NHK札幌放送局

地方発ドリーム行き!みんなの第一歩が集まる、函館「Gスクエア」

ナナメの場

2021年12月9日(木)午前10時57分 更新

親や先生(タテ)でも友達(ヨコ)でもない“ナナメの関係”が生まれる温かな居場所、#ナナメの場。12月12日(日)放送の「ラジオ #ナナメの場」では、「あなたの町の“ナナメの場”」と題して、北海道で場づくりに取り組む人に話を聞きます。
今回お招きするのは、会場となる函館コミュニティプラザGスクエアの代表、岡本啓吾(おかもと・けいご)さん。ラジオ本番より一足先に、MCの水野莉穂さん(ずーちゃん)がGスクエアに足を運び、話をして感じたことをつづってくれました。 


北海道、函館。

ここは、日本中から、そして世界中から多くのひとが訪れる、北海道の有名な観光都市。
海があって、山もあって、観光地やご当地グルメなど、観光するには打ってつけの場所。
ですが、ほかの地域と何も変わらず、ここにも地元のひとがいて、彼らの暮らしがある。

この、観光地と呼ばれる函館で生まれ育ったひとりが、岡本啓吾さん。

岡本さんは、シエスタハコダテというビルの中で、Gスクエアというコミュニティプラザのセンター長をしています。ここでは、学生さんたちがプロジェクトを生み出したり、まちのあらゆる人たちの交差点となったり、だれかが夢を語れる場所として、函館で暮らす人々の居場所となっています。

高校を卒業後、教師になるために函館を飛び出した岡本さんが、なぜ函館へ戻って、ナナメの場をつくっているのか、今回はその想いに潜入してきました。

▲みんながそれぞれの時間を過ごす場所


Gスクエアというナナメの場

▲だれかが一歩踏み出すきっかけに、とスタッフさんが始めたイベントたち

Gスクエアに実際に足を運んでみると、まず目に飛び込んできたのは、スタッフさんたちの生きている表情でした。
ここでは、スタッフさんたちが考えたイベントやサークルなどもあり、歌や英語など、それぞれの好きなことや得意なことを、このGスクエアで表現しているのです。

また、「若者ドリームプロジェクト」という名前だけでわくわくしてしまうような活動もあります。
これは、道南に住む若者たちが、業界の最前線で活躍している方々のお話を聞き、新しいじぶんと出逢えたり、新しい発見がみつかったりするプロジェクト。みんなで歌をつくったり、YouTubeで発信してみたり、ローカルマガジンをつくったりするなど、Gスクエアに集まるひとの、わくわくすること・どきどきすることを掬いあげて、形にしていきます。

ここは、まちのひとの想いをかたちにする場所。そして、みんなが夢を想像できる場所なのです。そこで働くスタッフさんや、集まるみんなの表情が、それを物語ってくれます。

※「若者ドリームプロジェクト」についてはこちらの記事も
函館でみつけた!「ナナメの場」


函館にUターンしたセンター長の岡本さん

▲みんなの悩みをじぶんごととして考え、一緒に解決していく岡本さん

函館にあるナナメの場「Gスクエア」を運営しているのが岡本啓吾さん。
岡本さん自身も、18歳まで函館で暮らしていました。ですがその頃は、閉鎖的な息苦しさを感じ、早くこのまちを出ていきたかったそうです。

それでも、高校時代、自分がそのような思いを抱えて過ごしてきたので、いつかは地元に帰って、次の世代の子どもたちになにか影響を与えられるような大人になりたいな、という想いがありました。
そこで、教師を目指して東京にある日本体育大学に進学しました。ですが、4年間過ごすうちに、自分が持っている小さな物差しでしか測れない大人にはなりたくないと感じ始めたそうです。

そこで、自分の物差しを、世界を、もっと大きく広げるために、東京の広告代理店に就職しました。そこでは、一歩一歩足を進めて、企画を創り上げていくおもしろさを学びました。そんな日々を過ごしていたある日、函館に帰省しているタイミングで今の会社の社長に出逢ったそうです。
それが、岡本さんの人生の転機であり、そこから第二の函館ライフが始まりました。


函館でつくりたかったもの

▲まちのひとのおすすめスポットが繋がっていく函館マップ

函館に帰ってきてから、あのときじぶんが感じていた閉塞感は、ただ外と触れ合う機会がなかっただけだと実感したそうです。そこで、若者やまちの事業者さんが、一歩踏み出せる機会や、面白いひとに出逢える機会をつくろうと思いました。

実際には、大学生のアイディアで、まちのひとたちが笑顔になるようなあいさつ運動を始めたり、冬場に作業が出来なくなる農家さんたちと、寒い冬のみちで温かいスープを提供する「函館ファーマーズスープ」というイベントを始めたりしました。


つながる物語

▲函館の一次産業に関わる方々の1年を追った写真展

農家さんとのマルシェが函館に根付いてきたころ、Gスクエアの意見箱に一通の投書が入っていました。
そこで出逢ったのが、“絶滅寸前の漁師さん”でした。

日々命を懸けて闘う漁師さんは、年々漁獲量も減り、卸単価も減り、ガソリン代は高くなり、後継者不足により、絶滅寸前だということを教えてくれたそうです。
ですが漁師さんは、函館の有名な海鮮を海から運んできてくれる、函館には欠かせない存在。
そんな漁師さんたちを、地元の人が応援しなくてはいけない!という想いから、今度は漁師さんたちと「フィッシャーマンズマルシェ」を行いました。
様々な困難を乗り越えて開いたこのマルシェは、地元の方に応援されて、あっという間に完売してしまったそうです。

このように、誰かの想いと、それを応援してくれる人々の想いを繋いで、函館に住んでいるひとみんなを元気にすること、それを岡本さんは「すごい楽しくて!」と笑って話してくれました。


これからやりたいこと

▲地方にいても新しい発見に巡り合える場所

そんな岡本さんがこれから函館で実現したいことは、まだまだたくさんあるそうです。

ひとつは、ナナメの場としてもっといろんな立場や境遇のひとの受け皿となる仕組みをつくること。
場に馴染まない人を排除するのは簡単、ではそのひとたちも一緒に、函館の未来をもっと面白く繋いでいくにはどうしたらいいのか、そんなことをわくわく想像しているそうです。

また、道南サミットという活動も始まりました。函館だけではなくさらに広い枠で捉えて、道南の面白いひとたちが集まれば、どんなことでも実現していけるはず!という想いをもって、ナナメの関係で繋がるひとたちが同じ方向を向いてチームになっています。

ここは地方だから……と諦めていたすべてのひとへ、ぱっと世界が広がるきっかけを運んでくれるはずです。

ここは、学生だけでなく、農家さん、漁師さん、地域に住む人、観光に来た人、函館を共通言語にして集まる、みんながつくるナナメの場。
そして、いろいろな世界をみて、経験して、大きな物差しを持った岡本さんが、みんなの想いを受け止めてくれる場所。それが、Gスクエアなのです。

2021年12月9日


<筆者プロフィール>
水野莉穂(みずの・りほ/ずーちゃん)
ラジオ#ナナメの場 パーソナリティー。紅茶の喫茶店アグラクロック オーナー。2017年北海学園大学を卒業して半年後、生まれ育った恵庭市で喫茶店をオープン。"自分が好きなじぶんで居られるところ"を大切にした場づくりを通して、輪づくりをしている。今後は、田舎暮らしを通して、季節と暮らしながら遊ぶ場づくりを計画中。


岡本さんのお話は、生放送でさらに深掘りします。番組への投稿もお待ちしています!

ラジオ #ナナメの場
12月12日(日)午後2時~午後5時【NHK-FM・北海道ブロック】

NHKラジオ「らじる★らじる」の地域選択「札幌」で聞くことができます

#ナナメの場 ホームページはこちら



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