NHK札幌放送局

シラカバの樹液を保存したい! 小学生の疑問に全力取材 シラベルカ#54

シラベルカ

2021年6月16日(水)午後7時38分 更新

皆さんの疑問に答える「シラベルカ」。今回は、北海道を代表する木、シラカバについてです。

「学校のグループ活動でシラカバ樹液を取ったのですが、1か月ほどたって腐ってきました。樹液を腐らせないために何をしたらいいか調べてほしいです」

投稿を寄せてくれたのは、室蘭市の小学6年生、田村瑠菜さん。

子どもの「科学する心」に応えたいと調べを進めると、さまざまなシラカバの世界が見えてきたんです。

シラカバ樹液は薬になる?

シラカバの樹液は、雪どけの時期、幹に穴をあけるとあふれ出してきます。
この時期の樹液は無色透明でほのかな甘みがあり、糖分やアミノ酸、ミネラルが豊富です。

このため、フィンランドやロシア、中国などでは、病気に効くとか、健康にいいといって飲む習慣があるほか、古来、アイヌの人たちも飲み物として利用していたんだそうです。

〝命の水〟は保存がきかない!

シラカバの樹液について聞くならこの人しかいない、と言われるほどの専門家が上川の美深町にいると聞き、さっそく訪ねました。

シラカバの樹液を採取して35年になる、柳生佳樹さんです。

柳生さんは1987年から樹液の採取を始め、国内で初めて樹液100%の飲料を販売しました。でも、そこに至る道のりは苦難の連続だったそうです。

そもそもシラカバの樹液は、芽吹きの季節に向けて大地から吸い上げた、いわば〝命の水〟。養分に富む一方で、時間がたつと菌が増殖しやすく、採取から数日で菌が一気に増えて腐ってしまいます。つまり、保存がきかないのです。

10年かかった保存法

なんとかしてシラカバ樹液を保存したい。柳生さんは、樹液の加熱時間を変えたり、冷凍したりと、保存法を編み出すのに10年の歳月を費やしました。

保存法の開発に成功した柳生さんは、毎年、4月下旬から2週間の間に、自らが所有する美深町のシラカバの林で大量の樹液を採取し、袋に密封して保存しています。

その樹液は、いま、飲料や化粧品などの商品の原料として利用されています。

でも、10年がかりで開発した方法ときくと難しそうです。そこで柳生さんに、家庭でもできる方法を教えてもらいました。

ポイント①湯せんで殺菌

殺菌と保存のために行うのは湯せん。熱に強い瓶を使い、瓶の口いっぱいに樹液を入れます。
そして樹液を入れた瓶を8割ほどの高さまでお湯に浸した状態で、1時間ほど湯せんにかけます。

ポイントは、樹液の温度を95度以上にすること。1時間たったらすぐにふたをして、できるだけ空気に触れないようにします。
しかし、作業はこれだけでは終わりません。

ポイント②湯せんは2回!

実は、シラカバ樹液には熱に強い菌が含まれていて、その菌への対処が、保存するための最も大切なポイントなんだそうです。

柳生さん
「白樺の樹液の中には、もともと芽胞菌(がほうきん)という、菌が入っています。この芽胞菌は、最初に熱をかけた段階では死なず、休眠から覚める状態になります。1回目の湯せんで熱をかけたあと、菌が休眠から覚めて発酵を始めてしまうのです。菌が活動し始める前にもう1回、熱にかけて、芽胞菌を死滅させるのがシラカバ樹液の保存で大事なところです。普通の食品は、1回熱をかければ殺菌されますが、シラカバ樹液は特殊です」

この芽胞菌を処理するため、1回目の湯せんを行ったあと、常温で2日間おき、2日経ったら、再びふたをあけて、1時間ほど湯せんにかけます。

柳生さんは、この方法で瓶に密封して保冷すれば、1年でも保存できると話していました。

今回の取材では、質問を寄せてくれた田村さんも、テレビ電話をつないで、柳生さんから直接、保存方法を教えてもらいました。

田村さん
「実際に映像で見ながら教えてもらい、いい経験になりました。ありがとうございました。学校で発表会があるので、下の学年にもこの方法を教えてあげたいと思います」

世界初!シラカバの幹からお酒?

柳生さんは樹液を使った商品を販売していますが、取材のなかで、シラカバの活用がさらに進んでいることも教えてくれました。
シラカバの幹を砕いて発酵させ、木から直接、お酒をつくる方法が確立されつつあるというのです。

いったいどういうこと?さっそく、この技術を開発している森林総合研究所の主任研究員、大塚祐一郎さんに取材しました。

大塚さんは、もともとお酒が好きで、木の幹にもアルコールのもととなる糖分が多く含まれていることに着目。木の糖分からお酒をつくれるのではないかと、技術開発に乗り出しました。

その技術というのは、シラカバの幹を1ミリ以下の木粉に加工したあと、天然水と混ぜて、水の中で特殊な粉砕装置を使って、さらに1000分の1ミリ以下にすり潰し、木の糖分を出すというものです。

酵素や酵母を加えるとアルコール発酵ができたということです。そして、発酵液をさらに蒸留させて、シラカバのお酒をつくることに成功しました。

木の幹から直接、お酒を作ったのは世界初ということで、この技術で特許も取っています。

シラカバから作ったお酒は、白ワインのようなフルーティーな香りが鼻から抜けて、とてもおいしく、ほかにはない味わいだということです。ただ、安全性の確認を行っているため、一般には試飲することは、まだできません。

実は、大塚さんはシラカバだけでなく、同じ技術を使って、サクラやミズナラなど、他の木の幹でもお酒をつくることに成功しています。

お酒としての安全性の確認が終われば、木のお酒の製造を希望する民間企業に対して、技術が提供される可能性があります。

大塚さん
「穀物からではなく、木の幹から直接つくるお酒は、これまでになく、他の酒類と差別化して、日本発の新商品としてブランド化できる可能性がある。木の幹に刻まれる年輪を思いながら、お酒をいただくことに、ロマンを感じる人もいると思う。可能性を感じている」

科学する心を大切に!

小学生の疑問から始まった今回の取材では、シラカバ樹液の保存方法にはじまり、想像の上を行く活用方法まで話が広がりました。

そして、田村さんの疑問を受け止めた柳生さんは、「いろんな疑問について、積極的に質問するのはすごく大事なこと」と目を細めていました。

「シラベルカ」では皆さんの疑問やお困りごとなどを募集しています。 

専用の投稿フォームに小さなことから大きなことまで、感じた疑問をお寄せください! 

シラベルカでは、北海道の自然について他にも取材しています。
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