NHK札幌放送局

網走湖畔の重油漏出問題  不安抱える現場は

オホーツクチャンネル

2022年12月5日(月)午後1時55分 更新

シジミやワカサギなどの有数の漁場になっているオホーツク海側の網走湖のほとりに建つホテルでことし3月、大量の重油が地中に漏れ出したことが明らかになりました。地元では深刻な漁業被害のおそれがあると抜本的な対策を求めていますが、8か月がたった今も 目に見えた進展はありません。
不安を抱えたまま冬を迎える現場を取材しました。
(北見放送局 新島俊輝) 

網走湖の下流の網走川では、オホーツク海からさかのぼってきたサケの捕獲作業が行われています。卵をふ化して春に放流する稚魚を育てるための欠かせない仕事です。ことしは川に戻ってくるサケが例年より多くなっていますが、網走湖で起きた異変が漁業関係者を悩ませています。

網走湖畔に建つ「網走観光ホテル」で重油漏れが発覚したのはことし3月のことでした。匿名の通報を受けて網走市の職員などが確認したところ、落雪でボイラー室の配管に亀裂が入り、重油が地中に漏れ出していました。漏出量はおよそ8000リットルと推定されています。
ホテル側は汚染された土壌の一部、およそ23トンを除去しましたが、建物の取り壊しなどが必要になるボイラー室の地下の部分には手をつけることができませんでした。

網走市や地元の漁協などは対策協議会を設置し、周辺の湖や川に流出した場合には深刻な漁業被害のおそれがあるとして、ホテル側に汚染された土壌すべてを撤去するよう求めてきました。ホテルから300メートル以内ではシジミやワカサギの漁が行われているほか、近くにサケ・マスのふ化場があり、協議会では流出した場合の漁業被害額は1年間で65億円、長期的には227億円に上ると試算しています。
一方、ホテル側は調査の結果、現場は地下水まで浸透しにくい地層になっていると主張し、詳しい調査を求める協議会との話し合いは平行線をたどりました。

ホテル運営会社社長の現地訪問時の抗議活動(8月)

10月からは道や地質の専門家などが加わった会議が設けられました。ホテル側は現場周辺の3地点でボーリング調査を行って地下水の状況を把握する方針を示しましたが、具体的なスケジュールはまだ決まっておらず、抜本的な対策は発覚から8か月がたった今も進展していません。


ふ化場は「1日も早く解決を」

この状況に不安を募らせているのが来春に放流するサケ・マスのふ化事業を行う関係者です。網走湖の下流の網走川で捕獲したサケは現在、内陸の津別町で採卵や受精の作業を行っていて、ふ化した稚魚は網走湖畔の施設に移して大きく育てます。

しかし、その施設は重油漏れが起きたホテルの隣に建っています。現場のボイラー室からの距離は100メートルほどしかありません。

施設では来年3月ごろから300万匹の稚魚を運び込んで飼育を始める予定です。その際に必要になるのが大量の新鮮な水で、近くの白羽川と網走湖から合わせて毎分3600リットルの水を取り込んでいます。
漏れ出した重油が万が一、地下水にまで到達して流出すると、水が汚染されて使えなくなり、稚魚の飼育が行き詰まってしまうことになります。

さらに網走湖はオホーツク管内の重要な放流場所で、来春にはほかのふ化場で育てた稚魚も含めて3100万匹を放流する計画です。重油の流出で放流できなくなると、長期的に甚大な影響が及ぶと言います。

北見管内さけ・ます増殖事業協会  石塚治専務理事
「事故が発生した時点で応急措置として油の拡散や浸透の状況を調べた上で、回収や土砂の撤去をしてくれていれば、こんなに心配する事態は起こらなかった。放流ができない、放流した稚魚が油で壊滅状態になることを想定すると、その稚魚が帰ってくる4年後に影響が及ぶ。沿岸で漁業を営んでいる人にも影響が想定されるし、川に戻ってきた際に捕獲して卵をとって稚魚を育てるというふ化事業のサイクルも崩れる。いったん崩れると、その回復にはかなり長い年月を要することになる」


難航の背景に“法律の壁”

深刻な懸念が示されているのに、抜本的な対策はなぜ進まないのでしょうか。背景にあるのは“法律の壁”です。
水質汚濁防止法では湖や川に油が流出し、健康被害などのおそれがある場合に事業者の措置を義務づけています。しかし、今回のように流出が確認されていない場合は、危険性を客観的に判断できる材料がなければ措置を強制できず、ホテル側に自主的な対応を行うよう働きかけるにとどまっている状況です。
出口が見えない現状に地元の漁協幹部はもどかしさを募らせています。

網走漁協  新谷哲也組合長
「重油が出るか出ないか、今の段階では誰にも分からないが、少なくとも8000リットルが漏出している。危機感は常にあるし、夜も眠れない漁業者がたくさんいるというのも聞いている。重油が流出すると大きな影響が予想されるので、被害が出る前に抜本的な対策を打ってもらいたいとお願いしている。なんとかその声が届いてもらえればと思う」

地元では対策が進まないまま来春になると、雪どけ水で重油が流出する危険性がさらに高まると懸念しています。豊かな漁場がある網走湖の安全性が保たれ、関係者の不安が解消されるように、今後も事態の推移を取材します。

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