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2024年問題 変革求められる広島の建設業界

  • 2023年11月21日

来年4月から物流・建設・医療業界で労働時間の規制が強化され、より深刻な人手不足が懸念される「2024年問題」。一方で、それぞれの業界へのニーズは高まり続けています。打開策はあるのでしょうか。このうち建設業界に注目、変革が求められる現場を取材しました。

(広島放送局記者 重田八輝)

“変革の時代に来ている”

安芸高田市高宮町で行われている大規模な農地造成の工事。空を舞うのは、カメラを搭載したドローンです。工事の進捗を確認するための測量作業で使われていました。上空から画像を撮り、詳細な地形データを取得します。

ドローン撮影の画像

月に1回ほど行われる測量作業。工事を担う建設会社では、これまで丸1日かけて2人以上で行ってきたといいます。それがドローンを使うことでたった30分、1人で済むようになりました。2年前からこの技術を本格的に導入しました。

熊高組 熊高洋一 常務

ICT=情報通信技術を導入した背景には、2024年問題などを受けた、働き方改革を進めなければならない事情があったといいます。

熊高洋一 常務
「ICTをやってなければ工期が間に合わなかったのでは、という話も現場で出ていました。業務の省力化・効率化を進めるためにはICTをやっていかないといけない。その変革の時代に来ているんじゃないかなと私は思います」

迫る 時間外労働の上限

そもそも2024年問題で何が変わるのでしょうか。

建設業界では、労使で結ぶ36協定で時間外労働の時間を決めることになりますが、今は法律による規制の適用がなく時間の上限がない状態です。

2024年問題と言われるのは規制の適用が始まるからです。来年4月からは、時間外労働時間の上限は原則・月45時間、年360時間になり、これには罰則もあります。臨時的な特別の事情がない限り、上限を超えることはできなくなるのです。

一方、建設業界は労働時間の長さが課題となっています。昨年度・2022年度の広島県内の「毎月勤労統計調査」をみてみると…

1人平均月間総労働時間(30人以上の事業所)
全産業 144.1時間
建設業 173.0時間
運輸業・郵便業 170.5時間
製造業 160.5時間

産業別だと建設業の総労働時間が最も長くなっています。今後、勤務管理が厳しくなれば必要な工事が進まなくなるおそれもあります。効率的な働き方を進めるカギを握っているのが、ドローンによる測量のようなICT=情報通信技術です。

広がる ICT導入の動き

ICTの導入に向けた動きは業界全体に広がり始めています。

県立広島産業会館

10月下旬、広島市南区で建設技術の展示会が開かれると聞き、会場に向かいました。全国から100を超える企業・団体が集まって最新技術を紹介していました。

あるブースでは、人工衛星の観測システムを使った位置情報の技術をアピールしていました。これを使えば、元の設計データと施工したあとの構造物で位置や形状に差がないかを、たった1人で確認できるということです。

別のブースでは、流し込んだコンクリートのムラをなくす職人技とも言える作業を、スマートフォンの画面でサポートすることで若手でも行えるようになる技術が紹介されていました。建設会社の担当者たちが熱心に質問する姿が、多く見られました。

建設会社 建設部長
「熟練者が不足していく中、ICTによって経験が少ない人でも同じものがつくれるというのは非常にいいと思います。どの会社もICTをやらざるを得ない状況になってくると思います」

ICT導入 道半ば

一方で、ICTの導入が進んでいるかというと、道半ばと言えます。

広島県でもICTの活用を促す形の工事の発注を増やしています。工事には、ICTの活用を前提にした「指定型」のほか、「希望型」と呼ばれる受注側・建設会社側がICTを活用するかどうかを選ぶことができる仕組みのものがありました。活用するとその実績が、のちの入札時の評価でポイントとして加算されます。

この「希望型」の工事、県の土木建築局は昨年度・2022年度に196件発注しました。その結果、建設会社側がICT活用を選んだのは67件(34%)、ICT活用を選ばなかったのは129件(66%)だったのです。

県によりますと、現場でICTを使った工事件数自体は徐々に増えているということですが、全体では多いとは言えない状況です。そもそもICTが業界に浸透しきっていないという指摘もあり、県は導入する会社を増やすために研修会などを行っていく考えです。

慢性的な人手不足 魅力をアピール

建設業界が抱える問題はICTの導入だけではありません。慢性的な人手不足も大きな課題となっています。

国土交通省が算出した全国の建設業界の年齢構成です。55歳以上の割合は35.9%、29歳以下の割合は11.7%。年々、高齢化が進んでいます。現場でICTがサポートすると言っても、人材を確保できなければ、工事そのものや技術の継承への影響が懸念されます。

広島工業大学での意見交換会

こうした状況に県内の建設業界では、10月下旬、学生に関心を高めてもらおうと広島工業大学で意見交換会を開きました。参加した環境土木工学科3年生のおよそ90人に対して、建設会社の担当者たちは職場環境や勤務時間、給与などについて業界全体で改善に取り組んでいることを伝えていました。

建設会社 担当者
「今、イメージを変えていくことや給料も変えていくということで、業界自体が皆さんに入ってきてもらいやすい環境をつくろうとしています」

広島県建設工業協会 会長
「将来にわたって社会に貢献するやりがいのある仕事です。そして、皆さんにとって魅力ある産業になるように、今、業界をあげて設計施工のDXや働き方改革に取り組んでいるところでもあります」

こうしたアピールに、学生からは…

参加した大学生たち

「建設業はしんどそうなのかなって思っていましたが、話を聞くと、昔よりは環境が改善されてきていると感じました」

「クリーンなイメージの方が強いように変わってきているのでは、と思いました。進路を選択する上で、参考になりました」

一方で、意見交換会では、あるテーブルから切実な声も聞かれました。

建設会社 担当者
「学生に建設業やコンサル業の会社に入ってもらいたいけど、そもそも土木系の高校や大学に進学を希望する学生が少なくて、分母が小さい。その分母が小さい中で同業者が取り合いになっているんですよ。本当にせっぱ詰まっているのは事実で、分母を増やさないといけないんです」

2024年問題 契機に

取材を終えて感じたのは、長期的な取り組みが必要だということでした。

建設フェア おもちゃのショベルカーでボールすくい

広島県も危機感を強めていて、幼い頃から関心を持ってもらおうと子どもたちが建設業を体験できるイベントを毎年、開催しています。保護者のイメージアップにもつながり、子どもの将来の選択肢にしてもらいたいという狙いです。

どうすれば若い人たちに選択され続ける業界になるか。PRするイベントを開くことも重要ですが、やはり働き方改革を確実に進めて、より魅力ある職場にしていくことが求められています。2024年問題を契機に、業界全体がどう変わっていけるかを今後も注視していきたいと思います。

  • 重田八輝

    広島放送局 記者

    重田八輝

    2007年入局。福井局・大阪局・科学文化部を経て2021年秋から広島局。石川生まれ千葉育ち。

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