NHK札幌放送局

異文化ガールズトリップ 共に生きるためのヒント

北海道クローズアップ

2019年11月20日(水)午前11時48分 更新

現在、外国人観光客は北海道の経済を支え、外国人の労働者は産業を守る存在となりました。一方で、日本人と外国人が共に生きる社会では、さまざまな摩擦も生まれています。そこで、国籍の違う4人の女性が1台の車で共に暮らしながら旅をするという実験的な企画を行いました。言語も文化も違う人間が、逃げ場のない空間で体験を共有する旅。そこに共に生きるためのヒントはあるのか。彼女たちの笑い合い、そしてぶつかり合ったありのままの姿をお届けします。

旅の始まり 異性の話は国境を超える

2019年7月、国籍の違う4人の女性が札幌に集まりました。会うのはこの日が初めて。1台の車に乗り込み、札幌から宗谷岬へ2泊3日の旅が始まります。

日本人のあおいさん(以下、あおい)
8月にアメリカ留学する、海外に漠然とした憧れがある大学生。

中国人のタンさん(以下、タン)
北海道大学に留学中。来年、大手自動車メーカーに就職するエリート。

ベトナム人のヴァンさん(以下、ヴァン)
日本に住んで4年目。日本とベトナムの懸け橋になりたいという、情熱あふれる女子。

タイ人のディアさん(以下、ディア)
留学にきてまだ4か月。日本のイケメン俳優が大好き。いまは、日本語の勉強を頑張っている。

そんな初対面の4人が心を近づけるために選んだ最初の話題は、日本人の男性について。

ヴァン「日本人の男性は、最初は冷たいと思いました。女性が両手にかご持っていて、男性は両手に何も持っていなかったのに、手伝おうともしなかったです」

タン「それは日本で普通ですか?」

あおい「うん、別にされなくてもいい。別に自分で持てるし、みたいな」

タン「なるほど。それは大きな違いだと思います。中国は、もし男性が持ってくれなかったら、悪い男だと思います(笑)」

ディア「うん。タイも」

一同「(笑)」

異性の話題は文化を越えても盛り上がるようです。

ぶつかり合う「マナー」への認識

車は、パッチワーク状に彩られた絶景が広がる美瑛に到着。外国人であふれる、北海道を象徴する観光の現場です。
ところが地元の農家は、ある問題に困っているといいます。外国人観光客が畑に足を踏み入れてしまうのです。消毒をしていない靴で入ると、畑が汚染される危険もあります。

「僕らの収穫物を踏まれたりするのは、快くもないですし、畑に入っちゃいけないんだというのがまず理解してもらえてない」(農家の男性)

文化の違い、そして感覚の違い。

それは、ふたりの参加者にとって、旅のテーマでもありました。

ホテルでアルバイトをしている日本人のあおいは、この問題を考える機会が多くあるといいます。

「公共の場での声が大きかったりマナーだったり、ちょっとあまり好きじゃないなって思うときもあるので」(あおい)

海外に憧れる一方で、外国人に違和感を持ってしまう。今回の旅では、そんな気持ちの答えを見つけようと考えています。

もう一人、中国エリート女子のタンは、中国人への偏見をたびたび感じていました。そのせいで、日本人の友達ができません。

「外国人より、日本人の友達が少ない。日本人とあまりしゃべれなかったです」(タン)

そんな自分を変えたいと旅に参加しました。

美瑛を離れると、4人は自然とマナーについて話しはじめました。

タン「中国ではたぶん、(畑に)自由に入れると思います。だから、そんな知識がないまま、畑に行っちゃった外国人がいる」

あおい「いるのかもしれないよね。常識というか、そんな知識がなかったら、入るよね」

この機会にあおいは、ふだん感じている中国人への違和感をぶつけます。

あおい「ホテルで働いていると、結構、割り込みしてくる人とかいる。他の人を対応しているのに。急に割り込んできて、それはないんじゃないみたいな感じのことはあるから、そこはちょっと理解しがたい」

タン「どんなタイプの人でもいます。そんな人もたくさんいます。(中国は)人数が多い、多過ぎ」

あおい「確かにね。それもあるかもね」

タンは日本に来て、多くの日本人から同様の質問を受けていました。何度も答えてきて、中国人への固定観念にうんざりしていたのです。
あおいとの会話も中途半端なまま流れてしまいました。

1日目の夜 それぞれの思い

1日目の夜を過ごす、キャンプ場に到着。
夕食のバーベキューの席で、ここまで発言の少なかったディアが、タイ料理のラーブ(ピリ辛そぼろ)を作ってみんなにふるまいました。

日本語を勉強中のディアは会話に自信が持てず、普段から引っ込み思案になりがちです。

「日本語会話練習したいです。自信を持ちたい」(ディア)

1日を一緒に過ごしてみて、この仲間と言語の壁を越えてもっと分かり合いたい、この旅で殻をやぶりたいと感じ始めていました。

一方、ベトナム人のヴァンはこの日、日本人のあおいについて感じたことがありました。

「あおいさんはにこにこしているから、何を考えているかちょっと分からないです。にこにこしているのが上手です。たぶん相手は本音で言ってくれていないと思います」(ヴァン)

あおいも、心の内をぶつけきれなかったもどかしさを感じていました。

「最初仲良くなりたかったんで、ちょっと遠慮した部分とかを明日はちょっと聞けたらな、と思います」(あおい)

異文化の4人が刺激を与え合った1日目が終わり、それぞれの思いが動き始めていました。

技能実習生の問題を議論する

2日目に4人がたどり着いたのは士別市の農場。この農場を支えているのは、ベトナム人の技能実習生たちです。過疎化が進む町では外国人の労働力は欠かせません。

実習生のロックさんは、仕事終わった後に週4~5回は日本語の勉強。そして、給料のおよそ8割をベトナムにいる両親に送っていると話してくれました。

異国の地で家族を支える実習生の姿を見た4人。農場を離れると、ヴァンが彼らの働く環境について話し始めました。

ヴァン「いま見学したのは良い例だったんだけど、実際にそうじゃないところもある。本当に一番ひどいケースは、分からないことがあったら蹴られたりして。私が実習生だったら逃げます」

技能実習生を支援するアルバイトをしているヴァン。今回の旅で、外国人が日本で働きやすい環境作りについて話し合いたいと考えていました。

ヴァン「外国人の労働者についてどう考えるのか、その話を聞きたいです。外国人が日本で働く、どういう環境が必要ですか?

現場を知るヴァンが投げかけた難しい課題。そのとき口火を切ったのは、引っ込み思案のディアでした。たどたどしい日本語で、必死に考えを伝えます。

ディア「もし、私のことを何か嫌いだったら、本音言ったほうがいい。もし、私は何か悪いことやったら、本音言ってほしい。文句でもいい」

ヴァン「じゃあ、外国人が文句とか、自分の本音で話せる環境が必要ということ?」

ディア「そう」

あおい「それは分かる。それ、日本人も同じかな。自分の本音を言える機会をつくるのは、本当に大事」

タン「それはあると思います。お互いに、もっと交流、よくしゃべって」

心の内を伝え合うことの大切さを認識した4人でした。

話すことで理解が深まる

本音を話すことの大切さが心に響いたあおいは、用意していた質問をタンにぶつけます。

あおい「タンちゃんへ」

タン「わたし~?」

あおい「なんで中国の方は声が大きいの? 率直な疑問。何か、地下鉄とか…」

ディア「うん、そう」

あおいは、今度こそきちんと知りたいと思いました。

タン「ある人は、相手がはっきり聞こえるように、大きい声でしゃべるんです。ある人は、習慣」

あおい「習慣っていうことは、中国のみんな、あのボリュームでしゃべる?」

タン「スーパーとか、地下鉄とか公共の場所。みんな、何ていうか、にぎやかな感じ」

あおい「周りが話してるから、自分も大きい声で話さないと聞こえないんだ、自分の相手に」

タン「でも、けんかしていないよ」

あおい「(笑)確かに。解決!」

あおいの思いは、タンに伝わりました。そのときの気持ちをタンが語ります。

「中国人も日本人に対して、“遠回し”、そういう印象も持っています。あおいちゃんは日本人だけど、すごくストレートな性格なので、すごく好きになりました」(タン)

一方、あおいも思いは同じで、話をして良かったと感じています。

「話してなかったらずっと偏見のまま終わってたかなって思うので、そこは新しく、新しい視点で見れるようになるかなとは思います」(あおい)

心の内を率直に伝えるあおいの姿を見て、ヴァンも感じていたことを伝えようと思いました。

ヴァン「1日目は、正直に言ったら、ディアちゃんとタンちゃんと話すのは結構たぶんお互い本音で言ってたんだけど、あおいちゃんだけはにこにこしてるけど・・・」

あおい「話してなかった?」

ヴァン 「うん」

あおい「ほんとに?」

ヴァン「話してないより、なんか考えているけど言ってくれない。わたしは勝手にそう思っていた。結構周りの日本人も初対面の場合は多いじゃない。にこにこしてるけど本当は嫌なことがあっても言わないじゃない」

あおい「無意識かな、それ。よく話してくれたね。そんな裏で何考えてるかわかんないように見えている人に」

ヴァン「でも、聞いて、答えてくれて、すごいもっと話せたからよかったと思う」

あおい「わかった。そうだね。伝わらないことがあるってことよね? きっと。伝わってるって思っちゃってるから、こっちは。そのイエスな気持ちを」

ヴァン「伝わってなかった(笑)」

あおい「だからだよね。オーケー、オーケー」

心の内を、真摯(しんし)に伝える。その先に、心の底からの笑顔がありました。

4人が見せた共生へのヒント

2泊3日の旅は、終わりに近づきます。

4人で過ごす最後の夜。伝えたいことがどんどん生まれるのに言葉にできない自分がもどかしくて、ディアは泣き出してしまいました。

あおい 「なんでごめんねなの?」

ディア「ずっとみんなを待たせると思った」

あおい 「待ってないよ」

ディア「もっと日本語勉強します・・・」

ヴァン「十分頑張っている。来年は絶対もっと話せるよ」

「気持ちがあふれた。みんなが応援してくれてよかった。ありがとうね」(ディアの日記)

ヴァン「人生の大事な2日間だったな」

タン「本当に人生に大事な・・・これからも・・・はい」

国籍の違う4人の女性が、お互いを分かり合いたいという思いが壁を越えて、心をつなぎました。

そして、最終目的地の宗谷岬に到着。
旅を終えてそれぞれの思いを語りました。

「学生生活の中でも、来年入社してからも、きっとたくさん日本人の友達つくれると思います」(タン)

「日本の文化のいいところもあれば、ほかの文化のいいところもあるので、お互いのいいところを取り入れていくのが共生かな」(あおい)

「みなさんから勇気をもらった。自信が大切です」(ディア)

「最初は壁かもしれないですけど、コミュニケーションを通じてその壁は打ち壊すことができるはずだと思います」(ヴァン)

旅の中で、どんどんと変わっていった4人の関係。そこには、共に生きるためのヒントがありました。

2019年7月26日(金)放送
北海道クローズアップ
「異文化ガールズトリップ」より

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