広島の避難所②食物アレルギーなど 備え見直す動き広がる
- 2022年10月28日
食物アレルギーのある人は、皆さんの周りにもいるのではないでしょうか。そうした配慮が必要な人のために、いま、避難所での食事の備えを見直す動きが広がっています。食事の安心に向けた取り組みを取材しました。
食物アレルギーが避難の障壁に
三原市に住む中尾みゆきさんと、娘の麻鈴さんです。麻鈴さんは、小麦や魚介類などにアレルギーがあります。
中尾さんは、2018年の西日本豪雨の際、自宅近くの避難所に行きました。しかし…。
中尾みゆきさん
「アレルギー対応の食べ物はありますか」って聞いたんですけど、「どこにあるかわからない」って言われたので、「えー、それはちょっと困るな」って言って、帰ったんです。
いざという時への備えが必要だと感じた中尾さんは、アレルギー対応の食事をすぐに持ち出せるよう準備しています。
これに加えて、麻鈴さんにはアレルギーについて記した紙を持たせています。過去にアレルギーによるショックで意識不明になったことがあるからです。
こうした備えをしていても、避難所に行くのは不安が大きいと言います。
アレルギー対応の食べ物があるか、間違って食べないか、不安に思います。
中尾みゆきさん
あんまり避難所には行きたくないなという思いが強くて、自分の家で過ごせるなら過ごしていた方が、命の安全がまだ確保できるのかなと思います。
備蓄食をアレルギー対応に(福山市)
避難所に行くのをためらうことがないよう、食料備蓄を見直す自治体が増えています。いち早く取り組みを進めている福山市では、2022年4月の時点で、備蓄している3万7000食をアレルギー対応のアルファ米などに切り替えました。
避難している人に選択肢を示すため、8種類の味を取りそろえています。福山市では、今後、さらにアレルギー対応食を増やす計画です。
福山市福祉総務課 森島弘法課長
アレルギーのことによって避難をためらっている方も、まずは身の安全で避難所に来てほしいです。
介護食などを届ける仕組みも
一方、高齢者でも食べやすい介護食などを避難所に届ける仕組みも生まれています。
大竹市の食品販売会社では、かむ力が弱い人などに向けた食品を1800種類以上扱っています。
おかずの味がする煮こごり風の食品は、うなぎの蒲焼きやカレーなど10種類の味を楽しむことができます。
特殊な加工で非常に柔らかくできているきゅうりの漬物は、かむ力が弱い人も、舌や歯ぐきで潰して食べることができます。
この会社では、大竹市と「災害時における連携協定」を締結し、会社が取り扱っている食品を市が指定する避難所などに届けることにしています。
食品販売会社 栗本保男社長
みんな協力して、何があっても届けるんだと。広島県全体も含めて協力したいなと思っています。
冒頭で紹介した中尾さん親子は「誤って食べるのが一番怖いので、こうした対応は安心感があり、ありがたい」と話していました。安心して食事ができるよう、避難所の工夫が進んでいます。