありがとうございました。

高校生団体メンバー 森陽香さん:
藤丸の社長さんや、なかなか普段の生活で交われない大人の人たちと交われて、意見も言えて、取り入れてもらえるかはわからないけれど、架け橋みたいなものができたので、それを使ってもっといいまちづくりができたらなと思いました。

星槎国際高校 石澤春汰さん:
知らなかった話もいっぱい聞けたので、知らなかったことも含めて一緒に考えて、また新しい意見を出して、こういう場があったらまた言っていきたいなと思いました。

星槎国際高校 平田雄大さん:
まず、僕らの声が直接届くことって少ないと思っていて、この場を設けてもらえたのがとても嬉しいというのと、スタジオにすごく一体感があったんですね。僕ら高校生と大人の方々で一体感があったということは、そういうまちづくりができるということだと思うので、これを機に、今後帯広がいい進化を遂げてくれることを願っています。

帯広柏葉高校新聞局 平山陽香さん:
普段なかなか意見を聞けない釧路の方や、東京に行って戻ってこられた方や、藤丸の社長さんのお話も聞けて、本当に有意義な時間になりました。

帯広柏葉高校新聞局 村中迪唯さん:
まちなかに高校生の意見がたくさん取り入れてもらえるような感じの雰囲気があったので、新しいまちなかとか藤丸が、とても楽しみになりました。

佐藤庸介 解説委員:
本当に充実した時間だったんじゃないかと思います。村松さんもかなり踏み込んだ構想について明らかにしていましたし、坂口さんや佐藤さんも、地元愛が言葉ひとつひとつにあふれていたので、この人たちがリードする地域は絶対に明るくなるんじゃないかなと力強く思いました。高校生もそうですね。もし次にやるんだったら、釧路地方や根室地方の地元の人たちの声も聞いてみたいなと思います。

新「藤丸」社長 村松一樹さん:
最初に経済合理性という話をしたんですけど、人を集めてにぎわいをつくるためには、プライスレス的な要素、文化的といえるような要素が必要なんだなと思いました。高校生の勉強スペースは、収益性は低いけれど、高校生が集まるのであればプライスレスな価値がある。その高校生が東京の大学に行きましたとなっても、もしかしたら長い目で見て、あそこで勉強したよね、藤丸で、広小路で…となれば、そこにまた戻りたいとなるかもしれない。そして戻ってきたら、それは長いスパンでの経済合理性なんですよね。短期的にも、そういう高校生が歩くまちだと活気が出るし。プライスレス問題を、どうやって含めていくか、現実化していくか。これでちょっと天を見上げる時間がありました。しっかり検討していきたいと思います。ありがとうございました。

ここまでのトークはこちら↓
▶まちなかのデパート どうする?どうなる?「藤丸編」
▶まちのにぎわい、どうつくる?「まちづくり編」
みなさんから番組にお寄せいただいた声はこちら↓
▶みんなの望む“まち”