NHK札幌放送局

中標津町の“野湯”で死亡事故 閉鎖危機

NHK釧路放送局

2022年1月27日(木)午後7時21分 更新

全国的なブームが到来している「秘湯めぐり」。なかでも山奥や海岸にある無人の温泉、“野湯”は開放感がたまらないと多くのマニアを魅了しています。しかし、危険とも隣り合わせ。北海道東部の“野湯”では死亡事故が起きてしまいました。(釧路局 生田真尋)

やけどで死亡

1月上旬、SNS上で秘湯マニア界隈に「悲報」が駆け巡りました。それは、北海道中標津町養老牛にある「からまつの湯」が立ち入り禁止になったというもの。森林管理署に問い合わせると、去年11月下旬、入浴に訪れた男性が湯船に誤って転落し、やけどで死亡する事故が起きていたことが分かりました。

さっそく現地に向かいました。釧路市から車で2時間。雪深い道を進み、脇道に300メートルほど入ると、「からまつの湯」がありました。入り口にはロープが張られ、立ち入り禁止の看板が立てられていました。

「からまつの湯」は、自然の景観をそのまま残した“野湯”として、ファンの間では人気があります。国有林の中にひっそりと佇み、石積みの露天風呂の目の前にはパウシベツ川が流れています。野趣あふれる抜群のロケーションです。

露天風呂は約30年前に地元の愛好会が設置し、愛好会のメンバーが自主的に清掃などを行っていました。人は常駐していませんが、湯船周辺はきれいに掃除され、男女別の脱衣所も整備されています。

湯船は熱湯だったか

この温泉では約80度の高温の源泉に、湧き水を混ぜて、適温に調節する仕組みです。しかし、事故当日は水を引く配管のバルブが何らかの原因で閉まっていたため、加水されず、湯船の中は熱湯だったとみられています。

愛好会の人によると、利用者の中には入浴後にバルブを閉めて帰ってしまう人が時々いるそうです。そうなると直後は「熱湯風呂」になっていることもしばしばだったとか。

亡くなった男性は地元の人で常連だったということです。こうした事情は知っていたはずですが、足を滑らせ転落したとみられています。男性は、自力で運転して町内の病院に駆け込みましたが、全身にやけどを負い、5日後に死亡しました。

閉鎖も検討

からまつの湯は、国有林を所管する林野庁の許可を得ずに設置されていました。愛好会による手入れは行われていたものの、明確な管理者は不在で、利用者の“自己責任”となっていました。今回、死亡事故という重大性から、林野庁は現場を立ち入り禁止にしました。安全を管理する団体が見つかるまでは再開は認めないとしています。

林野庁根釧東部森林管理署 松本康裕署長
「きちんと認めた施設ではないことは問題意識として持っていたが、一方で、地域の観光資源だったという状況や地元の方々にも利用されていたという状況があり、これまでは強い措置に踏み切れなかった。今後、きちんと維持管理できる団体が見つからなければ、閉鎖も検討せざるをえない。

こうした厳しい対応に愛好会からは戸惑いの声が聞かれました。
メンバーの1人は「われわれが自主的に管理することは暗黙の了解だと思っていた。地元の人や観光客に親しまれた温泉なので再開を目指したいが、求められるような管理体制を作ることは難しい」と話しています。

秘湯の宝庫 北海道

北海道は、温泉マニア憧れの地のひとつです。日本全国の温泉データを独自にとりまとめている「マウンテントラッド」によると、北海道に存在する野湯や秘湯の数は、全国最多のおよそ50に上ります。特に道東エリアは火山活動が活発で、ワイルドな野湯の宝庫です。

写真左:屈斜路湖畔の「コタンの湯」(弟子屈町)
写真右:知床半島の山中にある「熊の湯」(羅臼町)

上記の「コタンの湯」と「熊の湯」は、いずれも国有林内にありますが、町が林野庁から土地の貸与を受けた上で地元の人に管理を委託していて、管理者がはっきりしています。一方、「からまつの湯」のように誰が管理しているのか分からない温泉もあり、事故があったときの責任の所在が曖昧な点が課題と言えます。

危険と隣り合わせ

野湯は危険とも隣り合わせです。源泉によるやけど以外にも、硫化水素などの有毒ガスの噴出、クマの出没などさまざまなリスクを伴います。

全国200以上の秘湯を巡ったという「マウンテントラッド」の代表者によると、今回のようなやけどによる死亡事故はレアケースだといいます。しかし、多くの場所で源泉は高温で、いつ同様の事故が起きてもおかしくないと指摘します。

マウンテントラッド代表:
「野湯は危険な場所だらけです。私も今思えば危険だったと思う場所や、行って初めて危険だと気付いた温泉もありました。一歩足を滑らせれば高温の源泉の中に落ちてしまうような場所もあるし、硫化水素による事故は全国でも多発しています。厚労省のホームページでは、酸欠・硫化水素中毒の防止についての注意点が詳しくまとめられています。こうした情報も参考にしながら、『安全に帰ってくるまでが秘湯めぐり』だということを意識して楽しんでもらいたいです」。

おわりに

取材で1月中旬に「からまつの湯」を訪ねた際、立ち入り禁止になっているにも関わらず、敷地に入り、入浴している人の姿をみかけました。痛ましい事故が起き、存続か閉鎖か、関係者が悩んでいる最中にとられた行動に驚きとともに“自己責任”とは何か、考えさせられました。
「からまつの湯」の存続を求める声は根強くあります。今後どうなるか推移を取材していきます。

【この記事を書いたのは…】

生田真尋 釧路局記者(2020年入局)
熊本県出身 おすすめの温泉は弟子屈町「川湯温泉」。

2022年1月27日(木)

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