NHK札幌放送局

ヒグマなどの野生動物への餌付け禁止 法改正へ

オホーツクチャンネル

2021年3月4日(木)午後4時03分 更新

国立公園や国定公園の観光資源としての価値を高めようと、政府は3月2日に自然公園法の改正案を閣議決定しました。背景には、野生動物が餌付けや撮影などのために身勝手に人が近づくことによって本来の姿が失われている問題があります。  (北見放送局 記者 五十嵐菜希)

違反者には30万円以下の罰金

今回閣議決定された、自然公園法の改正案では、国立公園や国定公園の中で特に重要な「特別地域」などの範囲に限って、ヒグマやキツネ、それにサルなどのほ乳類、ハクチョウやオオワシなど鳥類への餌付けを規制します。やめるよう指示しても従わない場合は30万円以下の罰金を科すとしています。

小泉進次郎環境相
「保護も大事なのでクマの餌付けに対する厳罰化こういったことも強化をして保護と利活用両面で強化をする法律になっています」

政府は、この改正案をいまの通常国会に提出し、成立を目指す方針です。成立すれば、早ければ来年4月の法律の施行を見込んでいます。

ヒグマ目撃軒数増の知床 改正案を歓迎

知床国立公園では、観光客がヒグマを餌付けしたり、人に慣れてしまったヒグマが人里に降りて、駆除されたりすることが相次ぎ大きな問題になっていて、罰則の導入のきっかけにもなっています。

2012年には観光客がヒグマに車から餌を投げ与える問題行為を行っていた映像が撮影されました。また、ヒグマを見たり撮影したりするために車を止めて近づいたりして起きる「ヒグマ渋滞」が頻発しています。知床でヒグマの保全や管理を行っている知床財団の石名坂豪さんはこうした行為が生態をゆがめさせるとしています。

ヒグマの保全や管理をする知床財団 
石名坂 豪 保護管理部長
「ヒグマの場合は更に餌付けをされてしまったことでもう1回エサをもらおうと、ある意味奪い取ろうとして車や人に接近することになります。餌付けをされることで行動がゆがめられた野生動物を見ることが果たして国立公園の本来あるべき姿なのか」

知床国立公園では2013年から餌付けをやめるよう呼びかける「STOP!エサやりキャンペーン」を実施したり、2020年から野生動物にむやみに近づかないよう呼びかける「知床ディスタンスキャンペーン」などを実施し観光客のモラルに訴える形で啓発を続けてきました。

しかし、ヒグマの目撃件数は年々増加を続け、2018年には公園内の目撃軒数は年間1300件を超えました。2020年4月から10月にかけては撮影のために近づいたり、観光客が菓子を与えたりする「危険事例」が16件報告されています。

知床財団の石名坂さんは野生動物への餌付けが法律で明確に禁止される今回の法改正は大きな前進だと受け止めています。

知床財団 石名坂 豪 保護管理部長
「基本的には大歓迎です、北海道に限らず全国一律に国立公園内で野生鳥獣に餌を与えることが禁止されたということで周知するインパクトとしては非常に大きい、不幸なキツネやクマを減らすことに少しでも手助けしていただければと期待しています」

実効性をどのように保つのか重要

野生動物への餌付けに罰則を盛り込んだ今回の法改正ですが、法律の実効性を保つためには、人員や費用をどのように確保していくのかが重要になります。餌付けに罰則が科せられるのは国立・国定公園内で特に重要な「特別地域」などの範囲です。環境省や都道府県の職員、それに公園を管理する団体が巡回して違反者に指導することになります。知床ではどのような態勢で実施するか、今後、具体的な検討が始まる見通しです。

本来の自然を楽しめる場所へ

また、今回の法改正の影響は知床のみではありません。北海道内には国立公園や国定公園があわせて11か所あり、観光地としても人気です。法改正を検討する委員会のメンバ-だった北海道大学の愛甲哲也准教授は、観光地として魅力を高めるためには罰則だけではなく、観光客を案内できるガイドを育成し、ありのままの自然を楽しむ観光を提供する必要があるとしています。

北海道大学 愛甲 哲也 准教授
「餌付けをするのは理由があって、一か所に集めると、写真も撮りやすく見せやすいということがあっていろんな場所で実は餌付けが行われたりしたわけです。禁止された、じゃあ、どうするとなった時に大事なのはそれを伝えてあげる人です。どういう環境のなかでどういうエサをとって動物が生活しているのかということをプロフェッショナルのガイドのスキルが問われて、そういうことがきちんと出来る観光地というのが国際的にも評価される」

適切な距離が自然を守る

野生動物との境界を保つことはそこにしかない魅力的な自然の維持や野生動物を生かすことにもつながります。多様な生態系は北海道の観光資産であり宝物です。法改正をきっかけに、私たちは野生動物とどのようにつきあっていくのか、改めて見つめ直す必要があると思います。

2021年3月2日

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