NHK札幌放送局

授業どう変わる?「GIGAスクール構想」

ほっとニュースweb

2021年5月26日(水)午後2時24分 更新

ことしは「GIGAスクール元年」です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、明治維新以来の「教育革命」とも言われているんです。
授業はどう変わるのか。北海道内の学校の取り組みを紹介します。
(釧路放送局 生田真尋)

「GIGAスクール構想」とは、児童や生徒に1人1台パソコンやタブレット端末を配備するもので、文部科学省が推進しています。全国で配布はほぼ終わり、タブレットを活用した授業が今年度から本格的にスタートしました。本来、2023年度からの実施予定でしたが、コロナ禍でオンライン授業の必要性などが高まったことから、配備が前倒して進められました。

先進校に見る驚きの授業風景

釧路市の北海道教育大学附属釧路義務教育学校を訪ねました。地域のモデル校となるべく他校に先駆けて5年前から「ICT教育」を導入しました。

教室に入ってまず驚いたのは、生徒や教員がタブレット端末を文房具のように当たり前に使いこなしている姿でした。すべての教科で端末を使った授業を行っています。

ここで「ICT教育」という言葉について説明します。ICT=Information and Communication Technologyの略語で「情報通信技術」のことを指します。これを活用するのが「ICT教育」で、これまでの概念を覆すような「教育革命」を起こせると期待されています。

まず見学したのは数学の授業です。生徒たちはノートを取るのではなく、黒板をカメラで「カシャ」と撮影しています。「板書」ならぬ「板写」です。

計算の答えはタッチペンで直接端末に書いていきます。回答はデータで送信し、教室前方のモニターに全員の答えが一覧表示されるシステムになっています(私だったら恥ずかしくて嫌かもしれません)。席を立って動き回らなくても、その場で他の生徒の答えと自分の答えを比較できる点は、ICTのメリットの1つです。
授業の後半、問題集を作る取り組みが行われました。端末に自作の問題を書き込んでは次々と送信する生徒。およそ15分で全員のアイデアを集めた1つの問題集が、すぐに全員にデータで配られました。紙と違って回収したり、コピーしたりしなくても、情報を瞬時に共有できます。これもメリットの1つです。

北海道教育大学附属釧路義務教育学校 赤本純基教諭
「考えの共有が素早く、その瞬間にできる点が今までの授業とは違います。学びの可能性が広がっていると実感しています」

GIGAスクールで広がる可能性

5教科以外の実技の授業でも端末をフル活用していました。美術ではAR(拡張現実)機能を使って独創的な授業が行われていました。自分が描いた絵を端末のカメラで撮影し、ARアプリに取り込むと、絵が現実の空間に浮かび上がるというものです。

エレベーターの中に広がる星空や、机の上でくるくると回る夕暮れの町。端末の角度やシチュエーションを工夫しながら表現力や発想力を養います。

体育のマット運動では前転をする前に、まずはアプリを見ながら体の動かし方について予習します。そして、推進力や遠心力をどう使えば上手に回れるか、友達と一緒に考えを共有していました。論理的に学びながら身体能力を高めます。

この学校では、生徒たちがタブレットを持ちながら自然と輪になり、生き生きとした表情で考えを伝え合う光景が、さまざまな教科で見られました。積極的にコミュニケーションを図るツールになっていると思いました。「未来の授業」を見ているようでワクワクしましたし、「ICT教育」が学びの深化にもつながる可能性を感じました。

“デジタルスキル”習得への模索

こうした最先端の授業が行われているのは、まだ一部の学校に限られています。大半の小中学校では「GIGAスクール構想」は緒に就いたばかりで、手探りのスタートです。教える側の教員のデジタルスキルが課題になっています。

浜中町立霧多布中学校の高木優人教諭は、ICT教育の導入に向けて準備を進めてきました。前出の釧路義務教育学校に研修に出向くなど、デジタルスキルの研さんを積んできました。しかし、自身のスキルや授業計画の策定に不安があると言います。

霧多布中学校 高木優人教諭
「ICT化と言われた時に、私たち教員自身が使い慣れてないため、十分に活用できていない部分が多くあります。利便性が高まる時代の中、生徒たちが情報を手に入れるためには欠かせないツールであり、積極的な利用を図っていきたいと思います」

こうした苦労はほとんどの学校で共通の悩みです。通常業務だけでも多忙な現場の教員にとって、機器の操作に慣れたり、授業計画を作成したりする作業は新たな負担になり、苦手意識から一歩踏み出せない教員もいます。

構想推進へ“教員のサポートを”

こうした教員をサポートするため、文部科学省は機器の操作などを手伝う「GIGAスクールサポーター」や、授業計画の作成などを支援する「ICT支援員」を各学校に配置することにしています。ただ、自治体の財政事情もあり「GIGAスクールサポーター」を配置しているのは道内179自治体のうち70自治体にとどまっています。
北海道教育委員会はICT相談窓口を設置し、専門職員が教員の悩みに答える取り組みを行っています。

北海道教育庁ICT教育推進課 柴田亨課長
「GIGAスクール構想を進める上で大事なのは、教職員のICT活用の経験値を高めることなので教員研修の充実なども図っている。すべての学校でICTを活用し、子どもたち一人一人の学びの質を高めるため、できるところからさまざまなサポートをしていきたい」

《取材後記》

デジタルネイティブ世代の私にとっても、教室の風景が様変わりしていて驚きました。ICTは詰め込み型の教育から、考える力を養う新しい教育への転換点になる可能性を秘めています。緊急事態宣言が出され、オンライン授業の必要性も高まりつつある中で、「GIGAスクール構想」は時代の流れにかなったものだと言えます。
一方で課題も見えました。端末の活用を現場の教員の属人的なスキルに任せるのではなく、サポート体制を充実させ、学校間・地域間で「デジタル教育格差」を生まないような取り組みが必要だと感じました。まずは教育現場の「今」を知ることが大切です。

釧路放送局・生田真尋

2021年5月20日放送

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