NHK札幌放送局

十勝VIEW!~残したい厳冬の風景~ 制作後記

十勝チャンネル

2021年4月23日(金)午前10時31分 更新

時を重ねながらも変わらぬ威容を誇る十勝の風景。コロナ禍でも、おうちで楽しめるように映像に残しました。

崩壊が続くタウシュベツ川橋梁や、樹齢150年にもなる豊頃町のはるにれの木など、いま残したい厳冬に輝く風景を映像にしました。高精細高画質の映像で残すべく、4Kスーパーハイビジョンの撮影に挑みました。

シビアなピントや慣れない撮影機材と格闘し、なんとか撮影ができましたが、表現力豊かな映像になったと思います。狙い通りロケの日は十勝晴れ。青空の下ピリッと厳寒の十勝らしい映像を捉えることができました。どうにかして、4Kでお見せしたいですね・・。

人物は登場させないで「風景のみで勝負!」と制作をスタートしました。喋らない風景が、映像を通して語りかけて来る、カメラマンの腕の見せ所でしょうか・・。

十勝牧場 馬追い運動

十勝牧場の「馬追い運動」で、番組冒頭の映像に勢いを!

企画当初は入れていなかった風景ですが、番組上、他の3つの風景を考えた時に、動的な要素が欲しいと考えました。
本来の農林業での役目が激減し、10年ほど前に繁殖頭数を半減した農用馬、残したい風景に加えました。

いま好調なばんえい競馬も廃止の危機がありました。あとは各地のまつりに使われているくらいです。ばん馬には縁が深く、「地域発ドラマ 大地のファンファーレ」の撮影や「にっぽんカメラアイ 輓馬(ばんば)」の制作をしたこともあり、思い入れのある被写体です。

春になり、たくさんの子馬が生まれています。すべて純血種で、多くは繁殖馬として生産農家に供給されるそうで、異なる品種と掛け合わせることで強い馬を作るのだそうです。最近、ばんえい競馬にこの牧場の馬が出走したことがあり、生産農家が減っていることの現れでもあります。


はるにれの木

動かない木をどう魅せていくか、ありとあらゆる手段を使いました。ドローンやタイムラプス、あとは樹氷で白くなるのを願ってロケに挑みました。

1日目はドローンで朝日の出る時間から狙いました。-25℃まで冷え込みドローンが飛ばないかも?バッテリーを暖め無事起動し飛ぶことができました。
川霧の十勝川を狙っていましたが、川霧は出ず。川までドローンを飛ばすと、なんと不思議な模様が出来ているではありませんか!

前日には流れていた十勝川が、朝の冷え込みで全面凍っていました。面白い映像だと、凍結する過程で氷が堰止められてできた不思議な模様を撮影しました。そこから十勝川のカットへ続き、そして雪原にぽつんと立つはるにれの木を撮影しました。

タイムラプスはまったく雲がなくて変化が今一つだったので、後日仕切り直して撮影しました。樹氷も狙いたいので暖かい日から急に冷え込む晴れの朝、しかも少し雲が出るといった日を天気予報で探りました。

雪も降ったらしく、樹氷のほか雪原や幹に着いた雪も良い感じです。
タイムラプスは成功。日が昇るとともに雲が動き出し、150年という時の流れのイメージが撮れました。

年老いた木の肌のディテールも観たくなり、雪原の道より近づくのはご法度なので望遠レンズで息を止めて・・何度かテイクして思った映像が撮れました。でしょうか・・。

この木にはチェロ。と決めていて、編集で音楽を合わせました。イメージを超えてとても良い感じです。ジーンとしてきました。


ジュエリーアイス

大量の氷の塊が海岸に打ち上げられるのが、本来のジュエリーアイスの美しさですが、今年は不作だったようです。わずかにあった氷で何とか映像にしました。

朝日だけでなく日中のクリアーな光や夕方の優しい光で、時間とともに表情を変える氷の輝きを捉えました。

始めに行った日はこの冬初めて冷え込むとあって、撮った映像が全国ニュースにも使われました。海に霧が上がり朝日に照らされた感じが良かったのでしょうね。

河口付近の堤防でドローンの準備をしていると、立木に大きな鳥がいました。「もしかして」とカメラを持ってゆっくり近づくとオジロワシでした!

逃げられない様にジリジリ距離を詰めながら、足元は深い雪でズボり(汗)・・望遠MAXで撮影しました。欲を言えばもっと近寄りたいのですが、手前の木に被ってしまいます。5分の放送には入れられませんでしたが、ホームページの完全版動画に入りました。

ドローン映像がワシの目線に見えたでしょうか。


タウシュベツ川橋梁

最も撮影したかった風景です。
帯広局に来てからオフで行ったことがあります。去年の冬に凍った湖を40分ほど歩き、夏には林道を1時間ほど歩いて、写真を撮りました。

アーチが連なる造形美と建造物としての機能美、大雪山の大自然に囲まれ、かつて人々の暮らしを支えていた歴史があり、役目を終え自然に還り(かえり)つつある姿に魅力を感じています(感じ方に個人差がありますので・・)。

山登りが好きで、東大雪の名峰ニペソツ山をバックに撮った写真がお気に入りです。番組でも同じ映像を撮影して、ラストカットにしました。

去年の春に側壁が大きく崩れ、美しいアーチの形が途切れる危機にあるタウシュベツ川橋梁。
去年の冬に撮った写真(下の画像)と比べると、手前から3つ目と5つ目の橋脚の上が崩れているのが分かります。

去年の夏には、既に崩れていました。

「心ぽかぽか十勝冬まつり」後記でも触れましたが、1日で然別湖とここ糠平湖のドローン撮影をする必要がありました。この間の移動に車と徒歩を合わせて2時間掛かり、日が短い真冬では平場の撮影をする余裕がないため、別日にしました。ドローン撮影日を1週間前には決める必要があったので、平場は1月23日(土)、ドローンは24日(日)に予定しました。

撮影日が近づくにつれ予報で雲が減っていき、ロケ日程に合せるかのように2日とも晴れ渡り、大自然の中にあるタウシュベツ川橋梁を撮ることができました。

撮影後、2月中旬には例年よりひと月早く湖の横断ができなくなりました。本当に良い時に撮りました・・。

毎年、秋に湖の水位が上がり橋が水没します。次に見てみたい場面です。

冬になり湖が凍る頃には、湖面が下がり橋が再び表れてきます。糠平湖の氷が沈下しているのは、橋脚に着いた氷や足元の氷が盛り上がっていることで分かります。時々「ミシッ」「ドシン」と湖に響き渡ります。氷った湖面が下がるからです。不気味なあの音は、分かっていてもドキッとします。キノコ氷も同じ理由でできるのです。

幸いにも去年の秋は少雨のせいか水没せず、冬期間の大きな傷みは免れました。初めてのことだそうで、美しい形を残す最後のチャンスかもしれません。

いま映像に残し多くのみなさまに伝えることができて、撮影という仕事をしていた甲斐がありました。引き続き、形を変えていく過程も記録できれば良いなと思います。

威容を誇る十勝の風景。-20℃にもなる厳寒が引き立ててくれたことでしょう。敢えて人物を登場させなかったのも、風景の尊さが表現できたと自負しています。

風景ではありますが、ジュエリーアイス以外は人の営みが関わっています。馬然り、はるにれの木は町民から大事にされ町の保全事業も執り行われています。タウシュベツ川橋梁は人々の暮らしを支えた歴史があります。

十勝は自然も雄大で魅力的ですが、今回撮影し映像に残した“人の営みとともにある風景”に尊さを感じた番組制作でした。


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