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WEBニュース特集 胆振東部地震から2年~想定外の土砂崩れ 要因は?

北海道WEBニュース特集

2020年9月3日(木)午後3時17分 更新

おととしの胆振東部地震で起きた土砂災害では、崩れるとは想定されていなかった場所でも被害が相次いでいました。なぜ各地で土砂災害が起きたのか、どのような場所が危険なのか、徐々に明らかになってきています。
 (胆振東部地震取材班・頼富重人)

緩い斜面でも土砂崩れ頻発

土砂災害で36人が犠牲になった厚真町では、砂防工学が専門で北海道大学広域複合災害研究センター長を務める山田孝教授が災害現場の調査を続けてきました。今回の土砂災害の特徴について、山田教授は本来、被害が起きないような緩い斜面でも土砂災害が発生した点だと話します。

案内してもらったのは厚真町内の土砂崩れの現場です。緩い斜面が高さ10メートル、幅40メートルほどにわたって大きく崩れていました。斜面の下の道路沿いには、崩れた土砂や木が残された状態になっていました。
危険性を調べるための国の基準を大きく下回る場所でも、崩れた場所がたくさんあったというのです。

「ここは傾斜が13度という非常に緩い斜面なのに崩れた場所だ。従来の危険区域の設定基準から見ると、普通は崩れないと判断します」

土砂災害の危険性がある場所は、現在の国の基準では斜面の角度が30度以上あることが1つの目安になっています。大雨による土砂災害はほとんどが30度以上の斜面で起きていたからです。
一方、30度未満の斜面は対象にはなっていません。

胆振東部地震ではこの国の基準に満たない緩い斜面が町の至る所で崩れていました。下の地図は厚真町が災害後に独自にまとめた土砂災害マップです。

色の濃い赤色の地域がハザードマップで土砂災害の危険性が指摘されていた場所、薄い朱色が実際に斜面が崩れた場所です。危険性が指摘されていない場所でも各地で災害が発生していました。
土砂に巻き込まれた富里地区の浄水場や吉野地区の住宅の一部もこうした場所だったのです。

厚真町の防災担当者
「行政職員として想定外という言葉は使いたくない。ただ、崩れるとは思わなかった場所も多く崩れていた。町はもちろん、北海道や国もこうした被害は予想していなかったのではないか」

町の防災担当者の言葉を聞いて、今回の災害も東日本大震災の津波のように“想定外”だったのだと、私は実感しました。 

想定外の土砂災害はなぜ起きた

緩い斜面が崩れた理由は何なのか?これまでは地震の前の大雨で地盤が緩んでいたことが原因ではないかとの見方もありました。しかし、山田さんたちは地面の下にある「土」が鍵を握っていたと見ています。

山田教授に見せてもらったのは斜面の下にある地層です。崖を機械で削って見えやすくしていました。
斜面の下1メートルほどの所に、周りとは明らかに色が違う地層がありました。火山の噴火によってたまった火山灰の地層で、この地域に広く降り積もっている土だと言います。

北海道大学広域複合災害研究センター長 山田孝教授
「この赤茶色の土が樽前山の噴火でたまった火山灰です。だいたい9000年前の噴火で降り積もった軽石が風化してできた地層です」

さらに山田さんたちが詳しく調べると、この土は風化して細かい粘土のようになっていて、粘りけがあることが分かりました。このため水を含みやすく、研究グループが4か月間、どの程度水分があるか調査したところ、天気には関係なく常にたくさんの水を含んでいることが分かってきたのです。

「こういう細かい土は保水性が高い。振動を与えられると急激にその強度が弱くなって動きやすくなる。滑りやすくなるというのが今回の土砂災害のポイントだと思う」

この「土」が地震の揺れに見舞われるとどのようになるのか、私たちは実験で見せてもらう事にしました。

火山灰地層の危険性

訪れたのは北海道大学の山田教授の研究室。この土を実際に2年前の地震の揺れで揺らしてみるという実験です。
普通の土と一緒に同じ条件で揺らしてみると、写真右側の常に湿っていた土は一気に液体状になってしまいました。

さらに、こうした土が斜面にあるとどうなるのか。山田教授に13度という緩い斜面で再現してもらうと、揺れに見舞われると同時に土がどんどん流れ下っていきました。

山田教授のグループでは火山の噴火で積もったこの土が揺れで液体状になったため、思わぬ場所で災害が発生したと考えています。

「昔の火山灰が斜面に積もっている所は全国各地にあり、そういうところで地震があれば、厚真町のような現象が起こり得るリスクはあると思う。そういう場所をきちんと予測して、危ない場所は住まないようにしたり、斜面を特別に補強したりするなど改善をしていかなければならない」

火山が多い日本では、こうした被害はほかの場所でも起こりうる。山田教授は今回明らかになったリスクにも目を向けていかなければならないと指摘しました。

想定外をなくすためには

地震による土砂災害は大雨によるものと比べて頻度が少なく、観測データもあまりありません。このため対策が不十分なのが現状です。
災害のたびに出てくる「想定外」という言葉。災害現場を取材するたびに、いかに未然に被害を防ぐのかが重要だと感じます。山田教授のグループでは今後も研究を続け、地震で崩れやすい斜面を事前に抽出する方法を確立したいとしています。
土砂災害はひとたび起きると一気に土が流れ下るため、避難は極めて難しいのが現状です。こうしたリスクがある場所をどう事前に見つけ、対策していくのか。行政だけでなく私たちも目を向けていかなければならない問題だと思います。

(釧路放送局・頼富重人 2020年9月2日放送)

特設ページ「復興へ 胆振東部地震」はこちら

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