記録的な大雪となった昨シーズン、札幌市では市民生活に大きな影響がでました。生活道路の除雪が追いつかず、除雪業者の人手不足も指摘されました。また、JRは長期間にわたって運休が続き混乱しました。この冬に向けての対策は進んでいるのか、現場を取材しました。(札幌放送局 三藤紫乃)
札幌 昨シーズンは大変でした…
記録的な大雪となった昨シーズン。札幌では24時間降雪量が観測史上最多になりました。
生活道路の除雪は追いつかず、雪捨て場は満杯に。
JRは長期間にわたって運休が続き、混乱しました。
道はデコボコで大渋滞。除雪は進まず、移動もままならないなど、札幌では市民生活が大きな影響を受けました。

この冬に向けての対策 ①効率的な除雪
この冬に向けての対策は進んでいるのか。
札幌市は、作業員が1人でも安全に作業できる除雪車両の導入を進めています。

札幌市は冬の間、除雪業者に車両を貸し出しています。
このうち一部の車体に新たな装置を搭載しました。
後方にはバックカメラを設置し、障害物に反応するセンサーも備えています。

車両の後ろに人が近づくと、映像と音で運転手に注意を促します。
これまでは運転手と安全確認を行う助手の2人が必要でしたが、1人でも操縦できるようになりました。

担い手不足で除雪作業員が減るなか、効率的に作業を進めようという対策です。
北日本重機 丸山大吾常務
「人の目だけで確認しきれないところも、安心してオペーレーター(運転手)が作業できるのではないか。今後人の確保がかなり厳しくなってくると思われるので、積極的に導入していきたい」

この冬に向けての対策 ②大量の雪を…
一方、昨シーズン、雪の終わりを待たず、ほとんどが満杯となったのが雪捨て場です。排雪の遅れにつながりました。
この冬、札幌市は新たな雪捨て場を5か所設けます。
市街地に近い豊平川の河川敷では雪捨て場となるスペースも広げました。

さらに対策も。
西区にある「雪処理施設」では雪捨て場だけでは処理しきれない雪を受け入れ、とかして処理しています。
施設があるのは下水処理場の敷地内で、処理した下水を熱源に雪をとかします。
増強工事を行い、1日あたりに処理できる雪の量はダンプトラックおよそ1000台分。これまでの1.5倍に増えました。

札幌市雪対策室事業課 井上実 課長
「昨年度は大変市民の皆様にご不便、ご迷惑をおかけしました。そのようなことにならないように今年度はしっかりと対応していきたい」

ただ、根本的な解決には至っていない課題もあります。
除雪した雪を運び出す「ダンプトラック」の不足です。
雪を運ぶダンプは市の持ち物ではなく、除雪事業を受注した建設業者が各地の運送会社などを通じて確保しているものです。
しかし、公共工事の減少などに伴ってダンプの台数は減少しています。
例年は雪が少ない道東方面なども昨シーズンは雪に見舞われたため、「ダンプ不足」に直面しました。

この冬に向けて札幌市では道や開発局、トラック協会に事前の協力要請を行っていますが、札幌以外も大雪となった場合には台数の確保が難しいケースが生じる可能性はあるとしています。
この冬に向けての対策 ③排雪作業の実施計画見直し
そこで、札幌市は排雪作業の実施計画についても見直しました。
この冬から、積雪や気象の状況、排雪作業の進捗などを3つの段階で評価し、「1」から「3」の「フェーズ」に分け、それぞれの段階に応じた対策を講じます。
最も緊急性が高い「フェーズ3」では、市が費用の全額を負担して生活道路の「緊急排雪」を実施することにしました。

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札幌市は、積雪の深さや排雪作業の進捗に応じて対策本部を設けるなど態勢強化策を盛り込んだ新たな地域防災計画をまとめています。
新たな計画では、積雪の深さが50センチに達すると見込まれる場合、各地域で効率的に除排雪が行えるよう除雪を行う業者との調整を行う「緊急除排雪実施本部」を設けます。
さらに、除排雪作業が遅れ、市民生活に影響が出る恐れがある場合には自衛隊への災害派遣の要請やごみ収集や通学への影響を抑えるための対策にあたる「雪害対策本部」を設けるとしています。
この冬に向けての対策 ④JRは長期間の運休回避を
一方で、昨シーズン、大混乱したJRも対策を進めます。
長期間、運休が続いた事態を受けて、大雪が想定される来年1月と2月は土曜日の夜から日曜日の朝にかけて一部の列車を計画的に運休して駅の除雪作業のための時間を確保することにしています。
さらに、千歳線には線路上の雪を脇に押しのける車両を1台、追加で配備しました。
また、降雪の状況を確認するため、札幌圏にあるあわせて20の駅に専用のカメラを設置して構内の積雪の状況をリアルタイムで確認できるようにするとしています。

左:線路上の雪を脇に押しのける車両 右:降雪状況確認のカメラ
市民生活に大きな影響が出た昨シーズン。
市やJRが進めるさまざまな対策で、この冬は昨シーズンのようにならないよう対応していってほしいと思います。
