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担任の先生は2人?小学校で “チーム担任制”  狙いは

  • 2024年03月05日

小学校の担任の先生は何人でしたか?一般的には1人の先生が1つのクラスの担任をしますが、安芸高田市の小学校では2人の先生で2つのクラスを担当する「チーム担任制」を導入しています。その理由や効果は?

(NHK広島放送局記者 十石泰誠)

チーム担任制とは

原田真紀先生

安芸高田市にある吉田小学校です。
4年1組のクラスの朝の会。担当するのは原田先生です。

国語の授業、担当しているのは朝の会と同じ原田先生です。

佐々木一歩先生

国語の授業が終わり、次の授業へ。教室に来たのは佐々木先生です。算数の授業を担当します。一般的に、小学校では1人の先生がほとんどの教科を教えますが、この学校は違います。このクラスの担任は2人。4年1組も4年2組も、2人の先生が共同で担当しています。

チーム担任制 狙いは?

このチーム担任制は、今年度から本格的に導入しました。その狙いは。

吉田小学校 𠮷貞至誠校長
「小学校で担任の先生とうまく折り合いが付かなかったら1日塞いでるような子どもたちがいたり、という現状を見たときに、チーム担任制が突破口にならないかなと。やっぱり1人の目よりも複数の目で子どもたちを見て引き出していくと、子どもたちが元気になるんじゃないか」

実際、子どもたちはどう思っているのでしょうか。

「相談しやすかったりします」
「2人の先生でコミュニケーションが取れるのでいいと思います」
「いろんな先生がいると、なんか楽」

先生が感じているメリットは

チーム担任制に先生たちもメリットを感じているようです。

① コミュニケーション
2人で2つのクラスを担任しているため、今まで以上にコミュニケーションを取るようになりました。空き時間や放課後には、その日にあった出来事や課題を逐一共有します。

原田先生
「きのう、ちょっと席替えしたんですよ。来月はもう最後だし、くじにしたいって子どもたちは言うんだけど、どうします」

佐々木先生
「くじにしようかなって、ちょっと考えています」

② 複数で子どもを見る
通知表の「生活のようす」などの評価も2人で話し合って記入します。1人の見方ではなく、複数の先生から見た1人1人のいいところを評価することができます。

③ 若手の先生がノウハウを学ぶ
チームを組んでいる原田先生は25年目、佐々木先生は5年目。若手の先生がノウハウを吸収する仕組みにもなっています。

佐々木先生
「自分が気づけないところを見て気づいてくださって、教えてくださる。自分が全部見られなくても、原田先生が見てくださっている部分で共有できたりするので、負担はすごい減っているなと僕は感じています」

原田先生
「先生によって見せる姿が違う子どももいますし、知らなかった、そういう思いを持ってたりするんだねということもあります。授業を交換する煩雑さや、まだ指導の途中だけど代わらないといけないみたいなところの課題はあるかもしれないですけど、力を合わせて補い合ったり、助け合ったりして子どもたちを見ているっていう感じでは、すごく心強いなと思いますね」

吉田小学校では今後も児童たちが過ごしやすい学校作りを行っていくため、チーム担任制を進めていく考えです。

𠮷貞校長
「小学校はすべてのことをすべてやりきって担任、それで一人前という、これまでの社会の見方というか、学校のなかでわたしたちが作り上げてきた担任像というのがあると思うんですけど、子どもたちを大事にする取り組みであることには間違いないので、職員間の共通確認、そこをしっかりしながら前進させていきたい」

記者が解説 チーム担任制の効果と課題

石津キャスター

チーム担任制、子どもたちは「相談しやすい」と話していましたが、全体的な評価は?

十石記者

学校が2023年12月に行ったアンケートでは、「担任だけでなくいろいろな先生と勉強することはいいことだと思う」という質問に対し、児童の78%があてはまる、17%がややあてはまると答えていました。
また、保護者の79%があてはまる、19%がややあてはまると答えていました。

一方で課題はないんでしょうか?

はい。県教育委員会によりますと、チーム担任制について、県内の学校の子どもたちからの意見として、相談しやすい1人の先生に見てもらいのに、担任が変わってしまうことでそれができなくなるという声が上がっているということです。
また、教員側からは、従来であれば基本的にすべての教科を1人で見るため、時間割を組むことが容易でしたが、チーム担任制では時間割の調整が煩雑になることなどが課題として上がっているとのことでした。

チーム担任制について、未来の学校作りについて探究している熊本大学大学院教育学研究科の苫野一徳准教授は、「子どもたちの生きる力を育むためには複数の大人からの評価や応援が有効。人間関係の流動性の仕掛けを作ることで学級の閉塞感を改善できる可能性もある。先生どうしが相談し合えるので先生の意識や働き方にもよい効果がある」としています。

その前提として、「『何のためのチーム担任制か』を先生と子どもたちがしっかり対話し理解し合意することが大切だ」と指摘しています。

  • 十石泰誠

    広島放送局 記者

    十石泰誠

    2023年入局。大阪生まれの大阪育ち。広島に着任して1人暮らし。原爆や教育に関する取材を担当している。中学校の社会、高校の地理・歴史と公民の教員免許を持っています。

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