道内最後の地元資本のデパート、帯広市の「藤丸」が2023年1月31日に閉店し、120年余りの歴史に幕を下ろしました。開店前から閉店までを総力取材。訪れた人の想いに迫りました。
店の前には開店を待つ人たちの姿(午前9時)
営業最終日を迎えた藤丸。午前10時からの開店の1時間ほど前にはすでに10人ほどの人が集まっていました。
開店の2時間近く前に来たという帯広市の47歳の男性は「最後を見届けたいと早く来た。小さい頃から来ていたのでいろいろ思い出はある。目にしっかり焼き付けて店内を見て帰りたい」と話していました。


開店を待つ行列ができる(午前9時50分)
開店直前には開店を待つ人たちの数は200人ほどに増え、長い列ができていました。


開店すると大勢の来店客 藤本社長が出迎える(午前10時)
午前10時に開店が告げられると、待っていた大勢の来店客が店内に入っていきました。正面玄関では藤本長章社長が訪れた人たちを出迎えました。
藤本長章社長「ありがたいのひと言」
正面玄関の前で、来店客にあいさつをした藤本長章社長。報道陣の取材に対して「最後の最後まで足を運んでいただいて、ありがたいのひと言。数多くのお客様が思い出を探しにいらっしゃるので、心のふれあいをしたい。お客様の思いがぎっしりつまっているので、お互いが共有できる1日にしたい」と話しました。


来店客がなじみの店員に感謝を伝える場面も(午前10時40分)
店内では多くの人たちが藤丸での最後の買い物を楽しんでいました。なじみの店員に感謝を伝えたり、最後のあいさつをしたりする人もいました。音更町の79歳の女性は「何十年も藤丸に来ている。もう来ないと思ったが、きょうはいてもたってもいられなくて、最後にぐるっと店内を見ようと思って来た。いい品物がたくさんあるし、残念のひと言。よく122年頑張ってきたと思うし、長い間お疲れさまでしたと声をかけたい」と話していました。

帯広市長がコメント「寂しい思い。中心市街地活性化に取り組む」
「藤丸」が閉店することを受けて、帯広市の米沢市長はコメントを発表しました。このなかで米沢市長は「長年にわたり地域の皆さんに愛されてきた藤丸百貨店がシャッターを下ろす日を迎えたことに、寂しい思いを抱いている」としています。そのうえで今後について「藤丸の屋号を引き継ぐ新会社が設立されるなど、前向きな動きもある。今後も関係機関・団体と連携しながら、中心市街地活性化に取り組んでいく」とコメントしています。

そば屋も多くの客でにぎわう(正午)
7階にあるそば屋。お昼どきとあって、店内は温かいそばを求める客で混雑しています。店の前には並ぶ人の姿も。


エレベーターガールのバルーン作品も
7階エレベーター前には、エレベーターガールのバルーン作品が。一緒に記念撮影する人の姿も。60代の女性は「昔は必ずエレベーターガールがいたんだよねぇ」と昔を懐かしみながら話していました。
おもちゃのブロックで「藤丸」を再現
7階エレベーター前には、おもちゃのブロックで作った藤丸の模型も。帯広信用金庫の職員が作成しました。写真を撮っていた20代の男性も「よくできているなぁ」と感心していました。


「バッグで藤丸思い出して」(午後1時)
3階のバッグの売り場では、「すべて5000円です。お客様への感謝を値段に込めました」と声をあげる店員の姿も。購入した客には「長い間ありがとうございました。バッグを使うときに藤丸を思い出してくださいね」と笑顔で声をかけていました。
「再び藤丸の灯を」寄せ書きも
7階のエレベーター前にはこれまでに店に寄せられた寄せ書きが貼られています。中には「再び街の中心に藤丸の灯を」というメッセージも。営業再開を待ち望む声が多く寄せられています。


店の入り口で記念撮影(午後1時半)
正面入り口付近では、思い出を写真に残そうと記念撮影する多くの客の姿が。「閉店まであと0日」と書かれたボードや、店に寄せられたたくさんのメッセージを背景にパシャリ。


藤丸コメント「お客様の何気ない日常や大切な節目に寄りそえ幸せ」
「藤丸」はSNSの公式アカウントで閉店に関するコメントを発表しました。このなかで「明治33年(1900年)、十勝・帯広の地に創業以来、地域の百貨店として長きにわたり、世代を超えてご愛顧賜りましたことに深く感謝し、厚く御礼申し上げます」とこれまでの歴史を振り返りました。
そして「地域の皆様に支えられて122年、お客様の何気ない日常や晴れやかな門出の日、大切な節目に寄りそいお手伝いができました事、大変ありがたく幸せに存じます。122年間、誠にありがとうございました」と地域の人たちへ感謝を述べました。

長年の客も別れを惜しむ 「新しい藤丸に期待」(午後5時)
「藤丸」の閉店に合わせて店には多くの人が訪れ、「藤丸」との別れを惜しんでいます。このうち、帯広市の狭間和浩さんは、藤丸が閉店することを知った後、少しでも店の力になろうと、おせちや衣料品などを購入してきました。閉店を迎えた31日も藤丸を訪れ、結婚した30年ほど前に、義理の両親がお祝いのスーツを購入してくれたという紳士服の店に立ち寄ると「スーツは今でも大切にタンスにしまってあります。贈り物など、いい物を買うときはよく藤丸に行っていました」と話していました。このほかお気に入りの場所だという市内の町並みを見渡せるスペースなどを訪れ、店との別れを惜しんでいました。狭間さんは「子どものころからわくわくしながら通っていた店が閉まるのはさびしいです。今後、営業再開する予定の新しい藤丸には、若者が集まるような場所になることを期待しています」と話していました。


閉店セレモニーに向けた準備進む(午後6時すぎ)
あと1時間後に閉店を迎える藤丸では、最後を見届けようと訪れた人であふれかえっていました。また、閉店セレモニーに向けた準備が着々と進められていました。


閉店セレモニー 藤本社長が最後のあいさつ「心から感謝」(午後7時)
藤丸では、午後7時から「閉店セレモニー」が行われ、藤本長章社長が客に向けて最後のあいさつを行いました。このなかで藤本社長は「本当に長い間藤丸にご愛顧いただきまして心から感謝申し上げます。そしてまたこれからも、新しい藤丸に対して皆様の期待をぜひお寄せいただき、ぜひこの帯広・十勝の藤丸にいただいたご愛顧を次にもつなげていただけるように、みなさまのお力を頂戴したい」と述べました。


店のシャッターが下ろされ、120年余りの歴史に幕(午後7時40分)
店の入り口に並んだ藤本長章社長や藤丸の従業員が集まった大勢の人たちに向けて深々と頭を下げるなか、店のシャッターがゆっくりと下ろされ、120年余りの歴史に幕が下ろされました。シャッターが下りると集まった人たちからは拍手が起きていました。


新“藤丸”村松社長「課題山積だが必ず再開にこぎつける」(午後7時50分ごろ)
閉店後、新会社の村松一樹社長は藤丸の店内で従業員に向けてあいさつしました。このなかで村松社長は「藤丸の名前を引き継ぐ重さを、改めて感じている。新生藤丸は課題山積だが、課題を1つ1つ乗り越えて、1年後、2年後になるかもしれないが必ず再開にこぎつけたいと思っている」と述べました。そのうえで「新たな藤丸の形ができあがったときに、ぜひ従業員のみなさんには参集していただきたい。それぞれの事情があると思うので、個別に対応させていただきたい。皆様の長きにわたるご尽力に、感謝の言葉を伝えたい」と述べました。

(2023年1月31日)
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