NHK札幌放送局

■千島海溝沿いの巨大地震とは?

NHK釧路放送局

2021年1月8日(金)午後1時00分 更新

「千島海溝沿いの巨大地震」とはどのようなものなのか、 北海道大学大学院の谷岡勇市郎教授にお話をうかがいました。

CG作成:白糠町

これは令和元年に白糠町が作成したCG・コンピューターグラフィックです。町の中心部が大きな津波に襲われています。想定しているのは「千島海溝沿いの巨大地震」です。

CG作成:厚岸町
また、厚岸町も令和2年に津波のCGを作成し公表しました。釧路・根室地方は内陸を含めて強い揺れに見舞われ、沿岸部は広い範囲で大きな津波に襲われると想定され、各地で備えが進められています。

写真:北海道大学大学院 谷岡勇市郎教授

○北海道の下には岩盤が沈み込み”ひずみが蓄積”

谷岡教授は、「千島海溝沿いの巨大地震」は東日本大震災を引き起こした巨大地震や南海トラフの巨大地震と同じタイプの地震だと言います。日本列島がある陸の岩盤の下には、東の海底からは太平洋プレートと呼ばれる岩盤、南の海底からはフィリピン海プレートと呼ばれる岩盤が沈み込んでいます。

画像:日本周辺にあるプレート 
出典:内閣府ホームページ

この陸の岩盤と海の岩盤の境目では年々ひずみがたまっていくため、それを解放するように「プレート間地震」と呼ばれるタイプの大きな地震が繰り返し発生しているということです。

画像:地震が起きる仕組み

このタイプの地震の特徴は、繰り返し発生すること、地震の規模が大きいこと、地震が起きると広い範囲に強い揺れと津波をもたらすことです。北海道の下にも道東沖の千島海溝から太平洋プレートが沈み込んでいて、ここで起きる巨大地震は「千島海溝沿いの巨大地震」と呼ばれています。

○過去繰り返し大きな地震

写真をご覧ください。

画像:北海道付近で津波を起こした地震

千島海溝沿いでは、この「プレート間地震」が有史以降も繰り返し起きてきました。昭和以降でみても、昭和27年の十勝沖地震、昭和48年の根室半島沖地震、平成15年の十勝沖地震などと多く発生しています。被害も大きく、このうち、昭和27年の十勝沖地震では、道によりますと、広尾町で1メートル80センチ、釧路市で90センチ、函館市で60センチの津波を観測したほか、揺れも帯広市、釧路市などで震度5、札幌市、小樽市、苫小牧市などで震度4を観測しました。道内では30人が亡くなり、けがをした人も516人に上りました。このうち釧路市や白糠町では倒壊した煙突に巻き込まれ9人が亡くなり、釧路市の炭鉱のズリ捨て場では崩壊が起きて住宅を巻き込み8人が亡くなりました。津波に巻き込まれ浜中町で3人、厚岸町で3人、釧路市で1人が犠牲になりました。

○千島海溝沿いの巨大地震 国の想定は

画像:国による千島海溝沿いの巨大地震の津波の想定 
出典:内閣府HP

この「千島海溝沿いの巨大地震」について、国の検討会は東日本大震災の教訓を踏まえた最大クラスの地震と津波の新想定を検討し、令和2年4月に発表しました。道東では厚岸町と浜中町で震度7、釧路市と根室市、標茶町、鶴居村、白糠町、別海町で震度6強の激しい揺れに見舞われるとしています。各地の津波の最大の高さは▽釧路沿岸では20.7m▽釧路町で27.3m▽浜中町で22.1m▽根室市で22m▽厚岸町で21.4m▽釧路市で20.7m▽白糠町で17.9m▽標津町で6.9m▽別海町で6.1m▽羅臼町で5mとなっています。広い範囲が浸水する想定で、各地の浸水の深さは厚岸町役場で8.1m、釧路市役所で5.9m、白糠町役場で6.3mなどとなっています。また、30センチほどの津波が到達する時間は、▽浜中町の沖合で10分▽釧路町の沖合で11分、▽釧路市の沖合で16分などと想定されています。

○“決して脅しではない”

 この大きな地震や津波の想定について、谷岡教授は「決して脅しでなく、現実に起こりうるものだ」と指摘しています。どういうことなのでしょうか?北海道の太平洋側では、有史以降繰り返し起きてきた「プレート間地震」よりもっと大きな地震が起きていたことが、研究でわかっているのです。それを明らかにしたのは地面の下に残されていた津波堆積物でした。

写真:津波堆積物調査 
出典:産業技術総合研究所

大きな津波が陸地を襲うと、津波が運んだ砂や泥などが湿地や沼などに残されていて、それを調べることで過去、どのくらいの規模の津波がどの程度の頻度で起きたのかを知ることができるのです。浜中町の霧多布湿原では、これまでの調査で海岸から内陸に4キロほども入った場所で津波堆積物が見つかりました。

画像:霧多布湿原の津波堆積物の分布 
出典:産業技術総合研究所HP

これほど内陸にまでさかのぼった津波はかなり大きかったことになります。さらに、こうした大津波のものとみられる痕跡は北海道の太平洋側の各地で見つかりました。根室市別当賀では、標高13mの高さの所に、釧路市星が浦でも海岸から1.5キロほどの場所に津波堆積物の可能性がある砂が見つかっています。

写真:浜中町霧多布湿原で見つかった津波堆積物 
出典:根室沖等の地震に関する調査研究成果報告書

さらに国の検討会は、こうした”巨大地震”が、津波堆積物の痕跡から17世紀と12世紀から13世紀の間に発生したとみられていて、発生の間隔は300年から400年であり、前回の地震からの経過年数を踏まえると、次の巨大地震の発生が切迫している状況にあると指摘しています。谷岡教授は、今回の国の検討会がまとめた津波の想定は、こうした津波堆積物をもとに計算した結果であり、絵空事ではないと指摘したうえで私たちの心構えとして次のように話しました。
「東日本大震災、熊本地震などでは、多くの人から『こんな地震が起きるとは思わなかった』という話が聞かれました。ただ今回紹介した千島海溝沿いの巨大地震は、これまでの研究で起こりうる巨大地震だということが分かってきています。北海道ではこうした経験したことのない巨大地震と津波が太平洋沿岸を襲うことがあり得ると思って防災・減災対策をしてください。もう知らなかったでは通用しません」

この巨大地震に私たちはどう備えればいいのでしょうか?次はその備えについてまとめました。

巨大地震にどう備える?

2021年1月8日


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