新しい栽培方法にも果敢に挑戦。イチゴ栽培に力を入れている比布町では 「3重にした農業用ハウス」を用いて、寒さの厳しい冬の期間もイチゴ栽培を行っています。比布町のイチゴ栽培の歴史は古く、大正時代にまでさかのぼります。若手生産者が「イチゴの町」復活を目指して躍動する姿を紹介します。(2022年3月放送)


なぜイチゴ栽培なのか
イチゴって、元々は農家のおやつだったんですよ。それが、収穫のしやすさ、おいしさから商品化が進んでいった。米の生産がメインの農家が多かったんですが、そのかたわらイチゴ栽培をやる人が増えていったんです。
歴史をひもとくと、比布町でイチゴ栽培がはじまったのは大正10年(1921年)ごろと言われています。2021年は、ぴっぷイチゴ誕生100周年のメモリアルイヤーでした。

冬イチゴが誕生したきっかけは?
最近はイチゴ生産者が減少傾向にあるんです。比布町では、生産者の多かった2002年には18か所あった農園が現在は8か所にまで減少しています。理由は様々ですが ①燃油費の高騰 ②高齢化による後継者不足 ③連作障害(同じ土壌で継続して栽培した時に、生育が悪くなること) ④栽培に手作業が多く手間がかかる など、安定的に生産をすることの難しさがありました。
そんな危機感から、比布町と農協がプロジェクトチームを結成したんです。「イチゴの町再振興」に向けて話し合い、冬の農閑期を生かした新たな栽培方法についてのアイデアが出ました。それが「冬イチゴ」だったんです。

どうしてこの栽培方法を始めたんですか?
比布町と農協が「冬イチゴの栽培」をする人間を、公募していたのに手を挙げたのがきっかけですね。実証栽培として2019年に比布町の農業試験場でスタートしたんですが、設備投資については「産地パワーアップ事業強い農業づくり交付金」という補助金も活用させてもらいしました。はじめてのことだったのですべてが手探り状態でしたが、仲間たちと一緒にやっていたので不思議と不安はなかったです。
冬イチゴが軌道に乗り始めたのはいつ頃?
はじめは、収量が確保できなかった。「紅ほっぺ」という銘柄のイチゴ1,200キロの収穫を目指してやっていたんですが、1年目は180キロくらいしかとれなかったんです。原因はいくつかあって、まず水のPHです。地下水を使用しているんですが、ややアルカリ性だった。野菜の生育には、弱酸性の方が良いので、野菜にとっては過酷な環境だったんですね(笑) あと、暖房が効きすぎてしまって、ハウス内の温度が上がりすぎちゃった。これはファンを導入することで解決しました。

それらの問題に気づいたのが2年目の途中だったので、最終的に600キロくらいの収穫量に終わってしまった。3年目はまだ途中ですが、1100キロくらいの収穫量にはなるのではないかと予想しています。
イチゴって野菜なんですか?
あ、そうなんですよ。イチゴって木になるのではなく、苗からなるので、厳密には野菜に分類されるんです。スイカとかメロンとかも同じです。果物と同じように食べられていることから「果実的野菜」とも呼ばれています。
ハウスと露地栽培(屋外)との違いは?
卸す先が異なります。パック詰めされて店頭に並ぶものや、ケーキなどのお菓子に使うものは基本的にハウスで栽培されたものです。露地栽培のものはイチゴ狩りがメインで、市場には出さないです。
それはなぜなんですか?
いろいろ理由はあるのですが、イチゴが繊細で病気になりやすいというのがありますね。特に、雨が多いと病気のリスクが高まるので、露地栽培の場合は生産量が天候に左右されてしまいます。ハウスの場合は雨の影響を受けないので、生産量が安定するメリットがあります。ただ、露地で栽培したものは太陽の恵みをたっぷりと受けられるので、より濃厚な味わいになります。実は、イチゴ狩りに来る方の8割くらいがリピーターなんですよ。イチゴ狩りの楽しさもさることながら、美味しいからというのも再来の理由かもしれませんね。
ちなみに、生食用の出荷には甘みのはっきりした「けんたろう」「ゆきララ」「宝交」などを栽培していますが、製菓用には甘すぎない「赤い妖精」という品種を使い分けたりします。どの時期もイチゴを必要としてくれている方がいるので、やりがいを持って取り組んでいますよ。
【編集後記】
記念すべき「ふるさと自慢」第1回は比布町。とにかくおいしそうなイチゴが印象的でした。おいしいイチゴ栽培の背景には、新たな栽培方法に果敢に挑戦する地域の若手農家さんのフロンティアスピリットがありました。「できない理由」を語るのではなく、「どうやったらできるか」を考えて行動する姿、格好よかったです!
撮影に協力してくださった町役場職員のみなさまに改めてお礼申し上げます。
NHK旭川放送局:湊 英祐
「自治体からのナマ情報!」 道北オホーツクの自治体は全部で65。各自治体の広報担当者に、地域の自慢や旬の話題を自分たちが撮影した映像で伝えてもらいます。

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