6月2日放送の北海道まるごとラジオは、神田山陽のうんちく問答!
テーマは『天ぷら』でした。

ご一緒いただくのは、もちろんこの方。講談師・神田山陽さん。
そして、進行は、白崎義彦アナウンサーとキャスターの西野愛由(私)でした。

みなさんは、どんな天ぷらがお好きですか?
白崎アナは、根菜類。特に、かぼちゃ。
私(西野)は、定番のエビ!
山陽さんは…?
山)1つってなかなか決められないですけどね。
もしもしこれ最後に1つだけだとしたら「そばがき」がいいですかね。
西)そばがきって?
山)昔、そばは細く切る文化がなかったんでこねて食べてた。
そば粉で作ったおだんごみたいなものがお湯の中に入って、
それがもともとのそばだったそうなんです。
うまくこう練ったやつを天ぷらにするっていうのを
出してくれる、そば屋さんがあるんですよ。
食べた途端にそばの香りが新そばを食べた時のように“ふぁんっ!”と、
やってくる。お塩ちょっちょっと振って、
きゅっと冷たいお酒とね。
白)確かに天ぷらってお酒に合いますよね。
山陽さんが出会った天ぷらは他にも!
せんべい、ホルモン、新ショウガ、半熟卵、温泉卵、もずくなど…
地域によって、いろいろなものがあるんですね…!

ここからは、織田作之助の作品「夫婦善哉」から 天ぷら話が展開します。
山陽さんが中学の頃から敬愛し、
何度読んだかわからないぐらいということですが…?
白)天ぷらって高級なイメージを持たれる方多いと思うんですけど、
一銭天ぷらっていうんですね。
山)昔は江戸時代はすし、うなぎ、そば、天ぷらなんて立ち食いだったんですからね。 天ぷら油が安くなって生産できるようになったころから、一般の庶民が食べられるようになって…。今だから高級感ありすぎですよね。このころは、安いものの代表のように言われてたもんだと思うんですよ。
変わった天ぷらということで、長野県のリスナーさんからメッセージが届きました。
『 信州松本では真っ白なニセアカシアの花が咲いています。 咲き始めを天ぷらにして食べます』
白)お花を天ぷらにするんですね。
山)山菜を食べる会でニセアカシアいただいたことあります。私。
白)どんな感じです?
山)花だと言われなければ分からない味覚だったんですが、私の問題かもしれないけど。おいしいもんですよ。お花を食べてるっていう高揚感がありますね。 日本中に花の天ぷら、ほかにも眠っているかもしれませんね。

天ぷらの話を聞いていたら、食べたくなっちゃった!!という方、いませんか?
おいしく揚げるには、いくつかポイントがあります。
神田さんの知人で、北海道が誇る日本料理の達人、姉崎貴史さんに聞きました!
① 広い鍋に深さ10センチくらいの油をたっぷり使いましょう。
食材を入れた時に油の温度が下がらないようにするため!
② 衣は必ず冷やす。冷やさないと、衣に粘りが出てしまいます。
③ 衣は混ぜすぎない。
少しぐらいダマが残っていてもいい、という感覚でサクサク混ぜましょう。
④ 衣に米粉を混ぜる!割合は小麦粉8に対して米粉は2!素材だけでなく、粉のうまみもいかしつつ、カラッと揚がるとのこと。

地域によっては、さつま揚げのことを天ぷらと呼ぶケースもありますよね。
北海道・網走のかまぼこも、そのひとつ。
網走で創業66年の老舗かまぼこ店・大谷朝彦さん(以下:大)と
電話をつないでお送りしました。
山)これは全国の物だと信じて疑わなかったものが、実は網走だけのものだっていう。長天。こういう呼び方でよろしいですか、大谷さん。
大)はいそうです、長天です。
白)よく見るさつま揚げのようなものと、また違うんですか。
大)形をイメージしていただくと、千円札とほぼ同じ大きさでして。
縦がだいたい7センチ。横が15センチくらい。厚さが5ミリしかないんです。
山)タヌキに化かされた時のお札みたいな感じですね。
白)揚げているからキツネかと思いました(笑)
山)ああ、失礼しました(笑)
白)いやいやいや、それは地元でやはり北海道産の魚を使って作ってらっしゃるんですか?
大)北海道、うちでは余市町から仕入れたすり身で製造しております。
山)どんな魚が多いですか?
大)うちは100%スケソウダラですね。
白)作り方のコツ、企業秘密の部分は置いといて、
ある程度教えていただけますか?
大)一番難しい部分は水分なんですけど、冷凍すり身の状態によって水分がパサついているときもありますし、粘っこいという時もありますし…。あとは、気温や建物内の湿度にもよりますので、それはもう何回も手で確認しながら。
白)素材の状態を確認しながら、加減をしていくわけですね。
西)どんな食べ方を?
大)あぶってそのまま、というのももちろんなんですけど、薬味ですね。わさびじょうゆ、生姜醤油、山わさび。一味マヨネーズとか。あと、おでんとかにも入れたり。私が小さい頃はカレーライスにお肉の代わりにかまぼこが刻んで入っていたんです。今でも長天をカレーに入れたいんだっていうお客さんもいらっしゃいますね。
白)長年にわたって愛されているんですね。

山)北大路魯山人という食の権化のような方がいらっしゃいますが、
チラッと読んだものの中で、天ぷら茶漬けの話をしてるんですよ。
揚げたての天ぷらではなく、きのう揚げた天ぷらをおいしく食べる方法。
温かいごはんに、きのうの天ぷらを乗せて、濃いお茶をチャッとかけて食べると。
白)魯山人の時代っていうと今のように、日を置いたからレンジで温め直せとかという時代ではないですしね。食べ残したものをうまく活用していくための術でもあるんでしょうね。
山)炭火でちょっとあぶれていうことも言っているんですけれども、天ぷらって何か急に庶民的になったなと。
白)文化人として名をはせた方でも、庶民としての一面が出て来るのが、食の部分なんですよね。
天ぷらつながりでもうひとつ。向田邦子の作品に話が広がりました。
山)東京大空襲の翌日、すごい何か空襲が来たら、
もうこれで一家の団らんはきょうが最後かもしれないっていうことで、
お父さんが白米を炊いて、とっておきのうどん粉と、とっておきのごま油で、
その日、家族でおなかいっぱい天ぷらを食べた。翌日も私たちは生きていられるのだろうか。運良く命があったので、きのう残った精進揚げをそのまま煮物にしたっていうんですよ。向田邦子ファンの中では、精進揚げの煮物っていうのが食べてみたいレシピの中の1つなんですよ。いろんなおいしい食べ物のことを書いているんですけど、やっぱり魯山人と同じで、おいしいものの2次利用というか。どちらかというと記憶ですよね。 思い出ですよね。
白)そういう意味では何かこう高い次元にあるような食べ物の1つなのかもしれないなっていう感じがしますね。
こんなメッセージも届きました。
「お正月におばあちゃんが作った煮しめを天ぷらにしたのが大好きです。
にんじん。外はカリッ中はトロッと。しいたけ。噛むとじわっと絶品です」
白)何か日常の生活なんだけど一手間加えることで、
別のものに生まれ変わったり、先祖代々のものが受け継がれてきたり。
そういった広がり。皆さん持っているんですね。
天ぷらの話は尽きませんね。これからの時代に、どんな天ぷらが出てくるか、想像してみると面白いですね。
北海道まるごとラジオの記事はほかにも・・・・