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どうする 観光地・宮島のごみ 食べ歩きが広がる裏側で 広島

  • 2023年11月24日

宮島の観光客の数はコロナ禍のあと、急速に回復し、商店街は多くの人でにぎわっています。こうした中、懸念されているのが、食べ歩きなどで出るごみの問題です。訪れた人たちからはごみ箱の少なさを指摘する声も聞かれます。どう対応しようとしているのか、取材してきました。

(広島放送局 記者 大石理恵)

食べ歩きを楽しんだあとに・・・

コロナ禍のあと、多くの人が訪れている宮島。名物のカキやもみじまんじゅう、そしてスイーツなど・・・。最近はテイクアウトに力を入れる店も増え、伝統的な景色を眺めながら食べ歩きをするのは、宮島観光の楽しみの一つとなっています。

 

食べ歩き、楽しいですよね

しかし、観光客の回復に伴って課題となっているのが、食べ終わったあとの空き容器や串、空き缶などのごみです。

ごみ箱の数は4分の1に減少

誰もが捨てられるごみ箱は、かつて宮島島内の公園や公共施設など20か所以上に設置されていました。しかし、平成以降、徐々に撤去が進み、現在は5か所となっています。

 

桟橋にあるごみ箱

撤去の理由の1つが、宮島に生息するシカです。ごみ箱からあふれたごみをあさり、散乱させてしまうこと、さらにシカの健康被害につながるといった問題がたびたび指摘されてきました。

 

25年前(1998年)の様子

さらに、ごみの問題に詳しい大阪公立大学の水谷聡准教授によると、街頭のごみ箱はテロ対策やコロナの感染対策などを背景に、全国的に撤去が進んだそうです。

ごみ箱が減ったいま、宮島を訪れた人は、ごみをどうしているのでしょうか。

福山市から訪れた家族連れ

ごみ箱がなくて困ります。食べ歩きしたパンの袋やコーヒーのカップ、カステラの空き容器をずっと持っていました。

オーストラリアからの男性

ごみは持ち歩くので、ごみ箱はそこまで必要ないと思います。

アメリカからの女性

カフェラテとアイスクリームの空き容器をまだ持っていて、ごみ箱を探しています。アメリカだとごみ箱はたくさんあるので、少し不便ですね。

話を聞いてみると、ごみを持ち帰る、ごみ箱を探して捨てる、買った店まで戻って捨ててもらうなど、いろいろな対応がありました。

ちなみに、観光庁が2019年度に訪日外国人旅行者に行ったアンケートによると、外国人旅行者が日本で困ったことの第1位が「ごみ箱の少なさ」(23.4%)でした。

人目につきにくいところにポイ捨ても

今、課題となっているのがごみのポイ捨てです。宮島で店を営む人たちによると、ごみは灯籠の脇や飲食店のトイレなど、人目につきにくいところに捨てられているといいます。そして、ごみがある場所に別の人がまたごみを捨て、いわゆる「割れ窓理論」でポイ捨てがさらに増えるといいます。

今後、増えていくと、景観や安全性など様々なところに影響が出そうです。

できるところから

こうした中、テイクアウトを主力とする事業者の有志が対策に乗り出しています。このうち、商店街で揚げたてのもみじまんじゅうを串に刺して販売している事業者は、店の中にごみ箱を設置して、他の店のごみも含めて回収しています。

 

揚げたてのもみじまんじゅう

さらに、ことし9月からは、カフェなどほかの3つの事業者と共同で、落ちているごみを拾い集める活動も始めました。観光客が多い日に、回収用のワゴンを押しながらごみを拾います。空き容器や串などを持っている人に声をかけて、直接受け取ることもしています。

 

清掃活動用のはっぴも最近新しく作ったそうです

紅葉堂 竹内基浩 代表取締役
「お客さんが増えるのと比例してごみが増えています。商品をお渡しする時に『ごみをまた持ってきてください』と言ったりするんですが、なかなか店に戻ってくるまで持ち歩くのは難しい状況もあるのかなと思います。ただ、本当に量が多くて、自分たちだけで全部集めるのはとてもできないなと、やっぱりごみって大変な問題だなと思っています。まずは、有志でできるところから少しずつ取り組んでいこうと思っています」

 

紅葉堂 竹内基浩 代表取締役

臨時のごみ箱設置で見えてきたこと

こうした課題に行政も対応を検討し始めています。廿日市市は、祝日の11月3日、観光協会などと協力してごみの量や種類を把握するための調査を宮島で実施。島内2か所に、朝から夕方まで臨時のごみ箱を設置しました。
 

 

廿日市市などが実施したごみの調査

その結果、回収したごみがこちら。

臨時のごみ箱で回収したごみ(※1袋は45リットルの大きさ)

可燃物 43袋

ペットボトル 28袋

ビン・カン 8袋

カップ 5袋

くし・スプーン等 3袋

弁当がら 2袋

柑橘類の輪切り 2袋

合計 91袋

このほか飲み残しの液体 80リットル

1日で回収したごみの量は市の想定を上回りました。今回の調査によって、潜在的なごみの量が明らかになったとも言えますが、これほどの量になると、やはり有志の取り組みだけでは限界がありそうです。

 

回収したごみを分別、調査

一方、廿日市市では、ことし10月から、宮島を訪れる人から1回の訪問あたり1人100円の訪問税を徴収し始めています。公衆トイレの整備や宮島口の渋滞対策などにあてる費用の一部を、訪れる人にも負担してもらおうというもので、税収の一部をごみの対策にもあてる方針です。今後は、ごみ箱の新たな設置も含めて、事業者や住民と協議することにしています。

 

廿日市市 清水俊文 宮島まちづくり推進担当課長

廿日市市宮島企画調整課 清水俊文 宮島まちづくり推進担当課長
「観光客の方には楽しんで帰っていただきたいので、ごみを捨てる場所はある程度あったほうがいいと考えています。嚴島神社などを参拝される方も多いので、貴重な文化財を汚したりすることがないようにという配慮も必要だと考えています。文化財や歴史的な景観を守りながら宮島を持続可能な観光地にしていくためにはどういった対策を取るべきなのか、しっかり地元と話をして決めていきたいです」

ごみ箱を再設置する動きも

外国人観光客が回復する中で、国内のほかの観光地では、撤去したごみ箱を再び設置する動きも出ています。デジタル技術を使って、ごみがたまると自動でごみを圧縮するごみ箱などを活用するところもあります。

ただ、専門家は、ごみ箱を増やすことの弊害もあると指摘しています。

 

大阪公立大学 水谷聡 准教授

大阪公立大学 水谷聡 准教授
「ごみ箱があることでこれまで持ち帰っていたごみが新たに出される、『ごみ箱がごみをよぶ』ことが懸念される。ごみの問題は責任の所在が難しいので、行政が交通整理しながら、事業者・住民・観光客が納得できる対応策を見つけてほしい」

観光客の利便性や伝統的な景観の維持、シカとの共存など総合的に対策を考えていく必要がありそうです。今後の検討に引き続き注目していきたいと思います。

 

  • 大石理恵

    広島放送局記者

    大石理恵

    2004年入局
    広島県廿日市市出身
    ネットワーク報道部等を経て2度目の地元勤務中
    もみじまんじゅうはチーズ派 

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