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物価高騰で広島県内で賃上げは進むのか ことしの春闘に注目

  • 2023年02月22日

    「物価の高騰が続き、生活が苦しくなっている」。こうした声が広がる中、ことしの春闘が始まりました。物価の上昇に見合った賃上げを企業が行うかどうか、いつも以上に春闘の結果が注目されています。広島県内でも賃上げが進むのか、取材しました。

    広島放送局 記者 児林大介

    賃上げを決定した中小企業 その判断は

    広島県福山市にある社員360人の中小の金属部品メーカーを取材しました。この企業では、車や航空機、産業用機械などに使われる金属部品を製造・販売しています。製造現場では、鉄やステンレス、ニッケルの合金など、金属を溶かして部品を作っています。

    部品を作るための鋳型も熱する必要があり、大量のエネルギーを使います。1年前に比べて、ガス料金は35%、電気料金は45%ほど高くなったといいます。また、原材料の仕入れ値が上がっていて、鉄やステンレスは去年に比べて1.5倍の価格に、ニッケルの合金は、輸入していることから、円安の影響もあって去年に比べて2倍以上に上がっているといいます。

    会社の高橋大治社長は、こうした価格高騰で難しい経営が続いているといいます。

    金属部品メーカー「キングパーツ」高橋大治 社長
    何もかも上がっていますよね、経費から鋼材、それから電力、エネルギー関係すべてが上がっています。防戦一方ですね。

    それでも、高橋社長は、この春、賃上げに踏み切ることにしました。賃上げ率はベースアップと定期昇給分も含めて2%程度。そのほかにも、工場の現場で働く人に向けた手当などもつけて、給与を上げる計画です。厳しい経営が続いていますが、人手不足の中で、人材の確保や優秀な社員をつなぎ止めたいという考えからです。

    金属部品メーカー 高橋大治社長
    先は見通せないです。ただ、頑張って継続した賃上げにはもっていきたいです。従業員を守っていかないといけない。今いる人が納得して働ける状態を常に作っておかなきゃいけないと思っています。

    経済界からは賃上げに期待する声

    広島の経済界からは、賃上げを期待する声が出ています。

    広島商工会議所 池田晃治 会頭
    まずは大企業中心にやってもらう。中小企業も上げられるところはしっかり上げていってもらいたい。できるところから賃金を上げてもらうということが必要であると思っている。

    “賃上げを実施する” 企業が83%

    広島県内で賃上げは広がっていくのでしょうか。労働組合の中央組織「連合」はベースアップ相当分と定期昇給分とをあわせて5%程度という高い水準の賃上げを求めています。

    民間の信用調査会社・東京商工リサーチは、去年10月、インターネットを通じてアンケート調査を行い、広島県内の103社から回答を得ました。それによりますと、新年度、定期昇給やベースアップ、一時金の増額などを含め、「賃上げを実施する予定だ」と答えたのは83%にのぼりました。これは、「今年度賃上げを実施した」と答えた割合を8ポイント上回りました。

    引き上げの幅については「2%未満」が最も多く全体の42%、「2%~5%」が38%だった一方、連合が5%程度の賃上げを求めていますが「5%以上」と答えたのは、1%にとどまりました。 

    調査を行った 東京商工リサーチ広島支社 近藤隆司 情報部長
    企業からすると賃上げはコストアップという要素にはなります。このため、思っているほど対応ができにくいこともあろうかと思いますが、賃上げを求める声が高まっています。物価が上がってそれに連動する形で賃金も上昇していくことで、経済としては好循環が生まれると考えます。

    取材後記

    賃上げが行えるかどうかは、企業の業績に大きく左右されます。取材の中で、賃上げを行いたいけれども、「新型コロナの影響で業績が回復していない」とか「原材料価格の高騰で厳しい経営が続いている」ことから、賃上げは難しいという声も聞かれました。また、別の企業は「賃上げを行う予定だが、取引先に知られると、余裕のある企業だと思われて『もっと安くしてくれ』と言われるのではないか」と話していました。
    これだけモノの価格が上昇する中、適正に価格転嫁をして、賃上げができる環境を作るのは大切なことだと思います。県内でも、大企業だけでなく、中小企業にも賃上げの動きが広がるのか。経済の好循環を生み出すためにも、この春の賃上げの動向に注目したいと思います。

      • 児林大介

        広島放送局 記者

        児林大介

        鳥取→和歌山→東京→盛岡→広島。ニュースウオッチ9リポーターとして全国のさまざまな現場を取材したほか、各地の夕方6時台ニュースでキャスターも経験。

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