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宿泊施設が足りない奥尻島 フェリーで一晩

  • 2023年12月11日

絶景や海の幸を求めて多くの観光客が足を運ぶ奥尻島。自然を満喫するアクティビティーや旬のウニなどが人気の観光シーズンは夏ですが、雪が積もる12月頭にモニタ-ツアーが開かれました。泊まった先はなんと、港に係留しているフェリー。実は奥尻島では宿泊施設が不足していて、一時的な宿泊先として使用できるかどうか実験的に利用したのです。 揺れは? どうやって過ごす? 眠れる? 果たして泊まった感想は…? 

美食から温泉まで 離島を楽しむ

道南の江差港からフェリーで2時間あまりの場所にある奥尻島。約143平方キロメートルにおよそ2300人が暮らす小さな離島です。今回、北海道運輸局函館運輸支局が企画し、江差港と奥尻島を往復する1泊2日の旅程が組まれ家族連れや友人同士など子どもから60代まで31人が参加しました。

奥尻島に到着すると、それぞれレンタカーに乗り込んで島内へ。
早速、奥尻ワイナリーでワインを試飲して購入する人や…。

地元の寿司屋では、島でとれた新鮮な魚介類を堪能。

さらに、温泉に入って疲れた体を癒やします。

午後8時すぎ。1日の最後に向かうのは、江差港から乗ってきたフェリー「カランセ奥尻」です。奥尻港に翌朝の出港まで係留しています。


宿泊施設が足りない

なぜフェリーに泊まることになったのか。背景にあるのは島の宿泊施設の不足です。
新型コロナの感染が拡大する前の2018年度、島に宿泊した人は3万2500人あまりでうち4割が7月と8月に集中しています。コロナ禍での行動制限がなくなったことしの同じ時期ではおよそ1万人となっていて、来年は夏を中心にさらに観光客の増加が見込まれています。

しかし、奥尻島観光協会によりますと、現在ある宿泊施設は民宿や旅館を中心に19か所あり、受け入れが可能な人数は360人ほど。大型の宿泊施設の閉鎖などを受けてここ10年あまりで半数以下に減少しています。また、経営者の高齢化も進んでいるといいます。
さらに、新しい役場や道路整備などの公共事業のため工事関係者が長期滞在していて、宿泊施設の予約が取りづらい状況が今後も続く見通しです。

こうしたなか、観光需要に耐えられるよう一時的な宿泊施設を模索することに。島の温泉施設やあわび種苗育成センターといった公共施設のほかに、翌朝の出港まで港に係留している「フェリー」が選ばれたのです。

北海道運輸局函館運輸支局 村上浩之 支局長
「今回の事業を通してさまざまな課題や改善点を検証したいと思っていますが、可能性は非常にある。お土産の購入や体験など観光面での経済効果も高い。サービスとしてお客様にワンストップで提供できるような体制が必要かなと思っています。宿泊、体験、交通、食事、運営体制も含めて検討していく必要がある」

大人の修学旅行さながら

フェリー「カランセ奥尻」の内部は、座席のほかに横になって雑魚寝できるスペースがあります。小さな売店やトイレ、パウダールームもありますが、風呂やシャワー室、食堂などはありません。そのため、フェリーに宿泊する人は島にある温泉に入ってからの宿泊となりました。

今回フェリーに宿泊したのは、企画した関係者とツアー参加者などおよそ20人。フェリー内では寝袋や段ボールの仕切りなどが用意されていました。そして、それぞれ自分たちで「寝床」を準備。自前のテントを持ってきている人もいました。

準備を終えた皆さんフェリーに持ち込んだお酒や食べ物を出し始め、いつの間にかみんなで集まっての宴会がスタート。おしゃべりもはずんで交流が深まり、その様子はまるで「大人の修学旅行」のようでした。

消灯時間が近づくと歯磨き。午後10時すぎには電気が消え、就寝となりました。

意外と快適 課題も

翌朝。
宿泊した人たちは午前7時までに一度、フェリーから外に出ることになっていました。そして午前8時半の出航を前に朝ご飯をすませた参加者は、島のお土産を買い求めていました。

今回のツアー全体を通して、フェリーの宿泊が最も印象に残ったという人も。実際に泊まってみた感想は。

参加者
「参加する前は常に揺れている感じがするのかなと。私けっこう乗り物酔いするのでそこが一番心配でしたね。でもぜんぜん揺れなかったので想像以上に快適でした。
使い勝手については、受け入れる人数次第。20人くらいだったら、女性専用のスペースもあってパウダールームも譲り合いながら使ったりできるんじゃないかな。あとは、もう少し島に滞在できる時間が長いダイヤになったらいいなと思います」

参加者
「仕事やプライベートで何回か来たことはありますが、どうしても泊まるところがないのは影響が大きくて。こうした宿泊先やダイヤがあれば、奥尻島に来やすくなると思います。波がおだやかだったこともあって揺れはほぼ感じなかったし、中は暖かかったので快適に過ごせました。ただ、周りの人の音がもっと増えると気になりそうなので、これくらいの人数規模だったら大丈夫だと思います」

ツアー後のアンケートでは、フェリーに泊まった人のうち7割が快適だったと答え、快適でなかったと答えた人はいませんでした。一方、さまざまな感想がよせられました。

・空調や船の音が少し気になったが快適に過ごせた
・女性専用スペースやパウダールームがあり過ごしやすかった
・人数が増えるとコンセントやWi-Fiの問題、設備やプライバシーの面で課題がある
・洗面所が混み合う、着替えスペースがほしい
・段ボールの仕切りはもう少し背の高いものがいい、テントがあるといい
・貴重品を置くための鍵付きのロッカーがほしい
・フェリー乗り場付近に温泉がなく今回の温泉は遠かったので、港から近い民宿などを使えないか

ふだん使用しないような場所を宿泊施設として使いましたが、「修学旅行のようで楽しかった」や「ゲストハウスのような楽しさがあった」との声もあり、参加者同士で交流できるところが好評だったということです。

また価格について、「食事代や入浴料を除いて今回宿泊した場所を使うとしたら、1泊いくらくらいの料金だと利用しても良いと感じますか?」という質問では、2000~3000円を選んだ人が最も多くなりました。

運輸局は今後、今回集まった意見を参考にしながら島やフェリーの関係者などと相談し、実際にフェリーを活用できるかどうか検討していきたいとしています。

小さな離島でどう観光需要を支えるのか。観光客が集中する来年の夏に向けて、雪が舞う今から模索が始まっています。

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