NHK札幌放送局

足寄編2週目 足寄町に生きる開拓者たち

ローカルフレンズ制作班

2021年12月9日(木)午後4時29分 更新

ディレクターが地域に一ヶ月滞在をして地域の宝を探す「ローカルフレンズ滞在記」。12月は全国でも有数の広さを誇る足寄町を舞台に、広大な自然の中に生きる人々を取材しています。2週目はちょっとかわった料理人たちに会いにいきました。

足寄町のホットスポット「はたらくものづくり村」

札幌からやってきて、あらためて実感したことがあります。この足寄町、半端なく広いということです。たとえば、町の両端に位置する日帰り温泉2軒を訪ねようとすると、車で2時間近くかかってしまいます。そんな広い足寄町で、どうやったら素敵な人々に出会えるのか・・・。悩めるフランクCでしたが、ローカルフレンズ儀間さんご夫妻の紹介で夢のような場所「はたらくものづくり村」に出会いました。

足寄町の中心部に位置していて、毎日さまざまな人が利用をしています。
音楽イベントやクリスマスマーケット、先週もご紹介した期間限定レストラン「シカランチ」といった魅力的なイベントが日々行われています。

夢に向かって一歩踏み出した人

ローカルフレンズ儀間さん夫婦の今週のテーマは「移住したてで、夢に向かって一歩踏み出した足寄町民」に会うことです。
「なにもない」と言われた町に、それぞれが魅力を見出して、理想の暮らしを実現していく。
そんな姿をフランクCと地域の人々に知ってもらいたいという思いがありました。

その者、青き着物をまといてコーヒーをそそぐ

ローカルフレンズ儀間さんが特に紹介したい人がいるとのこと。
「何でも自分で作ってしまう人です。ものづくり村でカフェをやっているので、会いに行ってみてはどうでしょう?」
実はわたくし、大のコーヒー好きで自宅では毎朝コーヒーをドリップしたりしてます。そうです。丁寧な生活をしているのです。

わくわく気分で訪ねてみると、きれいな着物を着たバリスタさんが出迎えてくれました。
お名前は座間ゆかりさん。今年7月に札幌から夫の宏太さんと足寄町へ移住してきました。
実は座間さん夫婦は、もともと製薬会社で薬などを開発していた研究員。
カフェをはじめたきっかけも、コーヒーを飲んでいるうちに“研究熱”がどんどん高まっていったからだそうです。

座間ゆかりさん
「夫婦でコーヒーを楽しんでいたのですが、だんだんと市販のコーヒーには満足がいかなくなってしまったのです。コーヒー豆は焙煎から時間が経つと酸味や苦みが出てきてしまいます。自分で焙煎をした方がおいしいコーヒーが飲めると知り、自宅のキッチンからはじめました。」

「生豆」と呼ばれる生のコーヒー豆を買って、自分の手で焙煎する。
自分にとって最高においしいコーヒーを追求するようになりました。

自分で一から作る楽しみ

座間さんはコーヒーだけではなく、カフェで使う食器も自分自身で作ります。
もともとは陶芸に打ち込める場所を探すうちに、地方移住に関心が向かったとのこと。
札幌では陶芸の講師もしていた座間さんは、カフェでも自分が作ったコーヒーとマグでお客さんをもてなします。

座間ゆかりさん
「好きなものを追求していたら、自分自身で作るしかないかなって思いました。試行錯誤を重ねながら、“一体どうなるんだろう”と物を作っていくのはわくわくします。」

“豆も自分で育てたい”夢が後押しした移住

座間さんが足寄町に移住をしてきた大きな理由であり、この先実現したい夢があります。
自分の手でコーヒー豆を育てることです。
「コーヒーって暖かい地域でしか育たないのでは?」と思ったそこのあなた。
大正解です。コーヒー豆は本来、赤道付近の暖かい土地でしか育ちません。
北の国、北海道では気温が低すぎます。
けれども座間さんは諦めません。「気温が低いのなら、暖かくすればいいのよ。」と。
「ええ~。そりゃそうだけど・・・」とわたしも困惑しました。
座間さんにはある秘策がありました。

温泉熱を使って栽培!?

足寄町には温泉があちこちに点在していて、他にも温泉熱を利用したスポーツ施設もあります。座間さんは、この熱を使ってコーヒー豆を栽培したいと話します。
元研究者の座間さんが文系のわたしにもわかりやすく説明してくれました。

農業用のハウスをつくり、温泉熱でハウス内を温めてコーヒー豆を栽培すると言うことです。
冬はマイナス20度まで気温が落ちる足寄町、コーヒー豆の生育には5年以上の月日がかかります。課題は多いですが、座間さんは前向きでした。

出来ない理由をいくつもあげるより、チャレンジする価値がある挑戦ならまずやってみる。

そのノートのいちばん最初に「コーヒー農園をやる」と記されています。夢の実現のために世界中の焙煎豆を試飲し、日本各地の農園をめぐり、生産者のアドバイスを聞いてきました。

駅舎がレストランに変身!?

「なんでも自分の手で作ってしまう。」
パワフルな座間さん夫婦のような人が足寄町には多く住んでいます。
鹿肉を食べながらローカルフレンズ儀間さんと談笑をしていたある夜、「不思議な空間で、ちょっと不思議な人たちが料理をしていますよ。」と儀間さんが不敵に微笑みました。
なんだか気になっちゃうじゃないですか! 絶対に面白い人がそこにいる、そう思いました。

訪れたのは、愛冠駅という名前がついた建物。
「駅?わたし電車がないから札幌から車でやってきたのですけれども!」とツッコミを入れながら扉を開けると素敵な空間が広がっていました。

出迎えてくれたのは、岸友也さんとパートナーの小井圡真弓さん。どこかほっとするような笑顔の持ち主たちです。

昭和21年から平成18年まで、鉄道駅として長らく利用された愛冠駅をレストラン「コビトの台所」に変身させました。

岸さん
「一目惚れでした。このかわいい愛冠の駅舎を見たとき、“ここでお店を始めよう”って。
 建物の外観は残しつつ、内側を自分たちで心地よい空間になるように3ヶ月かけてリフォームしました。」

足寄町にやってくるまでは、岸さんは洋食の料理人として群馬県や京都府で働いていて、真弓さんは海外のカフェでスイーツ作りを習得しました。

足寄町に移住するはずではなかった

町から愛される料理人の2人ですが、足寄町に移住する予定はなかったそうです。
岸さんは、長野のホテルでシェフをするつもりで、真弓さんも海外生活を続ける予定でした。
2人の予定は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、大きく変わります。
岸さんの就業予定だったホテルは当面休業。真弓さんも感染リスクを考え、海外生活を中断して帰国することになりました。

「全くの予想外でした。でも、それでもいいんです。」

不本意であったはずの記憶を振り返りながら、岸さんが一言漏らしました。

岸さん
「コロナが急拡大して、就職予定だった長野県のホテルのオープンがいつになるかわからなくなってしまったんです。けれど、以前から北海道にご縁があったこともあり、足寄で暮らしていこう、と気持ちの踏ん切りがついて、移住を決断しました。」

ともすれば、人生の行く先がわからなくなり、絶望をしてしまうような時だったかもしれません。2人はそんな気分を全く感じさせることなく、笑顔で、足寄町で始まった新生活を語ってくれました。

そんな二人の料理は地元で多くのヘビーリピーターが生まれるほど、町から愛されるようになりました。道産の食材を多く使った2人の料理を求めて、足寄町や十勝各地からお客さんが訪ねてきます。

岸さん
「足寄町は食材がかなり豊富にあるんです。農家さんが自分の身近にいて、お肉やチーズや野菜などいい食材が手に入りやすい。市場で手に入る野菜も無農薬だったりして、新鮮でおいしいんです。」

日暮れの時間になると旧愛冠駅舎を改装した二人のレストランに穏やかな光が窓から入ってきます。
「この夕暮れの時間が好きなんです。少し暗くなった町の中で、レストランの建物からあたたかい光が漏れて浮かび上がるんです。」
優しいまなざしで足寄町への愛情を話してくれました。

今ここに生きる

足寄町で出会う人から共通して感じることがあります。
ローカルフレンズで猟師の儀間さん、今週出会った岸さんや座間さん。

時には大きな壁に直面しながらも新しい人生のスタートを切っていましたが、
誰一人として、後悔を感じさせませんでした。それは強がりというわけではなく、みなさんが“今、ここに生きている”からだと思いました。

過去を悔やまず、未来を憂えず。
今、自分の足下に広がる豊かさをじっくりと愛しているの
だと思います。
そんな生き方が自分も出来ているのかな、とすこし考えました。

番外編:足寄の自然からもらった素材で作るクリスマスリース

自分たちで何でも作ってしまう、足寄町の人々に刺激された私もちょっとだけ創作活動をしてみました。訪れたのは町から車で20分ほど、見晴らしのいい牧場に建つカフェ。

店員の細矢千佳さんが笑顔で迎えてくれました。

足寄の森でひろった素材を使って、町の皆さんとクリスマスリースを作りました。足下で見つける豊かさに少しだけ目を向けられたでしょうか。

前川フランク光
2021年12月9日


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