NHK札幌放送局

夢の世界に一歩 若き羊飼いの挑戦

北海道WEBニュース特集

2021年1月13日(水)午後1時52分 更新

十勝の新得町で羊農家として32年ぶりに新規就農した男性がいます。地域と家族の支えを受けながら、夢だった世界に一歩を踏み出した若き羊飼いの挑戦を追いました。 

羊飼いにあこがれて

去年9月に新得町で農場を開いた高橋達也さん(31)は、小樽市出身の新人羊飼いです。いま農場で飼育している羊は18頭。長年の夢だった羊飼い生活がスタートしました。

高橋めん羊農場 高橋達也さん
「もっと羊の頭数を増やさないと羊飼いとしては生活していけないので、もっと増やす感じですね」

高橋さんが羊飼いを目指したきっかけは、札幌市のペット関連の専門学校に通っていた時に研修で訪れた十勝の羊牧場での体験でした。そこで初めて出会った羊飼いの姿に強く惹かれたと言います。

「羊を育てるところから販売して食べてもらうまで責任を持ってやってるなって姿がすごくかっこよかったです」

専門学校を卒業した後、高橋さんは羊飼いを目指して十勝の2つの牧場で7年半、修行の日々を送りました。羊の出産から搾乳、毛刈りや牧羊犬のトレーニングに至るまで、羊飼いとして必要な知識を1つ1つ学んでいきました。

30歳を過ぎた去年、高橋さんに転機が訪れます。新得町に離農した酪農家が使っていた牧場の跡地があることを知り、“ここでしかできない農業をやりたい”と夢だった独立を決意したのです。

“夢の農場”支える地域と家族

資金が限られる中、高橋さんはできるだけお金をかけずに自分の手で農場の整備を進めています。羊の小屋は元々あった古い牛舎を利用し、小屋の仕切りに使っている鉄パイプは知り合いの農家から廃材をもらって作りました。

試行錯誤が続く中で、高橋さんの心の支えになっているのが家族の存在です。農場近くの古い一軒家で妻の万貴さん(29)と1歳の娘、月ちゃんの3人で暮らしています。

子育てをしながら二人三脚で農場を手伝う万貴さんも、羊飼いとして歩み始めた夫の姿を温かく見守っています。

妻 万貴さん
「お金はないですけど心は豊かな感じがします。夫の右腕的な存在であれたらいいなと思っています」

羊飼いとしてはまだ収入がないため、牧場は軌道に乗るまで赤字が続きます。そんな一家の生活を支えているのは搾乳のアルバイト収入です。新得町内の牧場で夜明け前の4時から週に5日、1日9時間働いています。

朝のアルバイトを終えると、ようやく自分の農場での仕事に取りかかることができます。12月に行っていたのは羊たちの冬場のエサになる牧草の搬入作業です。作業は近くの農場の男性が手伝ってくれました。

見知らぬ土地でひたむきに頑張る高橋さんを、地元の人たちも応援しています。

近くの農場の男性
「やる気と気持ちが強い若者だなと思っていますので、一生懸命やってくれると思います」

初の出産シーズンへ

高橋さんが今後、農場の経営の柱にしたいと思っているのが食肉用の羊の生産です。目指しているのは羊の肉の魅力を多くの人に伝えること。このため飼育する羊の種類にもこだわっていると言います。

「飼育しているのはサウスダウン種の血が多く入っている品種の羊ですね。サウスダウン種の羊は今まで食べた羊の中でどれよりもおいしかったので、その感動を多くの人に伝えたいと思っています」

高橋さんは今後5年で羊を100頭まで増やすことを目指しています。12月には繁殖用のメスの羊を新たに10頭、農場に迎えました。
まもなく迎える出産シーズンには24時間つきっきりで、徹夜で見守ることも少なくないと言います。

「出産は牧場の中では一番大きなイベントなんですよね。それを乗り越えることができて初めて羊飼いになれるのかなって思っています」

母羊に元気な赤ちゃんを産んでもらうために欠かせないのが体調管理です。寄生虫が原因の貧血を起こしていないかなど毎日、羊の全身を細かく調べて、2月下旬にも始まる出産シーズンに備えています。

大きな夢が詰まった小さな「高橋めん羊農場」は、新たな年も家族みんなで力を合わせて一歩ずつ前へと進んでいます。

高橋めん羊農場 高橋達也さん
「品質にとにかくこだわって小規模でやるのが目標だったので、そこをぶれずにいけばどんなことがあってもやっていけるのかなと思っています。家族で成長しながら、ここでずっと農業を続けていこうと思います」

《取材後記》

北海道では新規就農者が年々減少し、農業の担い手不足が進んでいます。そんな中、高橋さんは家族みんなで力を合わせながら前へと進んでいます。「新得町に根ざした農業をしたい」と、静かに熱い思いを話してくれた姿はとても魅力的に映りました。
高橋さんの農場では今後、食肉の生産だけでなくチーズなどの乳製品や羊毛を使った手芸品づくりなどにも挑戦していくということです。始まったばかりの農場が今後どのように変わっていくのか、夢に向かって成長を続ける高橋さん一家の姿をこれからも追い続けていきたいと思います。

(帯広放送局・小川祥 2021年1月6日放送)

関連情報

WEBニュース特集 夏休み明けの子どものケアは

北海道WEBニュース特集

2019年8月23日(金)午後3時57分 更新

WEBニュース特集 新観光列車、期待の訳は

北海道WEBニュース特集

2019年7月31日(水)午後6時08分 更新

WEBニュース特集 2度目の「緊急宣言」道内は

北海道WEBニュース特集

2020年4月16日(木)午後2時56分 更新

上に戻る