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G7広島サミット “次こそは世界に伝えたい”被爆男性の願い

  • 2022年11月29日

“最後のチャンス”。来年のG7広島サミットをこう捉える被爆者がいます。海外から多くのメディアが訪れると見込まれる中、かつての経験から、次こそは原爆の悲惨さを世界に発信したいという被爆者の思いを取材しました。
(広島放送局記者    重田八輝)

“骨になった人が燃えている”

秋、平和公園には多くのバスが止まっています。全国各地の小学生、中学生、高校生が修学旅行でこの地を訪れます。ちょうど1年前、広島に赴任した私には驚きの光景でした。

原爆資料館の地下にあるホールには横浜市の中学校から来た約80人の3年生。全員が壇上に立つ高齢男性の話をじっと聴いています。見つめる先には、被爆者の山本定男さん(91歳)がいました。
14歳のとき、爆心地から2.5キロの場所で被爆した山本さん。原爆投下の翌日、親戚の安否を確認しに広島市の中心部に入りました。

山本定男さん
大爆発ですよ。なんて表現したらいいんですかね、巨大な岩が一瞬にして砕け散るようなね。もうグワーンという音と同時にね、みんな草っ原に吹き飛ばされてしまいました。爆心地に近い学校はまさに全滅という悲劇になったんですね。翌日、広島市中心部に入ると、まだ盛んに残り火が燃えてる。道ばたにね、上半身、骨になった人が燃えとるんです。ああ、これはだめだと。私はすぐに立ち去った。

証言を聞いた生徒たちは皆、口をそろえて「証言を次の世代、私たちの下の世代につないでいく」と話していました。

かつての苦い経験

来年開催されるG7広島サミット。国際情勢が不安定となる中、山本さんは被爆者の思いを世界に発信する重要な場と捉えています。

山本定男さん
世界中のメディアが集まるわけですから、絶好の機会ですよ。メディアの方にね、広島で起こったこと、原子爆弾でどういうことが起こったのか。これをしっかりとね、知ってもらいたいと思いますね。

2016年 G7外相会合

実は、山本さんはかつて苦い経験をしていました。それは6年前、広島で行われたG7外相会合のときのことです。核保有国のアメリカ、イギリス、フランスなど各国の外相が核軍縮・不拡散などを議論。重要な国際会議の場に、海外から数多くのメディアが集まりました。この機会に、被爆者の思いを世界に伝えたい。山本さんは取材拠点の「国際メディアセンター」で企画された証言活動に臨みましたが…。

取材に来たのは国内の記者。外相会合が終わったあとに設けられた場に、海外メディアの姿はなかったといいます。

山本定男さん
メディアの方はみんなばーって帰ってしまって、もう誰もいなかった。せっかくの機会を十分生かすことができなかったというのは、やっぱり残念なんじゃないんですかね。

海外メディアを集めるには

広島サミット県民会議 事務局

広島サミットでは海外メディアを通じて世界に発信する場をどうつくっていくのか。開催を支援する「広島サミット県民会議」に話を聞くと、なるべく多くの人が集まれるよう、時間や場所を設定すること。そして事前に海外メディアを対象にしたツアーを実施するといった事前のPRをすることなどが重要だと話しています。

広島サミット県民会議事務局 森岡庸介 平和・若者参画推進課長

広島サミット県民会議事務局 森岡庸介 平和・若者参画推進課長
サミットの取材をする海外メディアは、基本的にはサミット本体の取材を中心に活動することになります。そういったことを踏まえながらどういった形で情報発信するのがいいかは工夫、検討していきたいと考えています。

工夫を重ね“次こそは世界に”

山本さんが広島サミットに関われるかどうかわかりません。しかし、次こそはと「工夫」を重ねています。その1つが「証言の時間」です。ふだんは「1時間」にわたって話をしますが、海外メディアが参加しやすいよう「20分程度」に凝縮した原稿を用意する予定です。

もう1つが「視覚で訴える」。この絵は、山本さんの体験をもとに地元の高校生が制作したものです。巨大な炎の塊を見つめる中学生の山本さんが描かれています。当時の様子を描いた絵や写真などを使うことで、言葉の壁を越えたいとしています。

“最後のチャンス”

91歳の山本さん。被爆者の高齢化が進み、核の脅威が高まるいまこそ、世界中に被爆者の声を届けなければいけないと話します。

山本定男さん
広島サミットは、おそらく世界に訴えるのには最後のチャンスでしょうね。もうこの次、そういう行事が広島であるかどうかわかりませんけれども、やっぱり今、直接伝えられる最後のチャンスなんですね。

“みんなが声をあげること”

山本さんに広島サミットに望むことを書いてもらいました。

書いたのは、「核兵器廃絶を世界の世論に」。

山本定男さん
やっぱり広くみんな、みんながね、声をあげることが大事なんですよ。核兵器廃絶を世界中、世論にして盛り上げていきたい。これが私の願いです。

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