学校に行かない!~進路はどうする?~<番組内容>
学校に行かなかったら、その後の進路はどうなる?
今学校に行っていない10代の3名と、学校に行かなかった経験がある社会人7名が語り合った。
◇10代の疑問とは?◇
・集団が苦手なので、働けるのか心配 (14歳・アオイさん)
・就職や進学で不利にならないか?どうやってうまく就職したのか知りたい。(15歳・れつさん)
・やりたいことや興味がある分野はあるが、どう取り組めばいいのかわからない(14歳・あかりさん)
◇ひきこもりから教師へ しいなさんの場合◇
高等専修学校で教師として働くしいなさんは、小学校4年生から学校に行かなかった。
中学校1年生から3年生までは家族とも顔を合わせず部屋に引きこもった。
見守っていた母親の由美さんは毎日手紙を添えて食事を届けた。
<母・由美さんの話>
・足音とか物音で“あっ生きてるな”と感じるしかなかった
・自分の感情で動くとまた傷つけてしまうから待つしかないなという気持ちだった
しいなさんは、家族が「出ておいで」などと言わず根気強く待っていてくれたことが安心につながったという。
そんな日々が1年ほど続いたある日。しいなさんに転機が訪れた。
たまたま部屋で見ていたテレビに、サッカーの試合の模様が流れ、日本代表の選手がゴールを決める瞬間を目にした。2002年、日韓共催のサッカーのワールドカップの試合だった。
それまでサッカーにも韓国にも興味がなかったしいなさんだが、びっくりするほどの感動を覚え、それからサッカーが好きになり、韓国や国際交流にも興味を持つように。そしてひきこもったまま、テレビで語学を学び始めた。
「明るい別世界でした。ひきこもっているけど、ひとりワールドワイドみたいな」
中学校はほぼ通わないまま卒業。進学はせず、19歳で国際交流ボランティアに挑戦し、通訳をしたり、情報誌の制作をしたりした。いろいろな年齢・国籍の人とかかわり、人と接するのが楽しくなり、働いてみたいと思うように。
そして、21歳で通信制高校に入学。さらに短大に進み、教員免許を取得して、高等専修学校の教師になった。
◇10代と経験者の感想◇
・テレビを見てぱっとひらめいて勉強して通訳とか。どこからそんな活力がわいてくるの?(15歳・れつさん)
・じっくり充電をしたのがよかった。ひきこもっていたときはつらかったが、その反動で人と会いたい気持ちが強くなった(経験者:高等専修学校教師 しいなさん)
・ひとりで勉強し続けたのがすごい。(経験者:IT企業社員 ゆうきさん)
・学校の勉強は全くしていなかったのでその分すーっと入ってきた。勉強というより好きだからやっていたという感じ。(経験者:高等専修学校教師 しいなさん)
◇学校に行かなかった皆さんの進路は?◇
学校に行かなかった経験がある7人に、それぞれが歩んできた道を年表にしてもらった。7人とも「一つのきっかけがあったわけではなく、全てがつながっている」と語るが、特に影響が大きかったできごとを話してもらった。
<経験者:高等専修学校教師 しいなさん>
・小学校5~6年生のときの担任の先生が、卒業のときに、「これからは人と人としてつきあっていこう」と言ってくれ、その通りにしてくれた。小学校でのボランティアなども紹介してくれ、今も大きな支えとなっている。
<経験者:オートバイメーカー社員 たいがさん>
・SFもののアニメに没頭していくうち、ロボットに興味を持ち、ロボット展へ。実際にロボットを作っている人がいるのを見て、「作るっていいな」と思い、それがずっとつながっている。
<経験者:電機メーカー研究職 けんさん>
・15歳くらいのときに、数学で、先生や友人に初めて自分の発言が認められた。周りがおおっ!と思ってくれたことが推進力につながった。
<経験者:IT企業社員 ゆうきさん>
・ゲームにはまったことで、友達ができ、パソコンも好きになり、IT関係の道に進もうというきっかけになった。
・就職活動のとき、不登校を経験しながらもその後、自分で将来を考え自分で専門学校を選んだことが、自ら考え行動していると高く評価された。
<経験者:漫画家 棚園さん>
・母の知り合いだった漫画家の鳥山明先生に、自分が描いた漫画を見てもらったことが、大きな転換点になった。
<経験者:デザイナー ななこさん>
・19歳のときにフリースクールが運営する大学に入学。どうやって生きていくかを学ぶうちに自然と友人と起業することにつながった。
◇<10代の疑問>◇
Q. 一般の高校・大学に進学できた要因は?(15歳・れつさん)
A. 不登校と進学は、思っているほど関係がないと思う。<経験者:電機メーカー研究職 けんさん>
A. 大学に行くことが大事なのではなく、大学でやりたいことがあるかどうかが大事かも <経験者:オートバイメーカー社員 たいがさん>
Q. 同世代と年下の子がいる集団が苦手だけれど、大丈夫ですか?(14歳・アオイさん)
A. 僕も集団が苦手だったが、すべての集団が苦手ではないことに気付いた。哲学の話をする集団の中では楽しくいられた。子どものころはそのような話をできる集団がなかったので、話を合わせなくてはと苦しかったが、自分にとって居心地の良い集団は見つけられる(教育学者 苫野一徳さん)
◇ほぼ学校に行かずに学んできた げんきさんの場合◇
<経験者:農業・カフェ経営 げんきさん>
・では、最初から学校にほぼ行かないで育ったげんきさんの進路とは?
デモクラティックスクールという学校外の学びの場に5歳から通っていたげんきさん。そこでは勉強や運動など大人からの指示は一切ない。何をするかは自分で決める。スクールで過ごすうえでのルールも、大人と子どもが対等に発言して話し合って決めていた。
げんきさんは14歳でスクールを辞めたあと、飲食店でアルバイトを始めた。働いてみて、自分のことは自分で決めるという経験が生きてきたという。
その後、食材に興味がわき、18歳で農業研修を受けるが、そのまま農業の道に進むかどうか迷い、20歳で世界一周の旅へ。
帰国後、昨年から、兄の農業を手伝っている。最近は、それに加えて移動式カフェも始めた。
「信頼されて安心できる場所ならどこででも生きていける。そこにいる人たちに自分が貢献でき、その人たちを信頼できる、そういう場所で働きたい」というげんきさん。
◇迷いながらでも大丈夫◇
・思い切りがすごい!(14歳・アオイさん)
・生きるだけなら簡単。人を助けたり、助けられたりできれば、生きていくだけなら全然問題ない。(経験者:農業・カフェ経営 げんきさん)
<教育学者 苫野一徳さんの見解>
・進路は自分一人で切り開くものというイメージがあるが、そうではない。
・今回のキーワードは助けたり助けられたりする、協働すること。
・人の力を借りる力を育むことが大切だと感じた
<尾木ママの見解>
100人いれば100通りの進み方がある。親御さんは子どもの成長する力を信じてほしい。
方向も進む速さも、人それぞれ。自分なりの道を歩んでいこう!
*番組へのご意見ご感想をお待ちしております。
投稿者:制作スタッフ | 投稿時間:21:30