亀田貴雄教授が率いる北見工業大学「雪氷科学研究室」では、雪や氷について研究しています。亀田教授や、北見市のカーリングクラブチーム「ロコステラ」のメンバー斉藤茉由美さんら所属メンバーにお話をうかがいました。 (2022年8月放送)

私は「雪氷学」という学問を研究していて、雪や氷に関する身近な現象を扱っています。例えば、「カーリングのストーンはなぜ曲がるのか」という、まだ未解明な現象のメカニズムを明らかにすることです。また「湖が凍る全面結氷という現象」について、どういう気象条件で発生するのか、そして将来的にどのように変化していくのかを研究しています。実は南極観測隊にも選ばれたこともあります。まだ世の中には未解明な現象がたくさんあるぶん、雪氷学の研究の面白さ、やりがいにつながっていますね。
研究の一例を言うと、摩周湖の結氷予測をしたりしています。摩周湖が全面結氷する様子は非常に美しく、貴重な観光資源だと考えています。地域の観光協会や振興公社とも協力しながら、観光客の誘致にもつながればと思っています。
また、学生のみなさんの頑張りも非常に嬉しく思っています。2022年10月に札幌で行われた「雪氷研究大会」で斉藤茉由美さんが発表した「カーリングにおけるスウィーピングの効果の解明」は、ポスター発表部門において優秀発表賞を受賞しました。これまでの研究成果が実った素晴らしい発表だと感じています。ほかにも、学生のみなさんはそれぞれの研究テーマについて一生懸命取り組んでいるので、これからもどんどん研究を進めていってほしいと思っています。

カーリングのストーンはなぜ曲がる?
カーリングは15世紀頃にスコットランドで生まれたスポーツといわれています(オリンピックの公式種目となったのは1998年)。オリンピックで使われている公式のストーンは、スコットランドにあるアルサクレイグ島という小さな島で採掘される花こう岩を加工したものを使用していて、10年に一度しか採掘しないというルールのもと厳正に管理されています。カーリングのストーンは天然の原料を使用しているので、ひとつひとつにちょっとした個体差があり、選手はその「性格」を見極めてプレイするんです。
私はカーリングのストーンが曲がるメカニズムについて研究しています。ストーンの到達距離を延ばすことや曲がり幅を変化させることについてはまだ未解明なことが多いです。注目しているのはスウィーピングによるペブル(※)の形状変化です。ストーンの軌跡を測定して、スウィーピングがどのような影響を及ぼしているのかを検証をしています。
検証には、3つのタイプのスウィーピングを用いました。下の絵のような、①曲げ(曲がりを大きくする)②直進(曲がりを抑え、到達距離を延ばす)③押し(曲がりを変化させず、到達距離を延ばす) の3パターンです。それぞれスウィーピングをした場合と、しない場合の比較をしました。研究成果は2022年10月に札幌で行われた「雪氷研究大会」で発表しています。
カーリングを鑑賞するときには、スウィーピングの種類やストーンの回転方向などにも着目すると、より一層楽しむことができますよ!

(※)ペブルとは丸い小石という意味で、氷面にある小さな突起のこと。実は、カーリング場の氷面には無数のペブルがあり、カーリングのストーンが滑るのに重要な役割を果たしています。ペブルは、専用のじょうろを上に向けてお湯をまき、氷面で凍らせることにより人工的に作り出しています。ペブルを作る人は「アイスメーカー」と呼ばれています。各リンクには1人以上のアイスメーカーがいます。

写真:樹脂でかたどったペブル

私は現在、北見工業大学地球環境工学科環境防災工学コースの2年生として、環境関連と防災関連の講義を受けています。この文章を書いている2月中旬には定期試験を受験しています。取材していただいた時には、伊達市大滝地区の百畳敷洞窟で採取した氷筍(ひょうじゅん)の結晶や洞窟内の気象データから氷筍の形成過程に関する研究をしていました。ただし、その後、ロケットや人工衛星などに興味が広がっており、将来を模索しています。

つるつる路面の研究と釧路の春採湖の結氷の気候学的研究
私は兵庫県出身なので、元々は雪になじみがありませんでした。北見工業大学に進学して北見市に住むようになってから、凍結した路面を歩いていたときに転倒してけがをしたという話をよく耳にします。このようなことは地元の兵庫県南部では起きないことだったので、雪国特有の日常的な危険として気になりました。転倒によって大きなけがをしたという事例もあります。「事前に注意喚起ができて、事故を未然に防止することができたらいいな」と思い、つるつる路面による転倒事故の研究をするようになりました。また、湖の結氷現象から気候変動の影響を評価する研究もしています。
卒業論文では湖の結氷現象を扱うことにしました。研究対象は釧路市に位置する春採湖です。ここでは1985年から釧路市立博物館の学芸員の方々が毎年の全面結氷日と全面解氷日の記録を残しています。現在、この貴重な気候データを活用して卒業論文をまとめています。今後、得られた成果を学会で発表して、科学論文としてまとめることができればいいと思っています。
【編集後記】
北海道に住んでいれば、日常生活とは切っても切り離せない雪や氷の現象。「雪氷学」では、学問として科学的にアプローチをすることで、未解明の現象などを明らかにしていきます。私たち北海道民は日々の生活や観光など、知らず知らずのうちにこうした研究の恩恵にあずかっている部分があるかもしれません。学生のみなさんが研究に没頭している姿も素晴らしかったです。これからも、学生生活や卒業後の進路が充実したものになることを祈っています。
今回のご縁にあらためて感謝申し上げます。撮影に協力していただき本当にありがとうございました。
NHK旭川放送局:湊 英祐
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