1972 SAPPORO VR Project
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北海道新聞さっぽろ10区「まちの記憶 1972札幌五輪の頃」~ライター・井上美香さんに聞く~

この「1972SAPPORO VR Project」は、NHK札幌放送局と北海道新聞社が共同で取り組んでいるプロジェクトです。
北海道新聞でも「さっぽろ10区(トーク)」(※札幌市を中心に配布されている折込紙)で、「まちの記憶 1972札幌五輪の頃」を連載するなど、NHKと一緒にこのプロジェクトを盛り上げています。

北海道新聞「さっぽろ10区」誌面

北海道新聞「さっぽろ10区」 2020年11月20日

そこで今回は、「街の記憶 1972札幌五輪の頃」を執筆している、ライター・井上美香(よしか)さんにNHK札幌にお越しいただき、お話をうかがいました。

ライター・井上美香さん

井上美香さん(いのうえ・よしか)
札幌市生まれ
札幌を拠点に活動するライター
雑誌や新聞などに北海道の歴史や文化に関する記事を掲載している
☆主な著作  『イノベーションの大地 北海道』(言視舎)
『北海道の逆襲 (笑う地域活性本)』(言視舎)
『北海道人が知らない北海道歴史ワンダーランド』(言視舎)
『クドカンの流儀』(言視舎)
『なぜ、北海道はミステリー作家の宝庫なのか?』(亜璃西社)


1972年を境に大きく変わった札幌の街



ー「さっぽろ10区」の記事、毎回拝見しています。
井上さんはどういった経緯で、「まちの記憶」を書くことになったんですか?

井上:
「さっぽろ10区」で、昔の札幌を振り返ろうという企画が持ち上がって、北海道の歴史や文化などを書いてきた私に声をかけていただいたんです。
私も札幌生まれなので、札幌のことをもっと知りたいと思って・・・仕事を越えて個人的に、昔はどうだったんだろう・・・と興味がありました(笑)
実は「さっぽろ10区」で記事を書くのは、今回が初めてだったんです。


ー「まちの記憶」では、昔の札幌をどのような視点で書いているのですか?

井上:
皆さんがおっしゃるように、札幌の街は1972年のオリンピックの頃に大きく変わりましたよね。その当時の様子をよく知る方々を取材して、率直な感想をお聞きして記事を書いています。
50代から90代まで、6人の方に会ってお話をうかがいました。いちばん高齢の方は93歳の方でした。


ー井上さんが取材した皆さんは、札幌の街のどんな所が変わったと言ってましたか?

井上:
やっぱり「道が広くなった」と。オリンピックもそうですが、100万都市を目指す当時の都市計画もあって、それまで駅前通りなどを市電が走っていたのがなくなって、建物もデコボコしていたのが道路の拡幅整備で建て替えなくちゃならなくなった。こうして界わいの商店が共同ビルに建て替わり、商店の裏とかに住んでいた人たちが、円山などの郊外に引っ越していったそうです。都心に住むのはカッコ悪くて、都心に車で通うのがトレンドだったとか。今とは全然違いますね(笑)


ー創業93年の老舗の手芸店だったり、オリンピックを機に旅館からホテルに転業した方だったり、井上さんの記事に出てくる方の何人かは、私たちも取材しています。
皆さん本当に札幌が大好きな方たちで・・・半世紀も前のことを今でも鮮明に覚えていらっしゃってびっくりしました。

井上:
そうですよね。
そしてみなさん共通して、昔のような温かくて情緒のある街並みになってほしいとおっしゃっていました。ただレトロじゃなくて・・・ゆとりのある街になってほしいと。
札幌オリンピックが成功したのも、国際都市として通用するためのインフラ整備はもちろんですが、札幌の人たちの温かみ、歓迎が大きかったんじゃないかと。ゆとりというのは、こうした札幌市民の気質のことではないかと思いますね。
オリンピックで、世界中で誰もが知らなかった街・サッポロの知名度が一気にあがりましたけど、市民が誰よりもオリンピックを楽しんでいたことが海外に皆さんにも伝わったと思いますね。



札幌市民に懐かしい風景・大通公園とテレビ塔



ーこの「1972SAPPORO VR Project」。VRを作る以外に、もうひとつ大きな目的があるんです。ステイホームの時代、この機会に古い写真を引っ張り出してきて、世代を越えて会話をしてほしい、ということなんです。
今回は北海道新聞さんも一緒にPRしていただいたおかげで、500枚を超える写真が集まりました。井上さんが投稿写真をご覧になって、感想はいかがですか?

井上:
もともと私はそういう写真が見るのが好きなので!(笑)
でも、皆さんの写真を見ていると、忘れていたことや、記憶の中にしかなかった風景がよみがえってきて・・・大通公園でくつろいでいる方の写真を見て、私もそこで撮った写真があったよね・・・って、家のアルバムを引っ張り出しました(笑)


ーそういえば、投稿していただいた写真にも、大通公園でのスナップ写真がたくさんありました。

あっちゃんさん

あっちゃんさん

こぐさん

こぐさん

冬のたそがれ十字街さん

冬のたそがれ十字街さん

ノラ君さん

ノラ君さん

白石横町の住人さん

白石横町の住人さん

Kiwiさん

Kiwiさん

ゆっきーさん

ゆっきーさん

井上:札幌を離れた人にとっては、道庁の赤レンガよりも懐かしいな……と思う風景じゃないでしょうか。大通公園とテレビ塔の風景が。


ーそんな大切な場所の一角にNHK札幌放送局があります。今年の6月に移転するので、風景がちょっと変わるかもしれませんよね?
 
井上:
私も「NHKはテレビ塔の横にあるもの」と思っていたので、さみしくなるなって感じがあります。あそこ(屋上)に温度計があって、よく見ていましたから(笑)


ーあの温度計も役に立っていたんですね(笑)62年間もNHKがこの場所で市民の皆さんにお世話になれたこと、本当にありがたいと思っています。

1962年ごろのNHK札幌放送局前

(1962年ごろのNHK札幌放送局前)まなひっとゆうさん

半世紀前の札幌がよみがえるVR 期待するものは?



ー皆さんからの写真で作る「SAPPORO VR」。3月中旬の完成を目指して、現在制作に取り組んでいます。

井上:
「SAPPORO VR」のホームページに、写真が立体的になっていく映像があったんですが、それを見ただけで驚きました。こんなことができるんだ!って。楽しみです。


ー写真を募集する時のスポットでも、その映像を使っていて、けっこう反響がありました。VR本編はもっとすごいことになると思います。このプロジェクトは1972と銘打って、オリンピック前後の街の変化をテーマにしているのですが、VR本編では1972年よりも数年前の駅前通りを再現しようと思っています。1972年は街が全部変わってしまった後なので、変わってしまう前の姿を。市電も走っていていたりして……
VRが完成したら、井上さんはどんなところを見てみたいですか?

井上:
やっぱり三越や4プラあたりの変化を見てみたいですね。建物の移り変わりを。
小さい頃の思い出の場所でしたから・・・デパートの屋上の遊園地も行きました!
VRは若い人だけじゃなく、その時代を経験してきた人にこそ見て楽しんでほしいです。


ー4丁目十字街なら、まだパルコも4プラもない時代。今の建物になる前の三越は、ちょっとおもしろい姿で味わいがあります。VRでは、皆さんにそんな所も見ていただきたいと思っています。

1972年の三越

(写真提供 トムさん)
井上:本当にいろいろ変わった時代でしたよね。地下鉄や地下街を作って、市電を撤去して、道を広げて、ビルに建て替えて。そんなにすごいことを、札幌はたった6年くらいの間でやってしまった。無くなってしまったものもありますが、今の住みやすい札幌のカタチは、この時の恩恵だと改めて思います。


ー本当に札幌でいろんな変化があった時代だと、あらためて実感します。
最後に、「まちの記憶」の今後の予定は?

井上:
2月23日が最終回なんです。その日の記事では皆さんからNHKに投稿していただいた写真をご紹介しますので,どうぞお楽しみに。


ー今度の記事は、まさにNHKと北海道新聞の共同作業ですね。

井上:
今までなかったんですよね、こういったこと。二社が共同することで、映像と写真、情報などを使ったいろいろな可能性が広がりますね。


ー今回は北海道新聞さんがお持ちの写真もたくさん使わせていただいて、VRを作っています。市民の皆さんのご期待にこたえられる映像ができるようにがんばります。
今日はどうもありがとうございました。

取材後の井上さん