1月末に閉店したデパート「藤丸」の再建を担う新会社の社長、帯広や釧路でまちづくりに取り組む人、そして十勝の高校生のみなさんとともに、“まち”の未来をとことん語り合った「道東スペシャル 語ろう これからの私たちの“まち”」。そのトークの模様をたっぷりお届けします!第1弾は「藤丸編」です。
(初回放送:3月9日)
NHKプラスで3月28日(火)午前2時9分まで配信中!
<目次>
▶これからのまちの話をしよう
▶新「藤丸」 デパートの価値残しつつ経済合理性を
▶体験型も一案?まちとの連動も
▶十勝の食や贈答品…“本物”を集める
▶若い世代も行きたくなる場所に
これからのまちの話をしよう
赤松俊理アナ:
今日はこれからの私たちのまちについて、帯広市内中心部のイベントスペースから、みなさんと一緒に語り合って考えていきたいと思います。ゲストのみなさんをご紹介します。
まず、藤丸の再建を目指す新会社の社長、村松一樹さんです。村松さんはデパートの再建を担う立場ですけれど、まちとデパートは切り離せないものでしょうか?

新「藤丸」社長 村松一樹さん:
切り離せませんね。デパートはまちなかの重要なパートのひとつだと思っています。ですから必ずまちとの連動が必要で。デパートはお客様あっての事業展開ですので、まちのにぎわいが必要ですし、加えて「デパートがあるまち」というのは価値があるのかなと思っています。

赤松アナ:
今日はそんなデパートのあり方、まちのあり方を一緒に考えていければと思います。
そして今日は高校生のみなさんにも参加頂いています。十勝のまちの未来を考えるうえでは若い世代の意見や取り組みがカギになるということで、今日は十勝の高校生団体CAN-PASS代表の松本優さんにお越し頂きました。
松本さん、まちはどうあってほしいと、高校生の立場として思いますか?
高校生団体代表 松本優さん:
やはり駅前やまちなかというのは、私たち高校生が日常的に通学や買い物で使う場所なので、もっとにぎやかになってほしいと思いますし、今日は私たち高校生の目線から、リアルな意見を言っていけたらいいなと思います。

赤松アナ:
今日は村松さんもいらっしゃいますし、ぜひ率直な意見をぶつけて頂けたらと思います。よろしくお願いします。
そして、帯広からは、帯広中心部でホテルやカフェバーを経営されている坂口琴美さんです。坂口さんは十勝出身ですが、いったん東京へ出られて、Uターンしてホテルを開業したということですが、帯広のまちのポテンシャルはどう感じられますか?
帯広 ホテル経営 坂口琴美さん:
外に出ていた時間が長いので、良さというのは外に出てわかるなと思ったのと、やはり十勝らしい壮大な食の大地だったり、車で15分走れば壮大な日高山脈や大雪山系を見られることだったり、モール温泉だったり馬文化だったり、十勝にしかない素材ってたくさんあるなと思って、それを誇れるような人々を作っていきたいですし、十勝の素材をいかしたまちづくりをしたいなと思っています。

赤松アナ:
今日はそんなアイデアを含めてお話しできればと思います。
そして釧路からもお招きしています。釧路の文具店社長の佐藤公一郎さんです。佐藤さんは北大通の老舗文具店の3代目ということなんですが、今回釧路と帯広の共通点などあると思いますが、まちを元気にするために、どんなことが考えられますか?
釧路 文具店経営 佐藤公一郎さん:
釧路の百貨店は17年も前に閉店してしまいました。残念ながら帯広も1月に藤丸さんが閉店して同じような状況になってしまったということですけれど、やはり今までと同じような商店街や百貨店ではなかなかこれから難しいと思うので、商店街や百貨店がより良い形になるために、釧路と帯広で知恵を出し合いながら、道東の中心都市として盛り上げていく、そんな意見交換をしながら、今日がいい始まりの日になるといいなと思います。

赤松アナ:
連携ですとか道東全体のことも一緒に考えていければと思います。
そしてNHK解説委員室から佐藤庸介解説委員です。佐藤解説委員は食料や農林水産問題、そして地域経済が専門ということですが、今日はどんな議論を期待しますか?
佐藤庸介 解説委員:
17年前、ちょうど釧路でデパートが閉店になるときに現場で取材に担当していて、その後帯広にもいまして釧路と帯広の経済関係の取材を担当していたこともありますので、そうした見地から議論に加われればと思っています。

赤松アナ:
よろしくお願いします。そして会場にはほかの高校生にもお越し頂いています。帯広柏葉高校新聞局のお二人、星槎国際高校のお二人、そしてCAN-PASSの森さんです。みなさんよろしくお願いします。
みなさんが手に持っている「言いたい!」という札を挙げるといつでも意見を言うことができます。試しにやってみましょうか。では平田さん!せっかくなので村松さんに言いたいことないですか?

星槎国際高校 平田雄大さん:
ここで話せることはすべて話してほしいです。

村松一樹さん:
ここで話せることを話します(笑)。
赤松アナ:
ありがとうございます、ぜひいろいろな意見や感想を頂けたらと思います。
視聴者のみなさんからもメッセージを募集しています。さっそくご紹介します。
60歳男性・帯広市
市街中心部に日中だけ開放している大きな屋内型公園のような施設があるとうれしいです
31歳男性・十勝地方
子どもたちに挑戦や出会いの機会がたくさん与えられるまちになってほしい
赤松アナ:
松本さん、挑戦できるまち、どうでしょう?
高校生団体 松本優さん:
私たちとしても、やはり新しいことをやってみたいとなったときには大人の力も必要になったりしますし、なにかやってみたいというのを言える環境があるのはすごく大事だと思うので、チャレンジできる場は必要だと思います。
赤松アナ:
そうですね、それをどう実現できるかということを今日は話していければいいですね。
新「藤丸」 デパートの価値残しつつ経済合理性を
赤松アナ:
最初のテーマは「どうなる?どうする?新藤丸」ということで、みなさん関心が高いと思うんですが、まずは藤丸の再建を担っていく村松さん、今後の藤丸のビジョン、大枠について教えて頂けますか?
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
ひとことで言うと、経済合理性です。
藤丸は残念ながら今年1月、122年の歴史にいったん幕を閉じました。藤本社長以下、従業員のみなさん大変頑張りました。ただ、この百貨店ビジネスがなかなか収益性を生まなくなってきています。一方で、122年続いた、これは百貨店ならではの残すべき価値。デパ地下だったり、藤丸の包装紙に包まれた贈答品は、やっぱり価値がある。従業員のみなさんが頑張った、そしてその価値があったので122年続いた、ただ残念ながら、経済合理性がここに来て成り立たなくなった。コロナ禍が大きなインパクトでもありました。
我々民間企業が、百貨店、「藤丸」という名前を継続させるためには、経済合理性を成り立たせないといけない。これがまずは第一にやらなきゃいけない大前提です。そして、残すべき百貨店の価値を取捨選択して、これから新しいお客様を創造する。新しいお客様を創造するようなコンテンツを入れていく。今日は高校生のみなさんもいますので、そういうお話をぜひ伺いたいなと思っています。

赤松アナ:
まず経済合理性が大前提ということですが、デパートの経営悪化は全国的にも課題となっていまして、一度閉店したものの再建したデパートが神奈川県にあります。新たなデパートのヒントとして、見ていきたいと思います。
デパート再建のカギは?詳しくはこちら↓
▶再開したデパート 再生の戦略を徹底取材
体験型も一案?まちとの連動も
赤松アナ:
eスポーツやダーツなどありましたが、松本さん、高校生として今のVTRをどのように見ましたか?
高校生団体代表 松本優さん:
ダーツとかeスポーツとかカラオケとか、すごく面白そうだなと思いましたし、そこに行けば何かしらやりたいことがあるというのはいいなと思って、友達と行きたいなと思いました。
赤松アナ:
率直に行きたくなりますよね。ほかの高校生にも聞いてみましょう。星槎国際高校の石澤くんは、eスポーツについて詳しいんだよね。どうでした?
星槎国際高校 石澤春汰さん:
こういった、広々とeスポーツができる場所があるというのは楽しくていいなと思いました。僕は十勝でeスポーツのゲーム大会を開かせてもらったんですが、そういったゲーム大会の運営とかができそうな場所で、そんな場があったらいいなと思いました。

赤松アナ:
村松さんどうでしょう?
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
まちなかにはぜひ、若い人たち、高校生が放課後や休みの日に仲間と歩いていただきたい、集まって頂きたいと思います。それを百貨店で設けるのか、またはまちとの連動ですので、ほかのところにその役割を担って頂くのか。ただ、まちなかにはそういう要素が必ず必要だなと思います。
赤松アナ:
ほかの高校生にも聞いてみようかな。帯広柏葉高校の村中くん、どうですか?
帯広柏葉高校新聞局 村中迪唯さん:
体験型施設があるというのは僕も魅力的だなと思います。まちなかに体験できるスペースが少ないという印象があって。例えばボーリング施設とか、さっきのようにダーツとかカラオケができるスペースがあれば、すごく行きたいなと思います。

十勝の食や贈答品…“本物”を集める
赤松アナ:
村松さん、高校生から行きたくなる場とか体験型とかいろんなキーワードが出てきたんですけれど、今の段階で言える範囲でかまいませんが、新しい藤丸の構想は具体的にどういったものを考えているんでしょうか?
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
ひとつ大きなテーマは、十勝の食なんですね。先ほどの「さいか屋」では催事でしたが、百貨店の顔である1階に何を持ってくるのか。ひとつ有力な候補は「食」ですね。ちょっと高いけど質が良くて本物の、十勝や全国、世界の食材。それが手に入って、食べられるグルメストリートみたいなものがあったりとか。そういうことをひとつ有力な候補として持っています。
別のフロアが、百貨店として残すべき価値。贈答品のコーナーがあったり、婦人服や紳士服のセレクトショップがあったり、子ども服やキッチン用品のショップがあったりというようなフロアを、割とコンパクトに、本物を集めたようなフロアが必要になる。いかに効率よくコンパクトに本物を集めるか。それが経済合理性につながっていく。
そこに、若い人たちが求めるようなものを、別のフロアに構えるのか。ただまちなかには空き店舗もありますので、そういったところと連動して、高校生のみなさんが闊歩するような、青春を謳歌するようなまちづくりを、全体で。藤丸だけじゃなくてまちと連動して役割分担もしながら、点と点を結んで線にして面にして、まち全体でまちなかを作っていく。そのひとつの大きなパーツが百貨店かなと。
なので、とにかく我々は、藤丸の再開を何とかしたい。再開して継続させていくためには経済合理性が必要。そのためには必要なコンテンツをいかに効率よくまとめるか。まちとも連動して、ということです。

赤松アナ:
その中で、建て替えも検討に入っていくと?
村松一樹さん:
そうですね。残念ながら今の建物は耐震対応しなければいけません。耐震対応をするか、建て替えをするか。今確認していますが相当老朽化していますので、耐震化には大きなお金がかかることになりますので、建て替えも視野に入れながら、いろんな関係するみなさんと相談させて頂いているところです。
3か月前に新しい社長に就任したんですけれど、多くの方からお声を頂くんですが、建て替えをするべきという声は思ったより大きいですね。
赤松アナ:
なるほど。そして、全国のほかの事例も参考になると思うんですが、佐藤解説委員。
佐藤庸介解説委員:
今、村松さんから十勝の食がキーワードというお話がありました。全国の事例を見ても、同じようなポイントを持っていて、地域密着という観点から展開している地方のデパートが目立つと思います。
たとえば、高知大丸。こちらでは去年改装してフードコートを設けて、地場の食材を使った飲食物を出すフロアを設けたりしています。
あるいは、宮城県仙台市の藤崎と、埼玉県の丸広百貨店。こちらでは、丸広百貨店では宮城の産品を、藤崎では埼玉の産品を売るというフェアを去年から今年にかけて行い、相互に連携して行ったというのがあります。
専門家は、地方のデパートが復活する道として、こういったそれぞれのデパートの人たちの目利き能力をいかした「地域商社」の機能を打ち出す、というポイントを言っています。

若い世代も行きたくなる場所に
赤松アナ:
そして藤丸について、帯広柏葉高校新聞局のみなさんも取材して特集を組んだということで、ちょっと教えて頂けますか?
帯広柏葉高校新聞局 村中迪唯さん:
今回、まちのシンボルである藤丸が閉店するということで、藤丸の果たしてきた役割とか、高校生に何ができるのかということを様々な方に取材させて頂きました。その中で、2009年にも同じような特集を行っていて、2009年と今回との比較をしたアンケートも行ったりしました。

赤松アナ:
アンケート、どんな結果になりましたか?
帯広柏葉高校新聞局 村中迪唯さん:
月に1回程度行くという人の割合が半分くらいになって、その代わりに、年に0~1回という人の割合が増えたという感じですね。

赤松アナ:
行く人が減っているという結果が出たわけですね。どうしてだと思いますか?
帯広柏葉高校新聞局 村中迪唯さん:
高校生にとって藤丸は行きづらいからだと思います。敷居が高い、値段が高いというのもありますし、高校生向けの商品というより、年齢層がいくつか上の世代向けの商品が多く売られているという印象があるので。
帯広柏葉高校新聞局 平山陽香さん:
やっぱり年代が高めの商品が多いので、高校生が買いやすい、流行っているものとか、帯広にない店舗が入っていたりとか、飲食したりおしゃべりしたりしながら、勉強や休憩ができるスペースがあったら嬉しいなと思います。

赤松アナ:
お隣の森さんは、どんなものがあったら行きたくなるかな?
高校生団体メンバー 森陽香さん:
勉強できるスペースもなんですけど、学園祭とかのミーティングができるスペースがほしくて。図書館とかだと勉強するためとか本を読むためだから、静かな雰囲気があってあまりしゃべることができないというのがあるので、学生が集まってボランティアや学園祭のミーティングができるスペースがあったらいいなと思いました。

赤松アナ:
松本さんは何があれば行きたくなる?
高校生団体代表 松本優さん:
もともと私自身も、藤丸は特別なときに行く場所というイメージが大きくて。もちろん売っている商品に高価なものが多いから、特別な人への誕生日プレゼントを買いに行くとか、家族で何か必要なものがあるときに行くとか、もともとそういう目的で藤丸に行くことが多かったんですけど。なのでそういう面は失われてほしくない気持ちがひとつと。
あとは勉強スペースだったり気軽に行けるスペースも、藤丸の中のどこかに作って頂けると、そのついでにちょっと休憩したりという風にもなって、なじみやすくはなるかなと思います。
赤松アナ:
なるほど。村松さんどうですか、高校生たちがいろんなキーワードやアイデアを出してくれて。ずっと考えるようなお顔で聞かれていましたが、率直にどうでしょう?
新「藤丸」社長 村松一樹さん:
本当に貴重な意見なので、これをどう落とし込むかをずっと考えていました。先ほど経済合理性という話を申し上げたんですけど、勉強するスペースを設けると、正直そこは収益を生まない空間なので。ただ、そういうニーズがあって、若い世代の集客ができるということであれば、そういうことも必要なのかなと。じゃあそれをどう成り立たせるのかなと。
行政の方々とも、もともと藤丸には市民活動交流センターがありましたので、それを復活させて頂くとか、それをもっと高校生のみなさんも気軽に来られて、それこそ勉強しながら、しゃべりながら、ちょっとお茶を飲みながらお互いを高めあう、そういう空間ができるといいなと。なんとか経済合理性を成り立たせるか、行政と連携するか、なにかの形で実現したいなという思いにさせられました。

赤松アナ:
いろんなアイデア、実際に生の声が聴けたので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
ここまで、新しい藤丸について考えてきました。
このあとは、いよいよ「まち」全体のトークへ!いろんなアイデアやキーワードが飛び出しました。
▶まちのにぎわい、どうつくる?「まちづくり編」
▶高校生と一緒にできることは?「若者編」