「銀の滴降る降るまわりに 金の滴降る降るまわりに」という美しいフレーズで始まる「アイヌ神謡集」。才能を惜しまれながらわずか19歳で世を去った知里幸恵さんが、アイヌ民族の間で謡い継がれてきた「カムイユカㇻ(神謡)」の中から13編を選び平易な日本語訳を付して編んだものです。
番組では、アイヌ文化研究者である中川裕さんを指南役に招き、「アイヌ神謡集」に新たな光を当てながら解説。知里幸恵没後100年の節目に、知られざる豊かなアイヌの世界観を明らかにしていきます。
知里幸恵“アイヌ神謡集” 第一回は9月5日(月)午後10:25 ~[Eテレ]

誰もが一度は読みたいと思いながら、なかなか手に取ることができない古今東西の「名著」を25分×4回で読み解く番組「100分de名著」
9月は、知里幸恵「アイヌ神謡集」がテーマです。
指南役:中川裕(千葉大学名誉教授)…言語学者。著書に「アイヌの物語世界」「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』 」など。
朗読::木原仁美(知里幸恵 銀のしずく記念館館長)
語り:宇梶 剛士(俳優)
知里幸恵が命がけで遺した作品
アイヌ民族の一人として生まれ、幼い頃から数々の差別や偏見を経験してきた知里幸恵。
自らのアイデンティティに悩みながらも、祖母や叔母から聞き覚えた数々の物語からアイヌ文化の豊かさ、奥深さを学び、誇りを持つように。
1918年、15歳の時に語学者・金田一京助との出会いが幸恵の運命を変えます。
アイヌ文化・言語の調査で北海道を訪れていた金田一は、幸恵の才能を見出し、「カムイユカㇻ」を記録し本として出版することを薦めたのです。
心臓の弱さを抱えながら執筆・推敲を重ねる幸恵。
1922年。ついに完成しますが、校正をし終えたその日の夜に急逝します。
「アイヌ神謡集」は知里幸恵が命がけで遺した作品なのです。

「アイヌ神謡集」は、アイヌ文化の豊かな世界観を感じ取らせてくれます。
自然を含むあらゆる存在が相互に支え合い豊かさを生み出していることの素晴らしさ、言葉を交わすことでそれぞれの役割を自覚し尊重し合うことの大切さ、互いに喜びや美しさを共有することのかけがえなさ……
神謡をコミュニティの中で謡い、聞くという行為に思いを巡らせると、今、学び直すべき生き方のヒントを見つけることができるのではないでしょうか。
第1回のテーマは「アイヌの世界観」
「アイヌ神謡集」を読み解くと浮かびあがってくるアイヌ文化の豊かさ、奥深さ。
例えば、神謡はすべて「カムイ」視点から描かれています。
「神」と訳される「カムイ」は、アイヌにとって動物、植物、鉱物など自然界のほぼすべてのものを指します。人間が作った道具や衣服、住まいなどもまた「カムイ」。
「カムイ」は超越的な存在ではなく、人間と全く対等にやりとりします。
あらゆる存在がつながり、支え合い、時に罰し合う有機的な世界観がアイヌの豊かな文化を支えているのです。
第1回では、「沼貝」「キツネ」などの神謡を読み解き、あらゆる存在と共生するアイヌの豊かな世界観を明らかにします。
100分de名著 毎週月曜日 午後10:25~[Eテレ]
知里幸恵「アイヌ神謡集
9月5日(月) 第1回 アイヌの世界観
9月12日(月)第2回 「語られる物語」としての神謡
9月19日(月)第3回 銀の滴降る降るまわりに
9月26日(月)第4回 知里幸恵の想い
お時間のある方は、作品自体もぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
放送をより楽しめるかもしれませんよ。