外出は仕事と最低限の買い物だけ。人一倍感染対策に気をつかっていたはずの女性は、1月18日、新型コロナウイルスの陽性判定を受けました。「一体どこから」「家族にうつしていないだろうか」「職場は大丈夫か」。不安だらけの状況について語ってくれました。

函館市に住む40代の女性は夫と小学生、保育園児の子どもの4人で暮らしています。女性が体調の異変に気がついたのは1月17日。最初はのどの痛みと微熱程度だったそうです。
「先月もちょっと微熱があったので、また風邪をひいたのかなという風に思ってました」
「最初は風邪だと・・・」
女性は仕事上、高齢者と関わることが多いため感染対策には細心の注意を払ってきました。ワクチンは2回接種済み。マスクの着用などの基本を守ったうえで、自宅と職場、それにスーパーの間を行き来するだけの生活を続けていました。
夜にかけて体温はどんどんあがっていき、40度の高熱と今までに経験したことのないほどのけん怠感を感じたといいますが、それでも新型コロナウイルスではないと考えていました。周囲に感染源の心当たりはなく、感染対策も徹底していたためです。
しかし、翌日検査を受けると結果は陽性。新型コロナウイルスに感染していたのです。
<考えすぎてパニックに>
保健所から電話で陽性判定の知らせを受けた女性は軽いパニック状態だったと振り返ります。自分の症状以上に、自分からほかの人にうつしてしまった時のことを考えて不安になってしまったそうです。
「自分だけじゃなくて、子どもたちにうつってしまったら、学校も保育園も休みになってしまうんじゃないかと思いました。私自身も働いているので、働く親にとってそういう施設がなくてはならないものだと分かっています。自分が原因で多くのひとに迷惑をかけてしまうのではないかと思うと、変な責任を感じてしまって、申し訳ない気持ちでした」
新型コロナウイルスに感染する可能性はすべての人にあります。感染してしまった人には本来なんの責任もありません。しかし、実際に感染してしまった人にとっては「周りに迷惑をかけてしまうのではないか」という精神的な負担も重くのしかかっています。
<自宅療養の限界>

函館市内には軽症や無症状の感染者を受け入れる宿泊療養施設が開設されていますが、市内ではこの頃から感染者が急激に増加したためすぐに施設に入ることができず、保健所からは自宅待機するよう告げられました。
保健所からは自宅療養の際の注意点についてアドバイスがありましたが、自宅での隔離には限界があったと感じたといいます。
「夫とは『LINE』でやりとりして、トイレは使うたびに消毒したり、お風呂場でも布のタオルをやめて使い捨てのペーパータオルを使うようにしました。でも、同じ場所を使わなくちゃいけないというのは変わりません」
また、小さい子どもを持つ親ならではの悩みもあったといいます。子どもたちは母親に甘えたい盛りとあって、女性を隔離していた部屋に入ってきてしまったというのです。
「子どもたちにも私の部屋には入らないように伝えていましたが、中に入ってきてしまうことはありました。なんとなく私の調子が悪くて離れているというのは分かっていたようで、『具合よくなったの?』って聞いてくれていましたね。『入っちゃダメだよ』とは言うんですけど、すごく悲しそうな顔をするので、なかなか難しかったです」
女性は夫にとっても負担が大きかったのではないかと振り返ります。家から出られないストレスの中で、ふだんは女性と分担していた家事もすべて1人でこなし、子ども2人の世話もしなければなりませんでした。仕事に行くこともできなくなり、日常が大きく変わってしまったといいます。
その後、女性は22日に函館市内の宿泊療養施設に入所することができました。1日3回の食事を受け取りに行く時以外は部屋の外に出られない生活ですが、自宅療養に比べて安心できると感じたということです。
「ホテルの同じ部屋でなにもせず過ごすのは大変ですが、トイレやお風呂はマイペースで使えるのでありがたいです。家族にうつしてしまうリスクを考えても、ホテルで隔離させてもらえてよかったなと思います」
<コロナはひと事じゃない>
そして、発症した17日から10日間がたった27日、女性は無事に隔離期間を終えることができました。幸い、家族や職場に新たな感染者は確認されなかったということです。
しかし、女性は改めて新型コロナウイルスの感染力の高さを警戒しています。
「ここまで気をつけていたのにまさか自分がかかるなんてと思いましたが、それだけあちこちに無症状の方がいるということですよね。私自身ももしかしたら人にうつしてしまったのかもしれないと思うと本当に怖いなと思います。「コロナはひと事じゃない」のひと言です。1回かかったらもうかからないというわけじゃないですし、対策はこれからも続けていかなくてはいけないと思っています」
(2022年1月28日放送)
道南地域のニュースが満載!
#道南WEB取材班 に戻る
NHK函館放送局トップ に戻る