地球規模で進行している温暖化。北海道南部でも急激な気温の上昇が原因とみられる農作物への悪影響が指摘されています。一方、気温の上昇を背景に、これまで栽培に適さないとされてきた農作物づくりが進んでいます。その1つがサツマイモです。新たな挑戦を取材しました。

道南でも温暖化が進行、農作物にも悪影響
道南の平均気温は上昇の一途をたどっています。函館地方気象台のデータをもとに函館の平均気温の変化を調べてみると、1970年代の10年間から2010年代の10年間で平均気温は約1.2℃上昇しました。地球全体では20世紀の100年間で平均気温は約0.6℃上昇しており、道南における平均気温の上昇幅が大きいといえます。

この急激な気候変動によって、農作物の生育不良や品質の低下、これまであまり見られなかった病気の発生などさまざまな問題が指摘されています。

気候変動について、道農政事務所函館地域拠点は去年からことしにかけて渡島地方と桧山地方の米農家を対象にアンケートを行いました。その結果、約47パーセントの人が「対策を講じる必要がある」と回答しました。農業の現場でも温暖化をはじめとした気候変動への懸念が高まっています。

気温上昇を生かして、サツマイモ栽培に挑戦
そんな中、JA函館市亀田では気温の上昇を生かして、これまで道南の冷涼な気候には適さないとされてきた農作物の試験栽培を行っています。それがサツマイモです。サツマイモの栽培には夏の気温上昇が必要で、霜や寒さですぐに傷んでしまいます。そのため、これまで主要な産地は九州など比較的温暖な地域でした。

しかし、近年の気温上昇によって道南でもサツマイモを栽培しやすい環境になってきました。そこでJA函館市亀田の青年部が中心となって2017年から試験栽培を開始。毎年3トンほどのサツマイモが収穫され、菓子などに使われるペースト加工用として出荷されています。

収穫の様子を取材!作業体験で大苦戦!?
ところで、皆さんはサツマイモの収穫がどのように行われるかご存じですか?北海道ではあまりなじみのないサツマイモ栽培。10月中旬に行われた収穫の様子を取材し、作業を体験させてもらいました。

まずは土の上に伸びたつるの除去から始まります。手作業で大量のつるを取り除いていきます。

続いて、雑草対策や畑の温度を保つために張られたシートを取り除きます。専用の器具を使って巻き取っていく作業を体験させてもらいましたが、これが辛い!腕が疲れて収穫前にクタクタになってしまいました。

その後、トラクターを使ってサツマイモを掘り起こして一つ一つ収穫していきます。私の顔より大きく育ったものもあって、ずっしりと実の詰まったサツマイモがたくさん収穫されました。

試験栽培の中心人物にインタビュー!サツマイモづくりに込めた思いとは
試験栽培を中心となって行っているのはJA函館市亀田で青年部長を務める山田拓也さんです。栽培は山田さんの畑の一部を使って行われています。この日は作業の合間を縫って山田さんがインタビューに答えてくれました。10年以上道南で農業に携わってきた山田さん、気温の上昇を肌で感じていると言います。

山田さん「高温、多湿になってきているというのは感じます」
栽培が始まる春から初夏にかけては、サツマイモがすぐに傷んでしまう遅霜のリスクもありそうですが…。
山田さん「少なくとも青年部で手掛けている5年のうちでは霜による被害はないですね。例年、同じように品質は安定して取れていると思います」

気温の上昇とともにサツマイモ栽培への手ごたえを感じている山田さん。今後の目標を教えてもらいました。
山田さん「試験栽培をきっかけに、北海道でも本州の主要産地と同じようにサツマイモが作れるということを広く普及して、どんどん栽培を広げていってほしいなと思っています」
道南の平均気温はこの先も上昇することが予想されています。これまで栽培されてきた農作物を守るための対策はいっそう重要な課題になってきます。その上で、道南の魅力をさらに高める新たな農作物にも期待したいと思います。
丸山将 予報士の記事はこちらにも
丸山予報士が気象台の予報官に出会ったらこうなった 創立150周年の函館地方気象台へ | NHK北海道
『北限のブナ林』に異変 気候変動の影響!? | NHK北海道