木工作家 三島千枝さん

ゲストは、札幌市在住の木工作家・三島千枝(みしま・ちえ)さんです。
三島さんは、札幌の中心部近くにある自然豊かな森(小別沢地区)に工房兼店舗を構え、様々な木製品を手掛けています。北海道産の、再生可能な木材にこだわり製作を続ける三島さんに、その思いなどをうかがいました。
現在はご主人と従業員との3人で100種類以上の製品を手掛けている三島さん。その中のいくつかは札幌市が札幌らしさを基準に審査・認証する地域ブランド「札幌スタイル」にも選ばれています。

子ども用の食器は、お食い初めのお祝い品としてセット販売もされています。三島さんが主に使っている木材の生産地・下川町では、誕生したお子さん全員にこのセットがプレゼントされ好評だそうです。

会社を立ち上げたときから、材料はすべて北海道産の木材にしようと考えていた三島さん。中でも特別な思いで活用している樹木が「ハンノキ」です。
ハンノキは全国的によく見かける樹木の一種です。繁殖力・生命力が強く、成長も早いのですが、木が柔らかく虫食いや節が多いので、家具や工芸品の材料としては好まれず今までほとんど活用されてきませんでした。
しかし三島さんは、その木の特徴を個性として生かし、有効に利用したいと考えました。そして今では多くの製品にハンノキを使っています。特に「軽くて柔らかい」という特徴を生かせることから、食器はすべてハンノキを使っています。節の部分も個性として、使用するのに支障がない限りそのまま製品に使っています。

食器を手掛けるようになり、実は新たな課題もありました。
木の食器は水や油分をはじくよう、すべて塗装をしています。しかし三島さんは、今まで一般的に行われてきた塗装では納得できない部分がたくさんあったそうです。そこで取り入れたのが、「ガラスコーティング塗装」でした。ガラスコーティングは汚れや色移りに強く特別な手入れがいりません。塗装特有のニオイもなく、劣化もほとんどないため長く使い続けることが可能になります。しかし木製品にこの方法を取り入れるのは技術的に難しく、コストも手間もかかるため実用化している人はあまりいないのが現状でした。しかし三島さんは実験を続け改良を重ねて、去年ようやく納得いく方法にたどり着いたんだそうです。

木のいのちをいただきモノづくりをしているという意識から、樹木を保護し育てる活動にも積極的に関わっていきたいという三島さん。
原材料の木材のほとんどをお願いしている下川町は森の再生にも力を入れているため、三島さんは会社を立ち上げた2008年から毎年、下川町への寄付や植樹を続けています。

使うだけでは資源はいつか枯渇してしまう。だからこそ、森の資源に感謝し保護し育てながら作品を作り続けたい、ということです。
【出演】木工作家 三島 千枝 さん