NHK札幌放送局

火山性地震と火山性微動の違いは何? シラベルカ#45

シラベルカ

2021年3月26日(金)午後7時43分 更新

有珠山について調べると、火山に対する心構えがわかった! 皆さんの疑問を調査するNHK北海道の「シラベルカ」。今回寄せられた投稿は、北海道の火山・有珠山に関するものです。

投稿
「有珠山のニュースで『火山性地震があり、火山性微動は観測されていない』とあったが、この2つの表現の違いを確認したいです。また、地震と微動が同時に起こると危険なのかも知りたいです」

数十年おきに噴火を繰り返し、20世紀には4回も噴火した有珠山。いちばん最後に起きた2000年の噴火を記憶している方も多いのではないでしょうか。最近も火山性地震が観測されるなど、気になっている人も多いのでは。
今回の取材を担当するのは、カメラマンの高です。根っからの文系で、高校時代は理数系科目のテストで35点以上をとったことがありません。

今回の要点
・気象庁では、揺れが30秒以下なら火山性地震、30秒以上なら微動と分けている
・火山性地震は、火山の中で岩石が割れると起こることが多い
・火山性微動は、火山の中のガスや水が移動したり震動したりすると起こることが多い
・有珠山の主治医・岡田さんによると、有珠山は噴火の前兆として火山性地震が増える
十勝岳や有珠山では噴火の前兆として火山性微動が出やすい
・地震と微動、山の性質によって注目すべきところがちがう
・普段から火山に興味をもっておこう!

2021年3月9日のNHKニュースを確認

さっそく投稿者の方が見たであろう、2021年3月9日に放送したNHKのニュースを確認します。

「札幌管区気象台によりますと、有珠山ではきょう午前9時ごろから午後3時までにやや深い領域を震源とする規模の小さな地震を19回観測しました。地下の火山ガスや熱水などの動きを示すと考えられる火山性微動や、火山活動による地殻変動は観測されていないということです」

「なるほど、全然わからん」
火山性地震は火山で起こる地震なのかな?と予想がつきますが、火山性微動は意味がよくわかりません。火山性地震が起こり、火山性微動が観測されていないという状態は、有珠山にとって何を意味するのでしょうか。地震の発表を受けて不安な日々を過ごしている地元の人たちのためにも、ぜひ調べたいところです。

気象台は時間の長さで区別している

今回のニュースは札幌管区気象台の発表をもとにしています。そこで、火山性地震と火山性微動の違いを、気象台に直接聞いてみることにしました。取材に応じてくださったのは、地域火山監視・警報センターの田中祐樹さんです。

「ずばり、火山性地震と火山性微動の違いはなんですか?」
田中「気象庁では、火山の近傍で起きる地面の揺れのうち、おおむね30秒以上起きるものを火山性微動として扱っております。一方、火山性地震は揺れの継続時間が主に30秒に満たないような短い波形を火山性地震として扱っています」

「意外と単純な分け方ですね」
田中「火山に関わる研究機関や関係者の中で統一した基準があるわけではありませんが、気象庁では現在おおむね30秒を目安としています。」
「そもそも、どうして区別する必要があるんですか?」
田中「地震と微動では、火山内部で起こっている現象が違うからです。火山の中で何が起きているかということをより把握しやすくするために、気象庁ではそれら2つを分けて扱っています」

<火山性地震>

火山性地震の場合、多くのケースで、マグマの動きが活発になり、外に出ようとする力によって火山内部の岩石を割ったときの衝撃で、短い揺れが起きているといいます。

<火山性微動>

一方で、火山性微動の場合は、火山の中でマグマによって暖められたガスや地下水が出口を求めて動き回ることで、長い時間にわたる揺れが起きることがあるそうです。

※どちらも一例であって、そのほか様々な原因があります。

有珠山の主治医・岡田さん

火山性地震と火山性微動の定義はわかりましたが、有珠山にとってそれが何を意味するのか知りたい。次にお話を伺ったのは、有珠山と言えばこの人、北海道大学名誉教授の岡田弘さんです。岡田さんは2000年の有珠山噴火を予知したことで知られています。

「火山性地震が起きて火山性微動が観測されていない、今の有珠山はどういう状況だと考えればいいですか?」
岡田「有珠山では過去5回の地震で、噴火の前兆として火山性地震が増加しています」
「いまの状況と似ていますね」
岡田「そうです。ですから、火山性地震が増えると警戒が必要です。ただ、今回の地震は落ち着いているようです」
「良かったー!火山性微動は有珠山の噴火とどう関係がありますか?」
岡田「実は、これまで噴火前に火山性微動が観測されたことはありません」
「え!!」
岡田「噴火後に観測されることが多いです。これからも噴火前にないとは絶対に言えませんが、有珠山では噴火の前兆として火山性微動を気にする必要はないといえます。それには、有珠山という山の性質が関係しています」

岡田「有珠山のマグマは非常に粘り気が強い性質をもつため、噴火の際には、その一部が火口で固まって蓋をしてしまい、内部の圧力が高まり、爆発的な噴火になりがちです。このため、噴火が起きると被害が大きく危険です。しかし、一方では、同じ理由で噴火の前に地震が多発し、地割れを起こしやすいため、予測がしやすい面もあります」
「じゃあ、有珠山では火山性地震に注目すればいいんですね」
岡田「そうなります。しかし、それは有珠山に限った話です」

十勝岳や雌阿寒岳では火山性微動にも注目すべき

「ほかの火山だと、火山性微動が重要になるということですか?」
岡田「それぞれの火山のマグマの性質によって、噴火に先立って発生する前兆現象が大きく違います。北海道内の火山だと、十勝岳や雌阿寒岳は噴火の前兆として火山性微動が出やすいです」
岡田「例えば十勝岳は、有珠山よりもマグマの粘り気は弱く、溶岩流が流れやすい火山です。過去の噴火の際は、前兆として地熱活動が高まり、地震や微動も観測されます。なぜ十勝岳では噴火の前兆として微動があるかというと、火山内部に熱水源があり、噴火に先立ち熱活動が高まるからです」
「山によって全然違うんですね」
岡田「また、同じ火山の場合でも、火口の位置を変えやすい火山の場合には、噴火環境が異なるため、前兆現象の出方も異なることがあります」
「え、同じ火山でも色々あるなんて、びっくりです!」

単純に、火山性地震は危険、火山性微動は気にしなくていい、というような簡単に言える話ではなく、火山ごとの性質によって注目すべき点が変わってくるようです。

火山に興味を持つことが、備えの第一歩!

「これからニュースを見る目が変わりそうです。とはいえ自分に関係がある人は少なそうですが・・・」
岡田「意外とそうでもないですよ。火山の噴火というものは非常にまれなので、みなさんにはなじみが無いかもしれません。ですが、地球全体から考えると日本は火山が集中している場所なんです。ですから、いずれ一生のうちに火山の噴火に遭遇するということが十分考えられますよ」
「た、確かに。どうやって備えればいいですか?」
岡田「普段から関心を持って学ぶ機会を作ると良いですね。ジオパークなどに実際に足を運ぶことによって学んだり、専門家に解説を聞いたり、過去に噴火を経験した人に話を聞いたり。ある程度の知識を持っているか持っていないかで、実際に起こった時に動けるかが変わります」
「それならできそうです!」

噴火や災害に備えるというと、防災グッズの準備やハザードマップの確認を思い浮かべますが、まずは火山そのものに対して関心を持つことが、備えの第一歩なのだと感じました。「火山って難しそうだな、理解できなさそうだな」と勝手に苦手意識を持っていましたが、もっと気楽に現地に足を運んだりして、少しずつ火山と付き合っていこうと思いました。

取材・執筆/高 伽耶(札幌局カメラマン)

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