NHK札幌放送局

接待を伴う飲食店 現場で何が?

十勝チャンネル

2020年12月4日(金)午後3時05分 更新

11月に十勝地方で初となるクラスターが、帯広市の接待を伴う飲食店で発生しました。クラスターが発生した現場で何が起き、なぜ感染は広がったのか。店の関係者がNHKの取材に応じ、当時の状況や再発防止に向けた対策を語りました。

約3週間ぶりの再開

12月1日、帯広市の繁華街にある「エスコートラウンジ・グランデ」。開店前、この店を経営する萱場誠一社長が従業員たちの前に立ちました。

萱場誠一社長
「きょうとりあえず再開にたどりつけたんですが、きょう来てくれるお客様に安心して飲める場所を提供しなくてはいけません。いろんなことがありますが、とにかく本当に楽しいやすらぎの場所があるように一生懸命もてなして元気よく営業していきたいと思います。よろしくお願いします」

店はこの夜、およそ3週間ぶりの再開となりました。クラスターが発生してから、休業を余儀なくされていたためです。

萱場誠一社長
「再開できたことには喜びを感じています。クラスターがこの店から出たというのは紛れもない事実なので、やっぱり信頼回復に努めていきたいなというのが一番の思いです」

発生した異変

店で発生したクラスター。異変が起きたのは11月上旬のことでした。従業員の女性から「味覚がない」という報告を受けたのです。

店が保健所に相談し、PCR検査を受けたところ、新型コロナウイルスへの感染が確認されました。この結果を受けて、店は翌日から休業することを決めました。この時点では、濃厚接触者となったほとんどの従業員に症状はなかったといいます。しかし、この日以降、濃厚接触者の従業員への感染が確認されたという報告が萱場社長のもとに次々と入ります。

萱場誠一社長
「驚きました。検温と消毒は徹底させてたので、まさかうちの店から最初にクラスターが出るなんてことは思ってもいなかったです。陽性になると入院ということになるので、従業員の健康がどうなってしまうのか心配でした」

従業員の感染者は14人、利用客2人にも感染は広がり、店に関連する感染者は16人にのぼりました。

店名公表を決断

十勝地方で初めて発生したクラスター。2割ほどの客と連絡がとれず、店は大きな決断を迫られます。
クラスターの発生を知らせるため店名の公表に踏み切ったのです。

萱場誠一社長
「社会的責任から言っても公表しなきゃならないなと思いました。十勝のいろいろな町村の方も飲みに来てもらっているので、公表しないとクラスターどころか十勝全体に広がってしまうと思い、真っ先に保健所の方に『店名を公表してください』ってお伝えしたんです」

接待を伴う飲食店としては道内で初めての店名の公表。風評被害などへの不安はなかったのでしょうか。

萱場誠一社長
「無症状の従業員も多かったので、『まずいな』という考えが先に立ちました。ニュースなどでわかれば、当店を訪れたお客様が『自分も店に行ったから検査しなきゃ』っていうふうに考えてくれると思いました」

なぜクラスターに?

なぜ、クラスターは発生したのか。店では従業員と客の検温や消毒、それに換気などの対策を行っていました。
しかし、接客を行っていた従業員はマスクを着用していなかったといいます。

ママ 水沢ゆうきさん
「顔の表情がわかりづらいことや、どうしても接待を伴う飲食店なのでドリンクをお客様からいただくんですけど、飲むときに不便なのかなと思っていました」

当時、店内ではどのような接客が行われていたのか再現してもらいました。

客は背もたれのあるいすに座り、女性従業員はすぐ脇に置いた背もたれのない補助いすに座ってお酒の提供や客との会話を行っていました。客と従業員との距離は50~60センチほど。店ではマスクをせずに、近い距離で接客を続けたことが感染が広がる一因になったと感じています。

ママ 水沢ゆうきさん
「対策はできる範囲でやっていたんですけど、やはりマスクも従業員が全員着用して、距離をとるとか一段と気をつけていかなきゃならないなと改めて思いました」

感染防止策を徹底

最初の感染確認から1か月がたち、感染した従業員は全員回復し、健康観察も終わりました。店では再び感染が起きないように対策を徹底しながらの営業が始まっています。
すべての従業員がマスクを着用することを徹底し、新たに仕切り板も設置しました。最大60席あった店内の座席も密を避けるため、半数近くの席を間引きしました。
また、ドリンクを提供する際に共用していたマドラーも、客ごとに使い分けることにしました。

さらに感染者が発生した場合に連絡がとれるよう、店を訪れた客には原則、住所や電話番号などの連絡先を書いてもらう取り組みを始めました。

感染拡大が続く中、営業再開後に店を訪れる客は大幅に減っています。
社長の萱場さんは収束を信じて、何とかこの苦境を乗り越えていきたいと考えています。

萱場誠一社長
「私たちはお客様と一緒に話して、お客様の疲れをいやす大切な仕事をしてきたという自負があります。その思いを胸にこれからも営業を続け、お客様に楽しんでいただきたいなと思っています」

2020年12月2日放送

【取材した三藤紫乃記者は】
取材したお店「エスコートラウンジ・グランデ」では、「自分たちの経験を多くの人たちに伝えることで感染拡大防止につなげることができるのであれば」と、クラスターが発生する前の状況も包み隠さず話していただきました。
営業再開後も、店では厳しい状況が続いています。私が取材した日も、店を訪れる客は数える程度でした。店の関係者は「再開できても、どれだけ続けることができるか、あとは店の体力次第かもしれない」と厳しい実情を漏らしていました。一方で、店にはクラスターの発生を公表してから、なじみの客などから温かい応援の言葉がたくさん届いていて、勇気づけられているということです。
札幌市内では接待を伴う飲食店に休業要請が出されるなど、業界全体としても厳しい状況が続いています。一人ひとりが感染防止対策を徹底し、店に以前の姿が早く戻ってくることを願っています。

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