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海外から注目 富良野で高まる投資熱 web

ほっとニュース北海道

2020年12月7日(月)午後5時49分 更新

夏のラベンダー畑が有名な道内有数の観光地、富良野市。今、海外の投資家の間で、急速に関心が高まっています。いったい、何が起きているのでしょうか。 

”未開拓の投資先”物件が次々売却

こちらは、北の峰地区にことし完成した、高級コンドミニアムの1室から撮影した景色です。絶好の立地条件で、スキー場からは徒歩0分です。

コンドミニアムの1戸あたりの分譲価格は、高いもので2億円余り。
香港の企業が開発を手がけ、売りに出された33戸すべてが海外の投資家によって完売しました。オーナーの意向で、原則ホテルとして貸し出されていて、今月から営業が始まりました。オーナーは、ホテルとしての利益を得ることが出来るとともに、価格が上昇したら、転売して利益を得ることも出来ます。

開発を手がけた香港の企業の責任者、トニー・フレミング氏は、コンドミニアムの建設計画を実現するため、数年前から、土地の取得などに取り組んできました。今、海外の投資家の間で、富良野への関心が急速に高まっていると指摘しています。

香港のディベロッパー トニー・フレミング氏
「富良野で開発することができてとても満足しています。日本の文化や自然が残っていることが、富良野の大きな魅力です」

近年だけで40軒売却

富良野市で開発が進む北の峰地区では、4年連続で地価が上昇。外資系企業による建設ラッシュが続いています。

北の峰地区で、開発が進むエリアの地図です。赤で囲った建物は売却済みの物件、青が販売中の物件です。

近年だけで、およそ40軒の土地や建物が海外の投資家に売却されていて、投資熱が高まっていることを強く印象づけています。

四季を通じた観光 安い価格がメリット

では、なぜ、富良野市が海外の投資の人気を集めているのでしょうか。

理由の1つが、年間を通じて観光が楽しめるというメリットです。
富良野は、夏はラベンダー畑、冬は良質なパウダースノーが楽しめるスキー場と、年間を通じた観光資源があることから、観光客の安定的な確保が期待できます。

また、物件の価格が安いことも大きな理由です。
例えばニセコ地区は、海外資本の物件が多いことで知られていますが、建物の1戸あたりの価格が、10億円を超えるものもあります。

これに対して富良野市では、物件の販売価格は、ニセコ地区の5分の1から半分程度とされていて、投資家にとってはより手を出しやすい条件となっています。

投資の現場は…

富良野市にある不動産仲介業者「オールアバウトフラノ」は、おととしから、海外の投資家向けに土地や建物取引の仲介を始め、数十件を成立させました。

オールアバウトフラノ 池野正樹 社長
「これからも順調に不動産開発の計画があり、そのことが投資家の背中を押している。旭川市や美瑛町などほかの観光地へのアクセスがいいことも利点になっています」

現在は新型コロナウイルスの影響で入国審査が厳しくなり、海外から富良野市に来て、視察するのは難しい状況ですが、問い合わせは絶えないということです。

海外投資家に聞いてみた

そして私たちは、タイの投資家がことし購入した物件を取材しました。こちらがその物件です。

12月から、オーナーの不在時にはホテルとして貸し出されています。海外の高級ホテルにいるかのような気分を味わうことが出来ます。

タイの投資家
「富良野に旅行に来て、とても気に入ったので購入を決めました。物件を購入できて、とてもうれしい。価格が上がったら、売却して利益を得ることも考えています」

自治体は”ジレンマ”

富良野で高まる海外からの投資熱。地元の富良野市は、地域経済の活性化にプラスだとして、前向きに受け止める一方、いわゆる乱開発となり、景観が損なわれたり、環境に影響が出たりしないか、不安も拭えないとしています。
富良野市の北猛俊市長はこのジレンマについて ━

富良野市 北猛俊 市長
「富良野市の経済としては雇用の創出にもつながるので、良好な動きだと思っています。しかし、いわゆる乱開発につながらないか心配もあります。市の町づくりの考え方含めて、バランスを取っていくことが大事になってくる」

専門家「戦略作りを」

地方経済に詳しい、北海道大学の小磯修二 客員教授は、海外からの投資を地域経済の活性化につなげるには、地元での中長期的な戦略作りが必要だと指摘しています。

北海道大学 小磯修二 客員教授
「良質な投資であれば積極的に受け入れていくべきです。しかし、乱開発という懸念もあります。安心・安定した投資を呼び込むためには、きちんとした規制作りを地域でしっかり議論していくことが大切。それが結果的には、良質な投資を安定的に呼び込む戦略にもつながっていきます」

2020年12月4日放送

【取材を終えて】
今回の取材は、富良野市を訪れるたびに、新しい工事が行われていることに気づき、それが海外資本の開発・投資であることの驚きがきっかけでした。
海外の投資家といえば、利益を上げることが最優先だと思っていましたが、直接話を聞くと、富良野に愛着を感じ、腰を据えて生活をしたいと考えている人もいて、今までのイメージとはだいぶ違う印象を受けました。
海外からの投資は、流出に悩む自治体にとって起爆剤にもなり得る一方、無秩序のままでは、いわゆる乱開発となり、大きなダメージをもたらす危うさもあります。
富良野市の北市長にもインタビュー取材しましたが、カメラが止まる瞬間に漏らした「悩ましいねぇ…」のひと言が、地元のジレンマを象徴しているように思えました。
富良野市は地元への開発を希望する国内外の企業に住民への説明を求めることを盛り込んだ条例を制定するなど、すでに動き始めています。
海外からの投資を、確実に利益をもたらすものに出来るのか、富良野市をはじめとする地元の動きを引き続き取材していきたいと思います。

(旭川局 記者 内匠彩果)

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