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G7外相会合を見た 警察官ばかりの街では

  • 2023年05月09日

「外相会合でこんなに?」駅の改札口を通り抜けた瞬間、感じました。至るところに、警察官、警察官、警察官…。私は広島放送局でサミット担当を名乗りながら、大規模な国際会議を取材した経験がありません。外相でこれなら、首脳が集まる広島サミットではいったいどうなるのか。その思いでG7外相会合の開催地・長野県軽井沢町を駆け回ってみました。

(広島放送局記者 重田八輝)

「う回してほしい」 前日から

前夜に行われていた関係車両だけを通す訓練

外相会合前日の4月15日、土曜日。広島駅から新幹線を乗り継いで5時間余り、軽井沢駅に到着した時は、すでに夜でした。雨の中、次の日からの取材に備えてホテルにチェックインしようと歩き出した私の目に入ってきたのは、短い間隔で配置された警察官と交通規制を知らせる看板。そして、交差点での光景に驚きました。数十人の警察官が道をふさいでいたのです。

「すみませんね」と話しかけてきたのは長野県警の警察官。聞くと、外相会合の会場方面に関係車両を通す訓練を今から実施するといいます。そのため、私が泊まるホテルに向かう道はしばらく通れないと伝えられました。まわりを見渡すと、警察官が一般の車両を止める姿が。ほかの歩行者にも「う回してほしい」と話しかけていました。

持参したデジカメでこうした様子を撮影して10分余り、パトカーなど複数の車両が会場に向かう道を勢いよく走っていきました。

比べれば警備しやすい・・・?

 

G7外相会合での花束贈呈

外相会合は、4月16日から3日間、軽井沢で行われました。会場は軽井沢駅のすぐ南にある「軽井沢プリンスホテル」。警備のため、駅の南口は封鎖され、観光客のお目当てにもなっているアウトレットモールも立ち入りができなくなりました。会場の周辺には通行証がないと通れない道も。車がう回を余儀なくされる場面を何度も目撃しました。

外相たちの移動は、北陸新幹線で東京駅から軽井沢駅へ、そして南側の会場に向かうというルート。一方、広島サミットでは、会場のグランドプリンスホテル広島と広島空港や岩国空港は距離が離れています。さらに、首脳たちは平和公園や宮島を訪れる見通し。広島に比べれば、軽井沢は警備がしやすいだろうと感じました。それでもこの規模なのか。5月のことを思い浮かべ、少し不安になりました。

まばらな観光客 「しかたない」

街には鮮やかなバナーがひるがえる

軽井沢は全国有数のリゾート地。外相会合の初日は日曜日で、前日とは打って変わって快晴に。ヤマザクラも咲き誇り、絶好の観光日和でした。

しかし、街なかで目立つのは全国各地から派遣された警察官ばかりで、観光客の姿はまばらでした。話を聞いてみました。

長崎からの観光客「外相会合が開かれていることは、ここに来るまで知らなかった。アウトレットもやっていないんですね。警備が厳重ですが、しかたないんじゃないですか、安倍総理大臣が亡くなる事件も起きましたし、きのうも和歌山で岸田総理大臣の近くに爆発物が投げ込まれたって。そういうことって続くかもしれないので」

愛媛からの観光客「警備はしかたないかと。和歌山のこともありますし、安全第一であってほしいです。今後、サミットが開かれる広島も同じようになるんでしょう。アウトレットは休業なので自分が行ける範囲で観光を楽しみたいですね」

衝撃広がる和歌山の事件

岸田総理大臣の近くに爆発物が投げ込まれた

私が広島から軽井沢に入った4月15日。和歌山市で事件が起きました。選挙の応援で訪れていた岸田総理大臣の近くに爆発物が投げ込まれたのです。その翌日とあって、軽井沢にいた人たちからは「和歌山」という言葉がよく聞かれました。長野県内のニュースでは「事件が起きたことから、厳重な警備が行われています」と伝えられていました。

G7サミットを控えた広島では、どのような反応だったのでしょうか。首脳が訪問する見通しの平和公園で同僚の記者が取材したところ「サミットで同じようなことが起きたら大変なことになる。警備を手厚くしてほしい」とか「岸田総理大臣は広島の出身でサミット直前でもある。許しがたく怒りを覚える」といった声が聞かれたということです。すでに、広島の中心部には多くの警察官の姿があります。事件を受けて、警察庁は広島サミットなどの開催に伴う警備を含め、改めて警備・警護の強化を全国の警察に指示したということで、サミットでの警備の規模はさらに大きくなる可能性があると思いました。

国際会議 マイナスの影響も

JR軽井沢駅

外相会合での厳重な警備。観光地で働く地元の人たちは、どう受け止めていたのでしょうか。

タクシーの男性運転手「天気がいい日曜日は稼ぎ時だが、全然客が少なくて。交通規制のために、う回をせざるをえませんが、料金が上がってしまい、客に納得してもらわないといけない。その説明が大変なんです。しかたないけど、本音では困ります」

駅近くの喫茶店で働く女性「桜がきれいな時期で観光客が多いんですよ、ふだんなら。別荘を持っている人の中には大型連休は混むので、この時期にゆっくり過ごして、アウトレットモールでの買い物を楽しむ人もいるが、それができないですね。損失が補てんされるわけでもないですし、客が少なかったら早めに店を閉めます」

自転車のレンタル店を営む男性「こんなに大きな警備は初めてです。ウクライナ情勢もあり、外相会合を開く意味はもちろんあると思いますが、地元の商売としては厳しいところがあって、やむをえないということですね。会合が無事に終わって、各国の人が日本や軽井沢にいい印象を持ってもらえればと思いますが」

自転車の貸し出しは7割減

取材した自転車のレンタル店。改めて話を聞きに行くと、会合初日、自転車を借りた人は前の週に比べておよそ7割減ったということでした。G7の国際会議は、開催地に少なからずマイナスの影響も及ぼすことを実感する取材となりました。

次回は国際メディアセンター

次回のテーマ 国際メディアセンター

「G7外相会合を見た」。次回は、国内外の報道関係者の取材拠点となる「国際メディアセンター」の様子と、現地で感じたもう1つの大事な役割についてお伝えします。

  • 重田八輝

    広島放送局 記者

    重田八輝

    2007年入局
    福井局・大阪局・科学文化部で主に原子力を担当。現在は広島局で遊軍キャップ兼G7サミット担当。

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