ひろしまの逸品⑫宮島御砂焼
- 2023年05月17日
G7広島サミットをきっかけに、世界の人に知ってもらいたい地元のすぐれた逸品を紹介します。今回は「宮島御砂焼」です。伝統を守りながら、平和への思いを込めた焼き物づくりが行われています。
(広島放送局記者 福島由季)
広島県の伝統的工芸品
土そのものの素朴な風合いが特徴の「宮島御砂焼」。日本三景の1つ、廿日市市の宮島にある嚴島神社の本殿の下の砂を細かく砕き、粘土に練り込んで作ります。
発祥は江戸時代
御砂焼のはじまりは、江戸時代。広島から旅に出る人が、嚴島神社の砂をお守りとして持っていく風習がありました。そして、無事に帰ることができた感謝の気持ちを込めて、砂を返しにきたといいます。その砂を使い、嚴島神社の祭礼のための杯などが作られるようになったのが御砂焼の発祥だといわれています。
宮島の対岸に位置する宮島口の窯元では、神社に納める杯のほか、家庭用や贈答用の御砂焼を制作していて、縁起物としても親しまれています。
山根興哉さん
「神社の御砂をいただいて練り込んで作っている縁起物です。普通の粘土で作るときと、御砂が入っている粘土で作るときは、なんとなく違った思いがあるので、そこは大切にしています」
平和への思い
窯元の3代目の山根さんは、被爆2世です。御砂焼に平和への思いを込めようと、挑戦を続けています。最近、注目を集めたのがランプです。このランプは全国から平和公園に寄せられた折り鶴を宮島の寺でおたきあげした灰を、砂とともに練り込んで作っています。ことし3月には、岸田総理大臣がウクライナのゼレンスキー大統領に贈りました。山根さんは、作品を通じて平和への思いを世界に届けたいと考えています。
山根興哉さん
「世界から集められた皆さんの思いの込められた折り鶴を灰にしていただいて、ランプを作らせてもらっています。この平和のメッセージは、広島からではないと伝えられないと思います。皆さんにもこのランプを通じて平和への思いを感じてもらい、伝えていってほしいと強く思います」