広島出身の大学生 G7ユースサミットで語る思い
- 2023年05月12日

4月下旬、G7広島サミットを前に世界の若者たちが広島に集い、核なき世界に向けて話し合う「広島G7ユースサミット」が開かれました。その中で、広島の思いを伝えた、広島出身の大学生・高垣慶太さん。高垣さんの曽祖父2人はそれぞれ広島・長崎で被爆しました。2つの被爆地のルーツを胸に活動する高垣さんを取材しました。
(広島放送局ディレクター 長岡伶奈)
東京の大学に通う、高垣慶太さん。ユースサミットを前にふるさと広島に戻ってきました。

高垣慶太さん
「あと1か月とちょっとかという感覚ではありますね。どういう風に首脳を迎え入れるんだろうとか。そこまでの期間、そういう動きがあるんだろうとか注目したい」
2人の曽祖父の存在
高垣さんの活動の原点は、広島・長崎で被爆した、広島と長崎の開業医だった2人の曽祖父の存在。小学生の時にそれぞれの体験を、祖父母から聞かされたといいます。

原爆投下直後、救護班の一員として自らも被爆しながら、治療に当たった曽祖父。重い火傷を負った人々が次々と運ばれてきましたが、治療薬も足りず、十分な処置をできなかったといいます。原爆の惨状を目の当たりにした曽祖父たちの記憶。広島と長崎のルーツを意識するようになりました。
高垣慶太さん
「命の選別っていうんですか、救えたかもしれない命も助からないし、本当にたくさんの人がその中で子どもも含めて亡くなっていく様子を見たんだろうなと思うし、本当に核兵器の残酷さと残虐性ってものに触れた瞬間だったんじゃないかなと。曽祖父たちの体験が語らなかったら僕の代で消えてしまう記憶ですよね。ぼくはやっぱりそれを伝えていくことが、ある種の使命というか託されたものだろうなみたいな感じ」

2022年6月。ウィーンで開かれた核兵器禁止条約の締約国会議では、曽祖父の体験をもとに被爆の実相を伝えました。目前に迫ってきたG7広島サミット。しかし、世界で核の脅威が高まるなか、会議の成果に大きな期待はもてないと感じています。
高垣慶太さん
「サミットについて個人的にはがっかりすると思うんで。G7サミットが核兵器がなくなるっていうことにつながるとはあんまり思ってない。そこまで現実は甘くないと思う。どうして広島に来るのか。どうしてそこに足を踏み入れるのか。常に問わなければならない。」
広島G7ユースサミット

4月、G7サミットを前に世界の若者たちが集う「広島G7ユースサミット」が行われました。19か国から集まった50人の若者が「核なき世界」について学び、話しあう場。高垣さんは、サミットで核廃絶の議論が進展しない可能性もあるなか、いま自分に何ができるか、考えたいと臨んでいました。
若者たちの間で特に話題になったのが、ロシアによる核の脅し。「核は必要だ」と考える風潮が多くの国で高まっていました。
スウェーデンの学生
「私の国は核抑止を前提としたNATOに加盟しようとしています。スウェーデンはこれまで核軍縮を進めてきたのに、大きな後退です」
ドイツの学生
「核兵器の廃絶についてドイツの政治家と話す機会がありますが、“核兵器は重要だ”“安全保障上の理由で必要だ”といつも言われます」
高垣さんはそんな世界情勢だからこそ、広島・長崎で起きたことを直視してほしいと訴えます。
この日、高垣さんは若者の代表として、壇上に立ち、思いを訴えました。

高垣慶太さんの発言
「僕の2人の曽祖父は被爆者です。広島と長崎で被爆しました。彼らは全員を治療することはできなかった。彼らは非人道的な光景を目の当たりにしました。核被害の実態は残酷です。核兵器が平和を維持するための“必要悪”だという理由で、『核を保有する』か『核の傘に入るか』の2つに1つだと言われています。その中で人間の尊厳が取り残されています」
ユースサミットに参加した核保有国の若者の感想は。
アメリカからの参加者
「私たちは原爆のおかげで第二次世界大戦が終わったと教えられます。広島に来て、原爆投下が英雄的な行為ではないと理解し、それが頭から離れなかった」
イギリスから参加者
「一番の学びはここで人道的な視点を得ることができたことです。キノコ曇の下で何が起きたのか、自分ごととして考えられるようになりました」
これからの活動
高垣さんにとって今回のサミットは出発点。今後も世界の若者と協力しながら活動の輪を広げていきたいと考えています。

高垣慶太さん
「何か対話することをやめないっていうんですかね。相手の考え方だったり価値観だったり、歴史であったり、そういうものを受け止めていくことがすごく大切なんじゃないかと感じました。G7とかユースサミットも、僕はわりとスタートだなと思っているんですけど、これからもっともっとつながり続けて、自分たちで核兵器のない世界、一緒に生きていける社会を作っていけるのかなと思います。」
高垣さんは、カザフスタンやマーシャル諸島にいる核実験の被ばく者ともつながりを深め、広く核兵器の脅威を訴えるムーブメントを作りたいと考えています。その上で、2023年11月に開かれる核兵器禁止条約の第2回締約国会議に臨みたいということです。