NHK札幌放送局

液状化ハザードマップの最前線

ほっとニュース北海道

2021年9月8日(水)午後0時26分 更新

地震、津波、土砂災害、洪水。近年、いろいろな災害についてハザードマップの整備が進められています。一方で、地震の際に、家が傾くなどの被害が起きる“液状化”については、実は多くの自治体でハザードマップが整備されていません。整備している自治体としていない自治体では、なにが大きく異なるのか取材しました。
(NHK札幌放送局 臼杵良)

胆振東部地震と液状化被害
3年前の胆振東部地震では、震源地から50キロ以上離れた札幌市でも919棟の住宅が半壊以上の被害を受けました。なかでも、札幌市清田区の里塚地区では、大規模な液状化被害が発生。住宅106棟が半壊以上の被害となったほか、道路が陥没するなどの深刻な被害が出ました。
里塚地区では発災から3年がたった、2021年9月3日にすべての復旧工事が完了しました。この3年間について、住民グループの代表は長い道のりだったと話します。

住民グループ代表 盛田久夫さん
「経過したのは3年ですけれど、3年以上のいろんな思いがあったし、先が見えない中でいろんなことをやってきていましたので、ようやくここまで来たなという思いでいっぱいです」

液状化マップ作成のカギは“地盤データの拡充”
3年前の地震で液状化被害が起きた札幌市、いま液状化リスクの見直し作業が進められています。市は2021年1月、市内で最大震度7の地震が起きた場合、大規模な液状化により最大でおよそ480棟が全壊するほか、半壊は1万7800棟近くにのぼるという想定を示しました。市では住民に液状化のリスクを正しく知ってもらうため、10年以上前に作った液状化ハザードマップの改訂作業を進めています。

改訂にあたって必要なのが正確な地盤の情報です。
8月下旬、公共事業の一環として札幌市南区にある大規模盛土造成地で地盤を調べるボーリング調査が行われました。

この日の調査は液状化マップのためのものではありませんでしたが、こうした公共事業の工事の際に行うボーリング調査のデータを利用することで、市が作成する新しいハザードマップでは、以前に作成したものより約6000地点分多い、およそ1万8000地点分のデータが活用される予定です。

札幌市危機管理対策課 後藤昌範係長
「地盤データを蓄積すれば、より詳細に液状化危険度のマップを示せることになる。命を守りつつ個人の財産を守るという意味で、市民にとって有効な情報を周知できると考えています」

進まぬ液状化マップの作成
しかし、実際に液状化のハザードマップの作成が進んでいる自治体は多くありません。道が把握している液状化マップを作成している自治体はわずか10でした。さらに、この10の自治体について取材をしたところ、2つの自治体は「データの信用性が低い」などの理由で公開を取りやめていて、現在も公開しているのは、8つの自治体にとどまっていることが分かりました。
※マップをHPで公開している8つの自治体
▼札幌市▼旭川市▼函館市▼苫小牧市▼北見市▼石狩市▼三笠市▼新篠津村

なぜマップの作成は進まないのか。
取材を進めていく中で、大きく分けて3つの課題が浮かび上がってきました。

1、液状化のハザードマップの作成が法律で義務づけられていない
取材した自治体の中には、災害対策にかけられる予算が限られていて、国の緊急対策事業で助成金が出されているものから順番に取り組むことで精いっぱいというケースがありました。このため義務化されていないマップの作成は後回しになり、予算の確保が難しい状況にあるということです。

2、地盤データの不足
公共工事の際に取得した地盤のデータは多くの場合、液状化マップを作る災害対策を担当する部署とは異なる建設系の部署などで保管されています。このためマップを作成する部署が積極的に地盤のデータを収集しなければ、活用されることなく廃棄されてきたことが複数の自治体への取材で分かってきました。私が取材した自治体の中には、ほとんどのデータを5年で廃棄しているという事例もありました。

3、担当部署の連携の不足
ハザードマップは災害から命を守るという目的で作られていますが、液状化については、住宅などの個人の財産を守るという側面も強く、災害対策担当の部署だけでなく、宅地を管理する部署や公共工事を担当する部署などとの連携が欠かせません。しかし、実際には作成が義務でないこともあり進んでいないのが実情です。

課題への対策は
では、こうした課題に対して対策はとられているのでしょうか。
地盤データの収集については、平成30年に国土地盤情報センターという機関が立ち上がり、業者が公共工事の際に調査した地盤データを提出する仕組みができ、集約と蓄積が始まっています。
ただ、国土地盤情報センターによると、現在までに道内で集まっているのは3万540地点分。このうち、平成30年以前のデータがおよそ1万2800地点となっていて、長年、自治体が収集してきたデータがほとんど登録されていない実態が見えてきました。また、登録状況も札幌市より南側の胆振方面ではおよそ3600地点分のデータがある一方で、液状化のリスクが高い場所が多い襟裳岬より東の道東方面では、およそ2600地点の登録にとどまっているということです。

自治体はデータの有効活用を
国はことし2月に液状化ハザードマップの手引きを公表し、自治体に作成を促しています。そして、新たな手引きに基づくマップの作成について、令和7年度末までに25の自治体でマップを完成させるという目標も掲げました。
専門家はこうした背景に加えて、道内では今後も巨大地震のリスクを抱えているため、液状化ハザードマップの作成を急ぐべきだとしています。

北海道立総合研究機構 廣瀬亘 主査
「北海道の場合、千島海溝沿いの巨大地震これが今後数十年以内に確実に起こるだろうといわれているため、地盤対策の基礎的な情報となるハザードマップは必要かなと考えている。今後少しずつでも情報公開とそれに向けてデータ整理を進めていく必要があると思います」

急がれるデータの有効活用
取材を通して見えてきたのは、札幌市の危機管理対策課のようにマップを作成する部署が積極的に地盤のデータを収集しなければ、活用されることなく廃棄されてきたという実情でした。しかし、1つの地点の地盤調査には100万円近くの費用がかかる場合もあります。調査の財源が市民の税金であることを考えれば、データが活用されていない実態は残念でなりません。地盤のデータは液状化に限らず地震対策の上でも欠かせないものです。いつか来るかもしれない地震に備え、自治体の積極的な取り組みが必要だと強く感じました。

(NHK札幌放送局 臼杵良)

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