今年5月北見市常呂町で行われたカーリングの日本選手権。男子では、札幌国際大学が過去最高の準優勝を果たしました。4年後の冬季オリンピック出場を最大の目標に掲げるチームは、8月から試合が始まる新たなシーズンに向け始動しています。日本選手権で見つかった課題に向き合いながら、さらなる飛躍を目指す選手たちを取材しました。(札幌局 櫻澤健太)
躍動した日本選手権
札幌国際大学のカーリングチームは全員が学生で、選手たちの平均年齢は22歳です。今年5月の日本選手権では、多彩な戦術や正確なショットを武器に予選では、4連覇を目指していたコンサドーレや去年準優勝の常呂ジュニアから勝利をあげ、初めての決勝に進みました。決勝では、2018年のピョンチャンオリンピックに出場した山口剛史選手が率いるSC軽井沢クラブに敗れたものの過去最高の準優勝を果たしました。チームを引っ張るキャプテンでリードの新野和志選手は、日本選手権で手応えを感じたと振り返ります。

新野和志 主将
自分たちはオリンピックが目標だけど、本当にそれをかなえることができるのかというところで、今回は2位という結果で自分たちがしっかり戦えるチームだと自覚できた。とてもポジティブでいい収穫だった
課題は体力強化
一方で課題として見つかったのが、連戦を戦い抜く体力が不足していたことです。日本選手権では、決勝まで勝ち進むと1週間で10試合以上をこなすハードな日程です。大会を通じて、疲労もたまってくる決勝戦では勝負どころでミスも出ました。一方で、体格や体力で勝る相手は試合を通じて高いパフォーマンスを続け、安定した試合運びを見せました。
新野和志 主将
やっぱり、SC軽井沢クラブと戦ってフィジカル面がとても強い選手が多くて、体を見ても一目瞭然だと感じた。今シーズンはフィジカルの面で肉体を改良して、よりクオリティーの高い、ハイパフォーマンスを試合や大会を通じて出すことを目標にやっている
元球児のトレーナーが加入

課題の体力強化に欠かせない存在が今年6月からチームに加わった工藤大輝さんです。トレーナーの資格を持つ工藤さんはカーリングの経験はなく、小学生のころから野球一筋でした。工藤さんは新野選手と同じゼミに所属したことをきっかけに選手たちの力になりたいとトレーナーを買って出ました。
工藤大輝 さん
もともとカーリング自体に興味もなかったというか知らなかったのが本当のところです。でも、カーリングをやっている選手がいるというのを知って、世界を目指すような選手だったのも知ったので、そういった高いレベルの選手と一緒に高みを目指していきたい

工藤さんが取り入れたのが、データを用いた最新のトレーニングです。専用のセンサーをバーベルに取り付けて、持ち上げる時のスピードを計測します。トレーニングの効果が最も発揮される速さを選手たちに伝え、アドバイスを送ります。
新野和志 主将
アバウトではなくて数値化して選手にフィードバックしてくれることで
選手も、より目標を明確に捉えることができる。トレーニングの質が上がっていると思う
工藤大輝 さん
大会でも負けないような体作りというのをことし1年、2年、3年、4年後に向けてどんどんレベルアップした形で作っていければいいかな
トレーニングの成果は氷の上でも
7月から氷の上でのトレーニングを再開させた選手たちはストーンを投げ続けても、スイープの強さやストーンを投げるときの体制が安定するなどトレーニングの成果を感じていました。
セカンド 荻原功暉 選手
ちょっと前だったら後半でだいぶ疲れていたけど、トレーニングを積み重ねていくうちにだんだん、後半になってもいけるなという感覚は感じている
チームの司令塔、スキップの佐藤剣仁選手は、体力が強化されることで、戦術の幅も広がっていくと期待しています。
スキップ 佐藤剣仁 選手
フィジカル面が増してくれば、もう少しきわどいコースを選べたり、スイープでストーンの伸び具合だけじゃなくて、方向も変えていける。スキッピングの面でも余裕が出てきたり、トレーニングをそんなにしていないチームとは違う作戦も取れるので、作戦面とか試合全体が楽になる
目標はオリンピック出場

進化を続けるチームが目指すのはオリンピックの舞台です。
新野和志 主将
カーリングを一番楽しめる場所は“オリンピックだね”って話はできているので、そこは夢で、“そこにいきたいね”じゃなくて、そこにいくためには今シーズンどうしようかとか、しっかり現実のこととして捉えて進んでいる。世界にはいち早く出て、活躍する選手になりたい