若者を惹きつける町、浦幌町。
その魅力を探るべく住田カメラマンが滞在して早くも3週間。

少しずつ、この町の魅力が分かり始めてきたと思っていたら、「浦幌でがんばっているのは若い世代だけじゃないんですよ」とローカルフレンズの古賀さんが言うではありませんか。
ということで、3週目の今週は、「がんばる浦幌の大人」を訪ねました。
滞在19日目。
ローカルフレンズの古賀さんの案内でお邪魔したのは、道の駅のすぐ裏。
なにやら、たくさんの木が積まれていますが、ここは一体?

古賀さん「浦幌木炭です。」
そう、ここは、十勝で伐採されたミズナラを使い、炉端焼き店などに使われる木炭をつくる炭窯。

去年、炭焼き職人になったという、背古円さん。
お邪魔したときは、ちょうど炭窯の修復作業をしていました。
なんと、十数年ぶりの大改修だそう。粘土やコンクリートでつくられた頑丈な窯も、高温の熱にさらされ、日々少しずつ傷んでいきます。すき間ができ熱が漏れてしまわないよう注意しながら作業を進めます。

円さんの実家は3代続く製材会社。以前から交流のあった、町で最後の炭焼き職人が病気にかかったのを知り、去年、受け継ぎたいと名乗り出ました。しかし、円さんは4児の母。とても1人では背負いきれません。

そこで古賀詠風さんはじめ町の若者たちがお手伝い。
そして、さらに。何やら自信に満ちた男性が現れました。

梯子を上る足取りも軽快です。なんでも、この男性。運送業を営む傍ら、炭窯の修復に10回以上も来ているのだとか。その理由を尋ねると。「なんでだろうね。楽しいから。おもしろいでしょ」と笑います

「この炭窯を一緒に残していきたい」と話します。
1人では大変なことでも、みんなで楽しむのが浦幌流。
作業のあとは木炭を使った交流会です。

この日は旬の秋味(鮭)を使った「ちゃんちゃん焼き」。
力仕事でともに汗を流した仲間と「おいしい」と口を揃えます。

8月下旬からはじめた改修工事。これまでに夏休み中の大学生などのべ100人が参加したといいます。
いま、少しずつ木炭文化を、みんなで未来に残す道が見えてきました。

炭窯を継いだ背古円さん
「ずっと守ってきたものをつなげるってすごいやりがいがあることじゃないですか。それに携われるという楽しさがあるかもしれない」

滞在21日目。
今、伝統産業の木炭を若い世代が面白がり、新たな可能性が生まれていると聞き、円さんに連れて行ってもらいました。

多摩美術大学出身、3年前に移住してきた鹿戸麻衣子 (しかと・まいこ)さん。
円さんに誘われたことがきっかけで木炭に出会い、木炭を使ったオブジェを作るように。母の日などの贈り物用に販売したところ、4軒のホテルが置いてくれるなど、反響がありました。

住田カメラマンが滞在中に出会った、もう一つの楽しそうな集まり。
それが、子供たちを農場に招き、収穫した野菜でカレーを作るイベント。

「ここに8種類のジャガイモが植えてあります。」
「外がピンク、中もピンクはノーザンルビー」
「それは雑草」
「浦幌にはいっぱいいろんなジャガイモがあります」
自身の農場に子どもたちを招いた農家の元木一彦さん(62)の案内で、子どもたちは楽しく収穫していきます。

浦幌町の食料自給率は2900%。この町の主要産業です。
そんなこの町の豊かさを知らないまま大人になってほしくないと、元木さんは10年以上、取り組んでいます。

このイベントを企画した農家の元木一彦さん(62)
「地域の良いところを提供するのが地域の者としての務めじゃないかなぁ。それを楽しくやりたい」

お昼は、楽しく収穫した野菜を使ったカレー。みんなでいただきます。

中には、3杯もおかわりしたという少年も。
地元の中学生も「なかなかできない経験にワクワクする」と話します。

こちらの女性、今回はじめて子どもを連れてきました。自身も子どものころ参加して、それが楽しい思い出になっていたことが、今回子どもを連れてきた理由だそう。「浦幌と一緒に育ってもらえたら」と芋ほりに夢中になる子どもを見守ります。

楽しんで次世代にバトンをつなぐ。がんばる浦幌の大人たちがつくる、そんな素敵な空間がたくさんあるこの町を少しうらやましく感じ、浦幌町の魅力をまた一つ見つけたように思えました。
2022年9月22日


